42 / 66
15.冥冥
38
しおりを挟む
ブライト王子が来たことで、僕等は喫茶店から一度退去し、すぐ近くにあった噴水広場へと向かった。
「アルフレイド君、一緒に座ろ?」
「え。わっ、!」
ブライト王子が噴水の縁に座り、レオンさんの隣に立っていた僕を引っ張って、一緒に座らせられた。
ブライト王子がさりげなく僕の腰を掴み、自分の方へ寄せるせいで綺麗な顔がすぐ近くにあって、少し緊張してしまう。
「あ、あの…」
思わず声を掛けてしまったものの、さすがに緊張するので離れて下さいとは言いづらい。
「ん、どーしたの?」
「いえ、その――あ、」
僕が口ごもっていると、横から伸ばされた手にぐっと肩が引き寄せられ、そのまま逞しい肩にぶつかった。
「大丈夫か?」
呟くような小さい問いにこくりと頷く。
距離が離れたことで安心すると同時に今度はすぐ近くにレオンさんがいる。
そんなことになぜだかドキドキしてしまって、まともにレオンさんの顔が見れなかった。
「―それで、今日僕がレオンに呼ばれた理由は何?」
ブライト王子がプラプラと足を揺らしながらレオンさんに喋りかける。
「まったく、一国の王子を電話で、しかも思いっきりタメ口利いてきながらの呼び出しなんて前代未聞だよ。…まさかとは思うけど、久しぶりに会いたくなったから呼んだとか言わないよね?」
「そんな理由で呼び出せるほどこっちも暇じゃない。
…俺が今日お前を呼んだのは、『帝国魔導士団』についての情報を知りたいからだ。
聞けば、…お前の護衛兼執事のクレウスは、元フォリシア帝国魔導士団第一部隊の隊員らしいからな。」
「…っ…!」
あまりのことに僕は言葉を失い、すぐ近くにいた男性――クレウスさんを凝視した。
と言っても、クレウスさんは現在進行形でフードを一度もとっていないので、素顔も、今どんな表情をしているのかも分からなかった。
「いったいどこからそんな情報を仕入れたのかなぁ?」
「俺の、少し面倒な性格はしているが優秀な情報屋が大事な友人の護衛兼執事はどんな人物なのかを調べてくれた。」
真剣に語るレオンさんの声に嘘や冗談のようなものは全く感じられないし、なにより、クレウスさんの話が出た瞬間、先程まで優しげだったブライト王子から笑顔が失せ、翡翠色の瞳に微かな怒りが込もって、レオンさんを睨んでいるようにも見えた。
「殿下。発言してもよろしいでしょうか。」
始めに沈黙を破ったのは、僕等の正面に向かい合うように立っているクレウスさんだった。
「……いいよ。許す。」
「ありがとうございます。
…レオン様が仰せられた通り、私は元帝国魔導士団の第一部隊員です。ですが私は、殿下やアルフレイド様のようなエルフを襲おうとは微塵も思っておりません。むしろ、帝国に囚われているエルフが幸せになる未来を願っております。」
クレウスさんは軽く目を伏せ、深呼吸をすると、意を決したように真っ直ぐ僕等を見て、
「私が知っている全ての情報をお伝え致します。お気を悪くさせることもあるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください。」
そう言って話し始めた。
「アルフレイド君、一緒に座ろ?」
「え。わっ、!」
ブライト王子が噴水の縁に座り、レオンさんの隣に立っていた僕を引っ張って、一緒に座らせられた。
ブライト王子がさりげなく僕の腰を掴み、自分の方へ寄せるせいで綺麗な顔がすぐ近くにあって、少し緊張してしまう。
「あ、あの…」
思わず声を掛けてしまったものの、さすがに緊張するので離れて下さいとは言いづらい。
「ん、どーしたの?」
「いえ、その――あ、」
僕が口ごもっていると、横から伸ばされた手にぐっと肩が引き寄せられ、そのまま逞しい肩にぶつかった。
「大丈夫か?」
呟くような小さい問いにこくりと頷く。
距離が離れたことで安心すると同時に今度はすぐ近くにレオンさんがいる。
そんなことになぜだかドキドキしてしまって、まともにレオンさんの顔が見れなかった。
「―それで、今日僕がレオンに呼ばれた理由は何?」
ブライト王子がプラプラと足を揺らしながらレオンさんに喋りかける。
「まったく、一国の王子を電話で、しかも思いっきりタメ口利いてきながらの呼び出しなんて前代未聞だよ。…まさかとは思うけど、久しぶりに会いたくなったから呼んだとか言わないよね?」
「そんな理由で呼び出せるほどこっちも暇じゃない。
…俺が今日お前を呼んだのは、『帝国魔導士団』についての情報を知りたいからだ。
聞けば、…お前の護衛兼執事のクレウスは、元フォリシア帝国魔導士団第一部隊の隊員らしいからな。」
「…っ…!」
あまりのことに僕は言葉を失い、すぐ近くにいた男性――クレウスさんを凝視した。
と言っても、クレウスさんは現在進行形でフードを一度もとっていないので、素顔も、今どんな表情をしているのかも分からなかった。
「いったいどこからそんな情報を仕入れたのかなぁ?」
「俺の、少し面倒な性格はしているが優秀な情報屋が大事な友人の護衛兼執事はどんな人物なのかを調べてくれた。」
真剣に語るレオンさんの声に嘘や冗談のようなものは全く感じられないし、なにより、クレウスさんの話が出た瞬間、先程まで優しげだったブライト王子から笑顔が失せ、翡翠色の瞳に微かな怒りが込もって、レオンさんを睨んでいるようにも見えた。
「殿下。発言してもよろしいでしょうか。」
始めに沈黙を破ったのは、僕等の正面に向かい合うように立っているクレウスさんだった。
「……いいよ。許す。」
「ありがとうございます。
…レオン様が仰せられた通り、私は元帝国魔導士団の第一部隊員です。ですが私は、殿下やアルフレイド様のようなエルフを襲おうとは微塵も思っておりません。むしろ、帝国に囚われているエルフが幸せになる未来を願っております。」
クレウスさんは軽く目を伏せ、深呼吸をすると、意を決したように真っ直ぐ僕等を見て、
「私が知っている全ての情報をお伝え致します。お気を悪くさせることもあるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください。」
そう言って話し始めた。
14
あなたにおすすめの小説
ざこてん〜初期雑魚モンスターに転生した俺は、勇者にテイムしてもらう〜
キノア9g
BL
「俺の血を啜るとは……それほど俺を愛しているのか?」
(いえ、ただの生存戦略です!!)
【元社畜の雑魚モンスター(うさぎ)】×【勘違い独占欲勇者】
生き残るために媚びを売ったら、最強の勇者に溺愛されました。
ブラック企業で過労死した俺が転生したのは、RPGの最弱モンスター『ダーク・ラビット(黒うさぎ)』だった。
のんびり草を食んでいたある日、目の前に現れたのはゲーム最強の勇者・アレクセイ。
「経験値」として狩られる!と焦った俺は、生き残るために咄嗟の機転で彼と『従魔契約』を結ぶことに成功する。
「殺さないでくれ!」という一心で、傷口を舐めて契約しただけなのに……。
「魔物の分際で、俺にこれほど情熱的な求愛をするとは」
なぜか勇者様、俺のことを「自分に惚れ込んでいる健気な相棒」だと盛大に勘違い!?
勘違いされたまま、勇者の膝の上で可愛がられる日々。
捨てられないために必死で「有能なペット」を演じていたら、勇者の魔力を受けすぎて、なんと人間の姿に進化してしまい――!?
「もう使い魔の枠には収まらない。俺のすべてはお前のものだ」
ま、待ってください勇者様、愛が重すぎます!
元社畜の生存本能が生んだ、すれ違いと溺愛の異世界BLファンタジー!
男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。
ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる
街風
ファンタジー
「お前を追放する!」
ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。
しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。
俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜
陽七 葵
BL
主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。
この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。
そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!
ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。
友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?
オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。
※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※
推しの完璧超人お兄様になっちゃった
紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。
そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。
ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。
そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
平凡なぼくが男子校でイケメンたちに囲まれています
七瀬
BL
あらすじ
春の空の下、名門私立蒼嶺(そうれい)学園に入学した柊凛音(ひいらぎ りおん)。全寮制男子校という新しい環境で、彼の無自覚な美しさと天然な魅力が、周囲の男たちを次々と虜にしていく——。
政治家や実業家の子息が通う格式高い学園で、凛音は完璧な兄・蒼真(そうま)への憧れを胸に、新たな青春を歩み始める。しかし、彼の純粋で愛らしい存在は、学園の秩序を静かに揺るがしていく。
****
初投稿なので優しい目で見守ってくださると助かります‼️ご指摘などございましたら、気軽にコメントよろしくお願いしますm(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる