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15.冥冥
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ブライト王子が来たことで、僕等は喫茶店から一度退去し、すぐ近くにあった噴水広場へと向かった。
「アルフレイド君、一緒に座ろ?」
「え。わっ、!」
ブライト王子が噴水の縁に座り、レオンさんの隣に立っていた僕を引っ張って、一緒に座らせられた。
ブライト王子がさりげなく僕の腰を掴み、自分の方へ寄せるせいで綺麗な顔がすぐ近くにあって、少し緊張してしまう。
「あ、あの…」
思わず声を掛けてしまったものの、さすがに緊張するので離れて下さいとは言いづらい。
「ん、どーしたの?」
「いえ、その――あ、」
僕が口ごもっていると、横から伸ばされた手にぐっと肩が引き寄せられ、そのまま逞しい肩にぶつかった。
「大丈夫か?」
呟くような小さい問いにこくりと頷く。
距離が離れたことで安心すると同時に今度はすぐ近くにレオンさんがいる。
そんなことになぜだかドキドキしてしまって、まともにレオンさんの顔が見れなかった。
「―それで、今日僕がレオンに呼ばれた理由は何?」
ブライト王子がプラプラと足を揺らしながらレオンさんに喋りかける。
「まったく、一国の王子を電話で、しかも思いっきりタメ口利いてきながらの呼び出しなんて前代未聞だよ。…まさかとは思うけど、久しぶりに会いたくなったから呼んだとか言わないよね?」
「そんな理由で呼び出せるほどこっちも暇じゃない。
…俺が今日お前を呼んだのは、『帝国魔導士団』についての情報を知りたいからだ。
聞けば、…お前の護衛兼執事のクレウスは、元フォリシア帝国魔導士団第一部隊の隊員らしいからな。」
「…っ…!」
あまりのことに僕は言葉を失い、すぐ近くにいた男性――クレウスさんを凝視した。
と言っても、クレウスさんは現在進行形でフードを一度もとっていないので、素顔も、今どんな表情をしているのかも分からなかった。
「いったいどこからそんな情報を仕入れたのかなぁ?」
「俺の、少し面倒な性格はしているが優秀な情報屋が大事な友人の護衛兼執事はどんな人物なのかを調べてくれた。」
真剣に語るレオンさんの声に嘘や冗談のようなものは全く感じられないし、なにより、クレウスさんの話が出た瞬間、先程まで優しげだったブライト王子から笑顔が失せ、翡翠色の瞳に微かな怒りが込もって、レオンさんを睨んでいるようにも見えた。
「殿下。発言してもよろしいでしょうか。」
始めに沈黙を破ったのは、僕等の正面に向かい合うように立っているクレウスさんだった。
「……いいよ。許す。」
「ありがとうございます。
…レオン様が仰せられた通り、私は元帝国魔導士団の第一部隊員です。ですが私は、殿下やアルフレイド様のようなエルフを襲おうとは微塵も思っておりません。むしろ、帝国に囚われているエルフが幸せになる未来を願っております。」
クレウスさんは軽く目を伏せ、深呼吸をすると、意を決したように真っ直ぐ僕等を見て、
「私が知っている全ての情報をお伝え致します。お気を悪くさせることもあるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください。」
そう言って話し始めた。
「アルフレイド君、一緒に座ろ?」
「え。わっ、!」
ブライト王子が噴水の縁に座り、レオンさんの隣に立っていた僕を引っ張って、一緒に座らせられた。
ブライト王子がさりげなく僕の腰を掴み、自分の方へ寄せるせいで綺麗な顔がすぐ近くにあって、少し緊張してしまう。
「あ、あの…」
思わず声を掛けてしまったものの、さすがに緊張するので離れて下さいとは言いづらい。
「ん、どーしたの?」
「いえ、その――あ、」
僕が口ごもっていると、横から伸ばされた手にぐっと肩が引き寄せられ、そのまま逞しい肩にぶつかった。
「大丈夫か?」
呟くような小さい問いにこくりと頷く。
距離が離れたことで安心すると同時に今度はすぐ近くにレオンさんがいる。
そんなことになぜだかドキドキしてしまって、まともにレオンさんの顔が見れなかった。
「―それで、今日僕がレオンに呼ばれた理由は何?」
ブライト王子がプラプラと足を揺らしながらレオンさんに喋りかける。
「まったく、一国の王子を電話で、しかも思いっきりタメ口利いてきながらの呼び出しなんて前代未聞だよ。…まさかとは思うけど、久しぶりに会いたくなったから呼んだとか言わないよね?」
「そんな理由で呼び出せるほどこっちも暇じゃない。
…俺が今日お前を呼んだのは、『帝国魔導士団』についての情報を知りたいからだ。
聞けば、…お前の護衛兼執事のクレウスは、元フォリシア帝国魔導士団第一部隊の隊員らしいからな。」
「…っ…!」
あまりのことに僕は言葉を失い、すぐ近くにいた男性――クレウスさんを凝視した。
と言っても、クレウスさんは現在進行形でフードを一度もとっていないので、素顔も、今どんな表情をしているのかも分からなかった。
「いったいどこからそんな情報を仕入れたのかなぁ?」
「俺の、少し面倒な性格はしているが優秀な情報屋が大事な友人の護衛兼執事はどんな人物なのかを調べてくれた。」
真剣に語るレオンさんの声に嘘や冗談のようなものは全く感じられないし、なにより、クレウスさんの話が出た瞬間、先程まで優しげだったブライト王子から笑顔が失せ、翡翠色の瞳に微かな怒りが込もって、レオンさんを睨んでいるようにも見えた。
「殿下。発言してもよろしいでしょうか。」
始めに沈黙を破ったのは、僕等の正面に向かい合うように立っているクレウスさんだった。
「……いいよ。許す。」
「ありがとうございます。
…レオン様が仰せられた通り、私は元帝国魔導士団の第一部隊員です。ですが私は、殿下やアルフレイド様のようなエルフを襲おうとは微塵も思っておりません。むしろ、帝国に囚われているエルフが幸せになる未来を願っております。」
クレウスさんは軽く目を伏せ、深呼吸をすると、意を決したように真っ直ぐ僕等を見て、
「私が知っている全ての情報をお伝え致します。お気を悪くさせることもあるかもしれませんが、どうか最後までお聞きください。」
そう言って話し始めた。
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