異世界でエルフに転生したら狙われている件

紅音

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15.冥冥

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――帝国というのは、そもそも皇帝をトップに置いた国のことで、他国を積極的に侵略する傾向がある。

そのため、ほとんどの帝国は軍事や外交に優れている。

そしてフォリシア帝国も例外ではなく、特に軍事に優れていた。

そう。その軍事力のかなめこそが、『帝国魔導士団』なのだ。

帝国魔導士団とは、もともとは貧民街にいた子供達を攫い、魔力量の多いエルフと同等の魔力を人為的に付与することに成功した、言ってしまえばの集団である。

莫大な魔力量を得てしまった子供たちを、みすみす野放しにするわけにもいかず、魔導士団として帝国にとどめている。


次に、なぜエルフが狙われているのか。
もともとフォリシア帝国の皇帝は、代々エルフが担ってきた。帝国には皇帝以外のエルフはいないとされている。が、他国から紛れ込んでいたり、まれに、遺伝子の似た人間が生まれてしまったりするので、実際のところ、国内にもエルフはいる。
しかし、皇帝の絶対的な権力を保つため、エルフと分かったものは即刻捕らえられ、実験体にされている。



「最後に、実験と魔力についてですが。
魔力とは、魔法の威力や使える回数を司るものです。
そして、その内蔵量には血筋などが大きく影響し、魔力の多い家は所謂貴族と呼ばれ、魔力の少ない家は所謂貧民となる傾向が強くあります。
また、それぞれに最大量が存在し、魔力がその値を超えると身体への負担が大きくなってしまい、体力なども増加傾向があるものの、短命となる場合もあるます。

…帝国でかつて行われていたのは、人間に莫大な魔力を付与する実験でした。ですが、この実験で成功してしまった帝国は、次に元々魔力量が多いエルフに更に魔力を付与する実験を行うことにしたのです。が、今のところ身体があまりの魔力に耐えきれずに失敗に終わっている、というのが、私の知っている帝国の現状です。」



クレウスさんが話し終えた後、僕の頭の中にもしもそれが本当ならば、悲しすぎる現実が浮かぶ。


「僕の母上は……カンナ村の皆さんは…」



消え入るような小さな声を、クレウスさんはしっかりと拾い、「きっと、帝国にいるエルフはもうすでにほとんどが捕らえられて実験体となっていると思います」と、泣きそうな声で呟いた。


頭の中で、10歳の頃に見た真っ黒の雷と、燃える村がフラッシュバックする。


もし、みんながもう実験に利用され、死んでしまっていたら。

僕は、今一人でのうのうと生きている僕は――。


混乱と悲しみと自分に対する怒りと、たくさんの思いが、脳内を搔き乱して狂いそうになる。

どんどんと顔色が青ざめていくのが自分でも分かる。
それに、寒くもないのに、手の震えが止まらない。
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