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第一章 ゲームスタート
第四話~ゲームの世界~
しおりを挟む苦しい...!...息が....助け...も..う..ダ....
「ハア...ハア...!」
突如視界が明るくなり長い時間感じていた苦しさからは少しずつ解放されていく感覚になる。
突然の明るさに目が慣れるまではそう長くはかからなかった。
どうやら俺はどこかに座っているようだが。教室か...?
「ここは...?」
この大きいテーブルを取り囲むように配置されている簡易的な椅子。
その組み合わせがこの部屋の中に3×3で合計9個。
前方には黒板と、上には壁掛け時計があるな。
今は12時50分を指している。
外が明るいということは昼の設定なのだろう。
それとも時計は何の意味もないオブジェなのだろうか。
そして黒板の横の大きな棚には様々な大きさの...ビーカーか?
「理科室みたいだな。」
どうやらこのゲームはどこかの学校が舞台で理科室がスタート位置のようだ。
だが、分からないことが多すぎる。
「もうゲームは始まってるんだよな?
皆は?なぜ俺一人なんだ?」
多くのオンラインゲームではチュートリアル的なものがあったり、開始位置ってのは皆同じなのがベターだろう。
それなのに今はどうだ。
何の説明もなく目が覚めたら突然理科室。
それも一人きりで。
何が目的のゲームで最初は何をすればいいのか全く分からない。
もしかするとゲーム内で皆と冒険できるものと勝手に思い込んでいるいるだけで、実際は一人プレイ用のただのバーチャル体験なのだろうか。
確かにVRでそんな技術はまだ無いか。
「フッ。期待しすぎたかな。」
思わず気の抜けた笑みが出てしまう。
「それにしてもリアルだな。」
まるで本当に現実の感覚と変わらない。
椅子に座っている感覚もしっかりある。
服もどうやら先ほどまで着ていた学ランと全く同じもの。
どうやって再現しているのだろうか?
それともデフォルトで学ランを着ているものなのか?
「痛い。」
試しに頬をつねってみるが現実と変わらず痛い。
「あ、鏡。」
教室の後ろには薬品を洗い流すために設置されているだろう水場があった。
そこにしっかりと鏡も壁掛けられていた。
自分の顔がどうなっているのか気になるな。
座っていた椅子から立ち上がり歩きはじめる。
「すごいな。 現実と変わらない。」
歩く感覚はもちろん、地面を踏み込む感覚や床の固さまで全く同じだ。
鏡の元まで歩き、鏡をのぞき込む。
「俺がいる...。」
一体どうやって再現しているんだ?
あのヘッドギアに何か秘密があったのか?
そういえば水はどうなのだろう。
「これは本当にゲームなのか?」
蛇口を捻るとジャーという音とともに水が流れる。
手にすくってみても現実の感覚とは何も変わらない。
「これは感動だな。」
どうやら全ての行動、感触は忠実に再現されているようだ。
長く続けているとゲームということを忘れてしまいそうなくらいだ。
考えながら蛇口を閉め教室全体を見渡す。
「ん? 何だ?」
俺は唯一の違和感に気が付いた。
「時間が巻き戻ってる...?」
さっきまでは12時50分を指していたよな?
今は...12時40分を指している。
「もしかして制限時間か?」
そうとなると残りは40分。
この素晴らしい体験を楽しまなければ!
「これがアナウンスで言っていた「リアルを忠実に再現しつつ現実離れした不思議な体験」か。
確かに。最高にワクワクさせてくれる!」
そうとなれば残りの時間でもっと色々遊んでみたい!
...この教室の外には出られるのだろうか?
教室の後方出入り口に近づき、引き戸を開けてみる。
ガラガラ...。
「開いた。廊下だ。」
どうやら学校全体を再現しているのだろうか。
廊下に出て左右を見渡してみると、どちらも直線ではなく緩やかな曲線の廊下のようで、あまり奥までは見えないが長く続く廊下ということは伝わる。
「どっちに行」
ドッ...ドッ...ドッ...ドッ......
何の音だ左側から音がする。
ゲームが始まってからは自分が能動的に出した音しか聞こえていない。
今は...何かが聞こえる。
俺は身体を音の鳴る方へ向け耳を澄ます。
ドッ......ドッ.....ドッ....ドッ..!
この音は!
明らかに何かが近づいてくる!
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