婚約者はメイドにご執心、婚約破棄して私を家から追い出したいそうです。

coco

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婚約者とメイドにご執心、婚約破棄して私を家から追い出したいそうです。

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「お前とは婚約破棄こんやくはきだ、この家を出て行け!」
 
 そう言い放つこの男は、私の婚約者だ。

「…それは、本気ですか?」

「ああ、お前は彼女をいじめているだろう?そんなおそろし女は、この家には必要ない。」

 彼の腕の中でふるえているのは、この家で一番若く可愛かわいいメイドだった。

「虐めた覚えはありません、あくまで注意しただけです。」

 彼女は仕事をごのみし、面倒めんどうな仕事は他のメイドに押し付けていた。
 しかしそれを彼の前では上手くかくし、働き者の健気けなげなメイドで通していた。

「この家のあるじは俺だ、お前が出しゃばるな。もういい、さっさと荷物にもつをまとめろ!」

 彼の言葉に、その腕の中に居たメイドがニヤリとみを浮かべた。

「安心して下さい、この方のお世話せわは私がいたしますから。」

「君を俺付きのメイドにする、ずっと俺のそばに居てくれ。」

 そう言って、メイドを抱きしめる彼。
 どうやらこの2人は、特別な関係にあるらしい。

 2人が結ばれるには、私が邪魔じゃまなのね…。

 でもそうは言うけど、この家はすでに私の物よ?
 あなたは、何も知らないみたいね。

 だから、教えてあげることにします─。

※※※

「荷物をまとめろと言われたので、そうしました。ただし、私のじゃないですけど。」

 私は、彼にバッグを手渡した。

「それが、あなたの持ち物全てよ。」

「ど、どういう事だこれは!」

「私とあなたが婚約したのは、今は亡きあなたのご両親に頭を下げお願いされたからよ。あなたの家が私の家からお金を借りていたけど、返す手立てがなくてあなたを差し出したの。あなたにはそんななさけない話、言えなかったんでしょうね。それでもし息子が不貞ふていを働く様な事があれば、この家を私に差し上げますって約束やくそくまでして。まさか息子がメイドを好きになるとは、夢にも思ってなかったんでしょうね。」

「そ、そんな事が!?」

「私、あなたの事は好きでもないけど、結果こうなって感謝かんしゃしてるわ。大きなお屋敷やしきが、何の苦労くろうもなく手に入ったんですもの。あなたの財産は、慰謝料いしゃりょう代わりにもらいます。今渡したバッグには、あなたがそのメイドから貰った物だけが入ってます。その働かないメイドは、連れて行ってくれてかまいません。」

「わ、私、やっぱりこの家に居たいです!今度はちゃんと働きますから!」

「何言ってるの、あなたは彼付きのメイドよ?それに、彼のお世話は自分がするって言ったじゃない。」

「嫌よ、こんな貧乏家無びんぼういえなし男の世話なんてしたくない…!」

「お前、俺の金が目当てだったのか!?」

 2人はお互いをののしり合っていたが、駆けつけた使用人しようにんたちによってこの家からつまみ出された─。

※※※

 あれから2人は、町で物乞ものごいをしながら生きているそうだ。
 あまりに変わり果てた姿に、彼を名家のご子息と気づく者はもう居ない。

 私はというと、この家の女主人として優雅ゆうがな日々を送っている。
 
 私は、実家から優秀ゆうしゅ従者じゅうしゃむかえ入れた。

 彼の事は、随分ずいぶん前から目をかけていた。
 この人になら、家の事もプライベートもまかせられると思っていた。

 なにより、彼が私に全身全霊ぜんしんぜんれいくしたいと言ってくれているんだもの。

 彼はそこまで、私を愛してくれているの。
 私と彼が特別な関係になるのは、もうすぐの様な気がする。

 そしたら、今度こそ私は幸せになるわ─。
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