1 / 1
私を裏切った婚約者は、一生囚われの身に…裏切られた私は、無事に幸せを手にしました。
しおりを挟む
もうすぐ、私の誕生日パーティーだ。
そこで招待客に、近く結婚式を挙げる事に決まったと発表する事になって居た。
私は、その日が来るのが待ち遠しかった。
と、同時に…私には一つ気掛かりな事が─。
※※※
結婚か…気が重いな。
本当は、誕生日パーティーも面倒だし…でも、あいつの親はそういう事にうるさいからな。
あいつの父親の機嫌を損ねると、俺の社会的地位も揺らぐ事になりかねない…家同士の婚約というのは、中々に面倒だ。
そして結婚をすれば、益々気が抜けなくなる。
だから…俺は、他に安らげる場所を求めた─。
俺はいつものように、町外れにある一軒の家を訪ねた。
そこには、若く美しい娘が一人で暮らしていた。
窓辺に佇むその娘の美しさに目を奪われ、思い切って家を訪ねたのが全ての始まりだった。
そこには、何故か数人の見張りが居たが…俺はその目を盗み、彼女に近づいたのだ。
そして突然の来訪者の俺を、彼女は拒まなかった。
それどころか…俺の訪れを喜び、もてなしてくれた。
その日から、俺は彼女の元にこっそりと通うようになった。
勿論…婚約者には秘密だ─。
※※※
最近彼が、こっそり家を出て、どこかに出かけているのには気づいていた。
結婚式前の僅かな自由を楽しんでいるのだろう…あまり縛り付けるのもどうかと思い、私は咎める事が出来ずに居たが…まさか、あの家に行っていたなんて。
神殿から使者が訪ねて来て、大事な話があると言うから何かと思えば─。
あの家がどうしてあんな町の外れに建てられているのか、どうしてあの娘が一人きりであんな所に住んでいるのか…あなたはこの地新しく入って来た人だから、知らなかったのね。
「あなた…あの呪われた元聖女の所に行っていたのね。」
「呪いの元聖女…?」
「あの家に住んで居るのは、城の王子を自分のものにしようとし、聖女の道を踏み外した女です。彼女は王子の妃候補を、神殿に封じられた邪神を利用し、その命を狙った罪人です。」
「何!?」
「しかも彼女は、その邪神によってその身も心も穢れてしまい…その為に、あの家に押し込められたのです。あそこには…神具がいくつか置かれて居て、そこに住む事でその穢れを落とすのです。」
「た、確かにあそこには妙な道具が置かれていた。まさか、あれが…。」
「彼女があなたをもてなしたのは…彼女に憑いた穢れが、同じく穢れた魂を持つあなたを求めた為でしょう。ところであなた…あの女と交わりましたね?」
私の言葉に、彼はビクリと肩を揺らした。
「実は、先程訪ねて来られた神殿の使者から教典を頂きまして…そのおかげか、あなたの身体は勿論、魂までもが酷く汚れて見えるようになりました。ですから、あなたはあの女と関係を持ったのだろうと─。私…そんなあなたとは、もう結婚しません。今日もって、婚約は破棄させて貰います。」
「え!?」
「あんな恐ろしい女と愛を交わした男と、結婚など出来る訳ありません。それに…この件に父も大変お怒りです。後は罪人と浮気者で、仲良くやればいいと。」
「俺は心を入れ替える、だから─!」
※※※
彼は涙を流し、反省の言葉を述べたが…その後、神殿の使者にあの女の元へと連れて行かれ…一生あの家で暮らす事となってしまった。
神殿の使者曰く、これ以上邪神の穢れを広めてはならないという事で、このような結果になったのだ。
出来心で浮気し、こんな事態を招いた事を、彼は毎日嘆いていると、後に神殿の使者が教えてくれた。
そして私は、その話を新しい婚約者が決まった日に耳にした。
私はあの出来事以降、その神殿に通うようになり…今度こそいい縁を結びたいと、その神殿に祀られる神に祈って居たのだ。
どうやら…神は無事に、私の願いを聞き届けてくれたらしい。
あの男と、揃って幸せになれたらと思ってたけど…結局幸せになれたのは、私だけだったわね─。
そこで招待客に、近く結婚式を挙げる事に決まったと発表する事になって居た。
私は、その日が来るのが待ち遠しかった。
と、同時に…私には一つ気掛かりな事が─。
※※※
結婚か…気が重いな。
本当は、誕生日パーティーも面倒だし…でも、あいつの親はそういう事にうるさいからな。
あいつの父親の機嫌を損ねると、俺の社会的地位も揺らぐ事になりかねない…家同士の婚約というのは、中々に面倒だ。
そして結婚をすれば、益々気が抜けなくなる。
だから…俺は、他に安らげる場所を求めた─。
俺はいつものように、町外れにある一軒の家を訪ねた。
そこには、若く美しい娘が一人で暮らしていた。
窓辺に佇むその娘の美しさに目を奪われ、思い切って家を訪ねたのが全ての始まりだった。
そこには、何故か数人の見張りが居たが…俺はその目を盗み、彼女に近づいたのだ。
そして突然の来訪者の俺を、彼女は拒まなかった。
それどころか…俺の訪れを喜び、もてなしてくれた。
その日から、俺は彼女の元にこっそりと通うようになった。
勿論…婚約者には秘密だ─。
※※※
最近彼が、こっそり家を出て、どこかに出かけているのには気づいていた。
結婚式前の僅かな自由を楽しんでいるのだろう…あまり縛り付けるのもどうかと思い、私は咎める事が出来ずに居たが…まさか、あの家に行っていたなんて。
神殿から使者が訪ねて来て、大事な話があると言うから何かと思えば─。
あの家がどうしてあんな町の外れに建てられているのか、どうしてあの娘が一人きりであんな所に住んでいるのか…あなたはこの地新しく入って来た人だから、知らなかったのね。
「あなた…あの呪われた元聖女の所に行っていたのね。」
「呪いの元聖女…?」
「あの家に住んで居るのは、城の王子を自分のものにしようとし、聖女の道を踏み外した女です。彼女は王子の妃候補を、神殿に封じられた邪神を利用し、その命を狙った罪人です。」
「何!?」
「しかも彼女は、その邪神によってその身も心も穢れてしまい…その為に、あの家に押し込められたのです。あそこには…神具がいくつか置かれて居て、そこに住む事でその穢れを落とすのです。」
「た、確かにあそこには妙な道具が置かれていた。まさか、あれが…。」
「彼女があなたをもてなしたのは…彼女に憑いた穢れが、同じく穢れた魂を持つあなたを求めた為でしょう。ところであなた…あの女と交わりましたね?」
私の言葉に、彼はビクリと肩を揺らした。
「実は、先程訪ねて来られた神殿の使者から教典を頂きまして…そのおかげか、あなたの身体は勿論、魂までもが酷く汚れて見えるようになりました。ですから、あなたはあの女と関係を持ったのだろうと─。私…そんなあなたとは、もう結婚しません。今日もって、婚約は破棄させて貰います。」
「え!?」
「あんな恐ろしい女と愛を交わした男と、結婚など出来る訳ありません。それに…この件に父も大変お怒りです。後は罪人と浮気者で、仲良くやればいいと。」
「俺は心を入れ替える、だから─!」
※※※
彼は涙を流し、反省の言葉を述べたが…その後、神殿の使者にあの女の元へと連れて行かれ…一生あの家で暮らす事となってしまった。
神殿の使者曰く、これ以上邪神の穢れを広めてはならないという事で、このような結果になったのだ。
出来心で浮気し、こんな事態を招いた事を、彼は毎日嘆いていると、後に神殿の使者が教えてくれた。
そして私は、その話を新しい婚約者が決まった日に耳にした。
私はあの出来事以降、その神殿に通うようになり…今度こそいい縁を結びたいと、その神殿に祀られる神に祈って居たのだ。
どうやら…神は無事に、私の願いを聞き届けてくれたらしい。
あの男と、揃って幸せになれたらと思ってたけど…結局幸せになれたのは、私だけだったわね─。
167
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
婚約者と従妹に裏切られましたが、私の『呪われた耳』は全ての嘘をお見通しです
法華
恋愛
『音色の魔女』と蔑まれる伯爵令嬢リディア。婚約者であるアラン王子は、可憐でか弱い従妹のセリーナばかりを寵愛し、リディアを心無い言葉で傷つける日々を送っていた。
そんなある夜、リディアは信じていた婚約者と従妹が、自分を貶めるために共謀している事実を知ってしまう。彼らにとって自分は、家の利益のための道具でしかなかったのだ。
全てを失い絶望の淵に立たされた彼女だったが、その裏切りこそが、彼女を新たな出会いと覚醒へと導く序曲となる。
忌み嫌われた呪いの力で、嘘で塗り固められた偽りの旋律に終止符を打つ時、自分を裏切った者たちが耳にするのは、破滅へのレクイエム。
これは、不遇の令嬢が真実の音色を見つけ、本当の幸せを掴むまでの逆転の物語。
『婚約破棄はご自由に。──では、あなた方の“嘘”をすべて暴くまで、私は学園で優雅に過ごさせていただきます』
佐伯かなた
恋愛
卒業後の社交界の場で、フォーリア・レーズワースは一方的に婚約破棄を宣告された。
理由は伯爵令嬢リリシアを“旧西校舎の階段から突き落とした”という虚偽の罪。
すでに場は整えられ、誰もが彼女を断罪するために招かれ、驚いた姿を演じていた──最初から結果だけが決まっている出来レース。
家名にも傷がつき、貴族社会からは牽制を受けるが、フォーリアは怯むことなく、王国の中央都市に存在する全寮制のコンバシオ学園へ。
しかし、そこでは婚約破棄の噂すら曖昧にぼかされ、国外から来た生徒は興味を向けるだけで侮蔑の視線はない。
──情報が統制されている? 彼らは、何を隠したいの?
静かに観察する中で、フォーリアは気づく。
“婚約破棄を急いで既成事実にしたかった誰か”が必ずいると。
歪んだ陰謀の糸は、学園の中にも外にも伸びていた。
そしてフォーリアは決意する。
あなた方が“嘘”を事実にしたいのなら──私は“真実”で全てを焼き払う、と。
婚約破棄と言われても、どうせ好き合っていないからどうでもいいですね
うさこ
恋愛
男爵令嬢の私には婚約者がいた。
伯爵子息の彼は帝都一の美麗と言われていた。そんな彼と私は平穏な学園生活を送るために、「契約婚約」を結んだ。
お互い好きにならない。三年間の契約。
それなのに、彼は私の前からいなくなった。婚約破棄を言い渡されて……。
でも私たちは好きあっていない。だから、別にどうでもいいはずなのに……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる