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第22怪 真相
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僕はね、僕としてこの世に生まれ出てくるはずだった。
でもね、君に喰われてしまって、それが叶わなかったんだよ。
君に喰われた僕は、君と一つになってずっと一緒に居たんだ。
君は、僕に気づいてなかったけどね。
…この世に生まれ落ちた時点で、君は僕に何をしたかなんて忘れてしまったものね、仕方ないか。
その後気づく機会はあったけど、君は余りに幼くて、僕にしたことに対して、何も思わなかったものね。
あの時は悔しかったな…。
だから思ったんだ、君にもいつか、僕と同じ思いをさせてやりたいって。
どうしようもない恐怖と絶望を、君も感じなければ不公平じゃないか。
だから、君がこの百物語を書き始めた時は、絶好の機会が訪れた思ったよ。
怖い話をすれば、おのずとその人物の周りに怪異が集まってくるからね。
僕がこうして姿を現すことができたのも、君が物語を綴ってくれたおかげだ。
話が進めば進む程、僕の力は強まった。
そして君は不思議な夢を見るようになった。
いつしか、その夢に関連する話を書くようになった。
自分と似たオーラを持つ人にも出会った。
ちなみにその見えたオーラとやらは、黒いのが君で、色のないのは…君に喰われ命をなくした僕のものだ。
僕は、これでようやく君が僕のことを思い出すだろうと、嬉しくなった。
なのに君は、見当違いなことを言いだす始末…。
何が、自分は女の子に取り憑かれてるだ。
何が、私と同じだ。
何が、お祓いだ。
人の体に勝手に入ってくる、とんでもない奴、とんでもない悪者…それは、お前なんだよ。
悪者は、お前なんだよ!
なんだ、その目は。
…俺の存在を、疑っているのか?
だったら、俺の顔を思い出してみろ。
俺がどこに住んでいるか、答えてみろ。
俺の名前が何か、お前は知っているか?
※※※
私は膝から、がくりと崩れ落ちた。
私は今まで彼と何度も話をしてきたじゃないか…なのに思い出せない、答えられない、知らない。
彼の顔がぼやけて分からない…そうか、私に喰われ生まれてこれなかったんだもの、当然だ。
女の子の正体を突き止めるべく、その人の元へ向かった時、私は一体どこに向かって出かけたのか、今になってはもう分からない。
そういえば今まで彼と会って話をする時、どこかで待ち合わせたこと何て無かった…気づけばいつの間にか、彼が傍にいた。
どうして、それがおかしいことだと気づかなかったんだろう。
彼の名前を知らないのも当然だ、彼は名前が付けられる前に死んだんだもの。
…いや違う、私が喰い殺したのか。
この百物語を始める時に、私はこう思った。
『怪異に触れる者は、それ自身も怪異になる-。』
何が怪異になるだ。
私自身が、とっくに怪異だったではないか。
この人にとって、恐ろしい怪異…。
※※※
私は猛烈な眩暈を感じ、その場に蹲った。
胃の中から、酸っぱいものが上がってくる。
脂汗がダラダラと、体から噴き出してくる。
私はそのまま、その場に倒れ込んだ。
閉じられようとする視界の端に、その人がニヤニヤと笑っているのが見えた。
それは私を蔑むような、嘲るような、そんな笑いだった。
「ねぇ…君は、ちゃんとこの物語を完成させてよ…。そして今度こそ、僕を…。」
薄れゆく意識の中で、彼のそう囁く声が聞こえた-。
でもね、君に喰われてしまって、それが叶わなかったんだよ。
君に喰われた僕は、君と一つになってずっと一緒に居たんだ。
君は、僕に気づいてなかったけどね。
…この世に生まれ落ちた時点で、君は僕に何をしたかなんて忘れてしまったものね、仕方ないか。
その後気づく機会はあったけど、君は余りに幼くて、僕にしたことに対して、何も思わなかったものね。
あの時は悔しかったな…。
だから思ったんだ、君にもいつか、僕と同じ思いをさせてやりたいって。
どうしようもない恐怖と絶望を、君も感じなければ不公平じゃないか。
だから、君がこの百物語を書き始めた時は、絶好の機会が訪れた思ったよ。
怖い話をすれば、おのずとその人物の周りに怪異が集まってくるからね。
僕がこうして姿を現すことができたのも、君が物語を綴ってくれたおかげだ。
話が進めば進む程、僕の力は強まった。
そして君は不思議な夢を見るようになった。
いつしか、その夢に関連する話を書くようになった。
自分と似たオーラを持つ人にも出会った。
ちなみにその見えたオーラとやらは、黒いのが君で、色のないのは…君に喰われ命をなくした僕のものだ。
僕は、これでようやく君が僕のことを思い出すだろうと、嬉しくなった。
なのに君は、見当違いなことを言いだす始末…。
何が、自分は女の子に取り憑かれてるだ。
何が、私と同じだ。
何が、お祓いだ。
人の体に勝手に入ってくる、とんでもない奴、とんでもない悪者…それは、お前なんだよ。
悪者は、お前なんだよ!
なんだ、その目は。
…俺の存在を、疑っているのか?
だったら、俺の顔を思い出してみろ。
俺がどこに住んでいるか、答えてみろ。
俺の名前が何か、お前は知っているか?
※※※
私は膝から、がくりと崩れ落ちた。
私は今まで彼と何度も話をしてきたじゃないか…なのに思い出せない、答えられない、知らない。
彼の顔がぼやけて分からない…そうか、私に喰われ生まれてこれなかったんだもの、当然だ。
女の子の正体を突き止めるべく、その人の元へ向かった時、私は一体どこに向かって出かけたのか、今になってはもう分からない。
そういえば今まで彼と会って話をする時、どこかで待ち合わせたこと何て無かった…気づけばいつの間にか、彼が傍にいた。
どうして、それがおかしいことだと気づかなかったんだろう。
彼の名前を知らないのも当然だ、彼は名前が付けられる前に死んだんだもの。
…いや違う、私が喰い殺したのか。
この百物語を始める時に、私はこう思った。
『怪異に触れる者は、それ自身も怪異になる-。』
何が怪異になるだ。
私自身が、とっくに怪異だったではないか。
この人にとって、恐ろしい怪異…。
※※※
私は猛烈な眩暈を感じ、その場に蹲った。
胃の中から、酸っぱいものが上がってくる。
脂汗がダラダラと、体から噴き出してくる。
私はそのまま、その場に倒れ込んだ。
閉じられようとする視界の端に、その人がニヤニヤと笑っているのが見えた。
それは私を蔑むような、嘲るような、そんな笑いだった。
「ねぇ…君は、ちゃんとこの物語を完成させてよ…。そして今度こそ、僕を…。」
薄れゆく意識の中で、彼のそう囁く声が聞こえた-。
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