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見えたモノ
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S君が体験したお話です。
彼が小学生のころ、学校の帰り道に一軒の古い空き家がありました。
人が住まなくなってかなりの年月が経っているらしく、庭は背の高い草が生い茂り荒れ放題でした。
建物自体も雨どいが外れていたり、壁も所々ひび割れていて危険な状態でした。
そのため、親や学校の先生からは、そこには近づいてはいけないと口酸っぱく言われていました。
しかし子供たちにとっては、そこは「ただの空き家」ではなく「お化け屋敷」として広く知られていました。
二階の窓から女の人がこちらを見ていた、家の中から妙な音がする、赤く光る火の玉が見えた…様々な噂が飛び交っていました。
そこでS君は友達のA君、O君と一緒にそれらの噂を確かめるべく、その空き家を見に行くことにしました。
その夜、三人は空き家の前に集合して、懐中電灯を片手に外から様子を伺いました。
しばらく待ってみましたが、女の人の姿や奇妙な音、火の玉は確認できませんでした。
このまま何も起きないのはつまらない、三人は肩を落としました。
そこでせっかくこうして集まったのだから、家の中も確認してから帰ろうということになりました。
庭に入り生い茂った草をかき分け、三人は何とか玄関にたどり着きましたが、鍵がかかっていて扉は開きませんでした。
そこで他に入り口はないかと庭に面した、おそらく居間であろう部屋の前に回り込みました。
その部屋の窓はカーテンが閉まった状態になっていて、中の様子がよく分かりません。
A君が「このカーテンの破れた所から、中が見えるぞ。」といい、懐中電灯で中を照らし覗き込みました。
すると「おい、見てみろよ。」とA君は驚きの声を上げ、S君に場所を交代するよう言いました。
S君は同じように中の様子を伺いました。
そして信じられないものを見たのです。
動けないでいるS君に、O君が「俺にも見せろよ。」と焦れた様子で声を上げました。
S君と入れ替わったO君は、わくわくした様子で中を覗き込みました。
そして次の瞬間、彼はギャアッと声を上げました。
そのまま真っ青な顔で体を震わせ後退りすると、一目散に走り出しました。
それを見た二人は、慌ててその後を追いかけました。
三人はしばらく走り続け、空き家からだいぶ離れた公園にたどり着きました。
O君はまだ顔色が悪く、しゃがみこんだまま肩で息をしています。
最初に口を開いたのはA君でした。
「まさか本当に女の人がいるなんて。Sも見ただろ?」
それを聞いたS君はあれ?と思いました。
自分は女の人なんて見ていません。
S君が見たものは、全く別のものでした。
「俺が見たのは赤ちゃんだよ。赤ちゃんがハイハイして目の前を横切っていった。」
互いに見えたものが違う…驚いているところで、O君が「違う!」と声を上げました。
「俺が見たのは、男だ。目を見開いて真っ赤な色した男が、窓に張り付いてたんだよ。それがこっちを見て言ったんだ。出てけって…。」
三人はそれきり、その空き家に近寄ることはありませんでした。
彼らが小学校を卒業するころには、空き家は取り壊され更地になったそうです。
彼が小学生のころ、学校の帰り道に一軒の古い空き家がありました。
人が住まなくなってかなりの年月が経っているらしく、庭は背の高い草が生い茂り荒れ放題でした。
建物自体も雨どいが外れていたり、壁も所々ひび割れていて危険な状態でした。
そのため、親や学校の先生からは、そこには近づいてはいけないと口酸っぱく言われていました。
しかし子供たちにとっては、そこは「ただの空き家」ではなく「お化け屋敷」として広く知られていました。
二階の窓から女の人がこちらを見ていた、家の中から妙な音がする、赤く光る火の玉が見えた…様々な噂が飛び交っていました。
そこでS君は友達のA君、O君と一緒にそれらの噂を確かめるべく、その空き家を見に行くことにしました。
その夜、三人は空き家の前に集合して、懐中電灯を片手に外から様子を伺いました。
しばらく待ってみましたが、女の人の姿や奇妙な音、火の玉は確認できませんでした。
このまま何も起きないのはつまらない、三人は肩を落としました。
そこでせっかくこうして集まったのだから、家の中も確認してから帰ろうということになりました。
庭に入り生い茂った草をかき分け、三人は何とか玄関にたどり着きましたが、鍵がかかっていて扉は開きませんでした。
そこで他に入り口はないかと庭に面した、おそらく居間であろう部屋の前に回り込みました。
その部屋の窓はカーテンが閉まった状態になっていて、中の様子がよく分かりません。
A君が「このカーテンの破れた所から、中が見えるぞ。」といい、懐中電灯で中を照らし覗き込みました。
すると「おい、見てみろよ。」とA君は驚きの声を上げ、S君に場所を交代するよう言いました。
S君は同じように中の様子を伺いました。
そして信じられないものを見たのです。
動けないでいるS君に、O君が「俺にも見せろよ。」と焦れた様子で声を上げました。
S君と入れ替わったO君は、わくわくした様子で中を覗き込みました。
そして次の瞬間、彼はギャアッと声を上げました。
そのまま真っ青な顔で体を震わせ後退りすると、一目散に走り出しました。
それを見た二人は、慌ててその後を追いかけました。
三人はしばらく走り続け、空き家からだいぶ離れた公園にたどり着きました。
O君はまだ顔色が悪く、しゃがみこんだまま肩で息をしています。
最初に口を開いたのはA君でした。
「まさか本当に女の人がいるなんて。Sも見ただろ?」
それを聞いたS君はあれ?と思いました。
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「俺が見たのは赤ちゃんだよ。赤ちゃんがハイハイして目の前を横切っていった。」
互いに見えたものが違う…驚いているところで、O君が「違う!」と声を上げました。
「俺が見たのは、男だ。目を見開いて真っ赤な色した男が、窓に張り付いてたんだよ。それがこっちを見て言ったんだ。出てけって…。」
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