怖気怪談。SS集

まざるもの

　これは私の友達のお父さんが、小学生のころに体験したお話です。

　彼の家の前には、道を挟んで大きな畑が広がっていました。
　それは隣の家が所有する畑でした。
　その家のおばさんは生ごみが出ると、肥料がわりにしょっちゅう畑にそれをまいていたそうです。
　そうすると、自然とカラスたちが集まってくることになります。
　カラスたちにとっては恰好の餌場になっていたようです。
　たくさん集まってくると鳴き声もギャアギャアとうるさく、彼はあまりいい気はしていませんでした。

　ある日のことです。
　彼はいつものように、畑にカラスたちが群がっているところへ出くわしました。
　しかし、今日はどうも様子がおかしいのです。
　カラスたちの鳴き声が一段とうるさく、なんだか鋭い鳴き方をしているなと思ったそうです。
　気になった彼は自分の近くにあった石を拾い上げ、カラスが集まっている近くにそれを投げました。
　ボトッと石が落ち、その音に驚いたカラスたちが一斉に飛び立ちました。

　そしてその中に、彼は見たのです、異様なものを。
　飛び立つカラスたちの中に混ざり、一羽だけ…カラスとも何ともつかないようなものがいました。
　それは青白い顔をした男の生首で、耳のある場所に耳はなく、代わりにカラスの真っ黒な羽がついていたそうです。
　その羽をばたつかせながらこちらをギロリとひと睨みして、それはそのまま空へと飛び去って行きました。
　その後も集まっているカラスたちを何度も見かけましたが、あの異様なものは二度と見ていないそうです。

　カラスたちに混ざる、人とカラスの交ざるもの…いったい何だったのでしょう？