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ゴミ捨て場
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T君が体験したお話です。
T君は10年前、ある会社の社員寮に住んでいました。
その社員寮には、入口のすぐ脇にゴミ捨て場が設置されていました。
設置と言っても、ブロックを積み上げ作られた仕切りがあり、そこへゴミを捨てるというものです。
T君がその寮に入ってしばらく経ったころ、そのゴミ捨て場でちょっと困ったことが起きるようになりました。
ゴミの捨て方が悪い人がいるようで、時々ゴミ捨て場にゴミが散らかっていることがありました。
おそらく袋の口がきちんと結ばれておらず、そこから中のゴミが外にこぼれ落ちているようです。
そしてその回数は、次第に増えていきました。
ある日のことです。
T君は会社でトラブルがあり、寮に戻ってくるのが夜中近くになってしまいました。
いつもより速足で、入り口に向かっていた時です。
ゴミ捨て場に袋がいくつか積まれ、捨てられているのが目に入りました。
今日はゴミが散らかっている様子はありません。
それを確認し、前を通り過ぎた時です。
後ろからガサガサッと大きな音がしました。
その音に驚き、T君は振り返りました。
そこで、彼はおかしなものを見たのです。
積まれたゴミ袋の隙間から、二本の腕がにゅっと突き出していたのです。
驚きで固まっているT君の目の前で、その腕は一つのゴミ袋の口を何の躊躇もなく開け始めました。
そして袋の中をガサガサとかき分け、やがて少し手を止めると、今度は袋の底の方まで手を伸ばし再びガサガサとかき回し始めました。
それはまるで、一心不乱に何かを探しているような動きでした。
T君はついに「ああ!」と叫び声を上げました。
すると、その二本の腕は動きを止め、漁っていた袋の中からズルズルと手を引き抜きました。
そして、それはそのまま積まれたゴミ袋の隙間へと消えていきました。
T君は、恐る恐るゴミ捨て場に近づき、震える手で袋の山をかき分けました。
もしかしたら、誰かが隠れてそんないたずらをしたのではないか。
そうでなければ、こんなところに腕があるなんて…。
しかし、そこには誰の姿もありませんでした。
その出来事からしばらくして、一人の後輩が社員寮を出ていきました。
理由は人間関係のトラブルでした。
社内における人間関係ではなく、プライベートでの人間関係が原因でした。
なんでも見知らぬ女性から一方的に好意を持たれ、寮の前で待ち伏せをされ話しかけられたり、物を押し付けられるようになったそうです
困った後輩は、住んでいる場所を知られているこの寮を出ていき、違う場所で部屋を借りることにしたのです。
T君はその後輩と部署も違い仲が良いわけでもなかったため、そんな事情を知りませんでした。
そういえば、最近見慣れぬ女性が入り口の前にいたな…手に可愛い紙袋を持っていたけど、あれは彼へのプレゼントだったのか。
爪に真っ赤なマニキュアを塗っていて、と…その瞬間、T君は思い出しました。
あの夜、ゴミ捨て場で見た二本の腕。
その腕の爪の先にも、真っ赤なマニキュアが塗られていたことを。
もしかしてあの腕は、後輩につきまとう女性のもので、漁っていたゴミ袋は、後輩のものだったのだろうか…。
その後輩が寮を出て以降、不思議とゴミ捨て場のゴミが散らかることは無くなったそうです。
「ゴミ捨て場がきれいになったのは良かったけど、その理由はあの腕がいなくなったからなのかなって。あれも後輩と一緒に引っ越して行ったんだろうね。今でも別の場所で、後輩のゴミを漁ってないといいんだけど…。」
T君は心配そうな顔して、そう言いました。
T君は10年前、ある会社の社員寮に住んでいました。
その社員寮には、入口のすぐ脇にゴミ捨て場が設置されていました。
設置と言っても、ブロックを積み上げ作られた仕切りがあり、そこへゴミを捨てるというものです。
T君がその寮に入ってしばらく経ったころ、そのゴミ捨て場でちょっと困ったことが起きるようになりました。
ゴミの捨て方が悪い人がいるようで、時々ゴミ捨て場にゴミが散らかっていることがありました。
おそらく袋の口がきちんと結ばれておらず、そこから中のゴミが外にこぼれ落ちているようです。
そしてその回数は、次第に増えていきました。
ある日のことです。
T君は会社でトラブルがあり、寮に戻ってくるのが夜中近くになってしまいました。
いつもより速足で、入り口に向かっていた時です。
ゴミ捨て場に袋がいくつか積まれ、捨てられているのが目に入りました。
今日はゴミが散らかっている様子はありません。
それを確認し、前を通り過ぎた時です。
後ろからガサガサッと大きな音がしました。
その音に驚き、T君は振り返りました。
そこで、彼はおかしなものを見たのです。
積まれたゴミ袋の隙間から、二本の腕がにゅっと突き出していたのです。
驚きで固まっているT君の目の前で、その腕は一つのゴミ袋の口を何の躊躇もなく開け始めました。
そして袋の中をガサガサとかき分け、やがて少し手を止めると、今度は袋の底の方まで手を伸ばし再びガサガサとかき回し始めました。
それはまるで、一心不乱に何かを探しているような動きでした。
T君はついに「ああ!」と叫び声を上げました。
すると、その二本の腕は動きを止め、漁っていた袋の中からズルズルと手を引き抜きました。
そして、それはそのまま積まれたゴミ袋の隙間へと消えていきました。
T君は、恐る恐るゴミ捨て場に近づき、震える手で袋の山をかき分けました。
もしかしたら、誰かが隠れてそんないたずらをしたのではないか。
そうでなければ、こんなところに腕があるなんて…。
しかし、そこには誰の姿もありませんでした。
その出来事からしばらくして、一人の後輩が社員寮を出ていきました。
理由は人間関係のトラブルでした。
社内における人間関係ではなく、プライベートでの人間関係が原因でした。
なんでも見知らぬ女性から一方的に好意を持たれ、寮の前で待ち伏せをされ話しかけられたり、物を押し付けられるようになったそうです
困った後輩は、住んでいる場所を知られているこの寮を出ていき、違う場所で部屋を借りることにしたのです。
T君はその後輩と部署も違い仲が良いわけでもなかったため、そんな事情を知りませんでした。
そういえば、最近見慣れぬ女性が入り口の前にいたな…手に可愛い紙袋を持っていたけど、あれは彼へのプレゼントだったのか。
爪に真っ赤なマニキュアを塗っていて、と…その瞬間、T君は思い出しました。
あの夜、ゴミ捨て場で見た二本の腕。
その腕の爪の先にも、真っ赤なマニキュアが塗られていたことを。
もしかしてあの腕は、後輩につきまとう女性のもので、漁っていたゴミ袋は、後輩のものだったのだろうか…。
その後輩が寮を出て以降、不思議とゴミ捨て場のゴミが散らかることは無くなったそうです。
「ゴミ捨て場がきれいになったのは良かったけど、その理由はあの腕がいなくなったからなのかなって。あれも後輩と一緒に引っ越して行ったんだろうね。今でも別の場所で、後輩のゴミを漁ってないといいんだけど…。」
T君は心配そうな顔して、そう言いました。
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