見知らぬ男性に突然婚約破棄を告げられましたが…それで困り不幸になったのは、妹の方でした。

coco

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見知らぬ男性に突然婚約破棄を告げられましたが…それで困り不幸になったのは、妹の方でした。

 道を歩いていた私は…突然、知らない殿方に呼び止められた。

「君は、何てふしだらな女だ…!俺という者が居ながら、そんな男と腕を組み歩いているとは…。もういい…お前とは、婚約破棄する!」

 そう怒鳴り、彼は去って行ってしまった。

 な、何だったのかしら、今のは─。
 いや、それより…隣に居る彼が、酷く困惑して居るのが伝わって来る。

「君…今の男は、一体…?もしかして、君は本当はあの男が好きなんじゃ…?」

「そんな事、ある訳ないじゃないですか!私が好きなのは、あなたお一人だけです!」

「そう、だよな…。疑ってすまなかった。」

 そう言いつつも、彼は暗い顔をしていて…私達は気まずくなり、そのまま別れた─。

※※※

「お姉様、聞いたわよ!公衆の面前で、婚約破棄を宣言されたんですって!?」

 そう言って、ニヤニヤと嫌な笑みを浮かべ話しかけて来たのは…私の双子の妹だった。

「それは、そうだけど…。でも、それを言って来たのは─」

「私ね、前々からお姉様と彼じゃ釣り合わないと思ってたのよ!彼には、この明るい性格の私が相手じゃないとって…。だから…お姉様に代わり、私が彼の新しい婚約者になってあげようと思うの!」

「何を馬鹿な事を…。あなたは、つい最近婚約が決まったばかりじゃ─」

「あぁ…あの男の事?その話なら、私断ろうと思うわ。だって…いくらお金持ちでも、顔が全く好みじゃないもの。そういう訳だから…私は早速彼の家に行って、話をしてくるわ。お姉様も、早く良いお相手を見つける事ね!」

 そう言って、妹は家を飛び出して行ってしまった。

 あの子にも、困ったものね…。
 こちらの話も、全く聞かずに─。

※※※

「あなたが、お姉様に婚約破棄を告げたと聞きました。ならば…新しい婚約者には、是非私を選んで下さい!」

 私の言葉に…彼は困ったような顔をした。

 どうして、そんな顔を…?
 あなたは私の事を、明るくて可愛らしい子だねって、褒めて下さったのに─。

「…確かに、彼女は婚約破棄されたが…相手は俺じゃないぞ?」

「え…?」

「その相手は、どこの誰だか分からない男で…。だが、偶然居合わせた俺の従者が機転を利かし、その男の跡を付けてくれたんだ。そして、彼に話を聞くと…彼が婚約破棄したかったのは、彼女ではなく…君の方だったんだ。」

「何ですって!?」

「君は…酷く酒癖が悪いようだね。とある仮面パーティーで出会った君とあの男は…酒の力もあり、婚約する事を約束した上で、肉体関係を持ってしまった。そして、朝になり酔いが覚めた君は…すぐにその場を逃げて行った。君の方は、一夜の過ちと思って居た様だが…彼は、そんな関係になってしまった君を必死で探して居たんだ。だが君は、そのパーティに姉である彼女の名を名乗り参加して居て…そしてその名を頼りに君を探した彼は、姉の方の彼女に行き着いてしまい…俺と居る彼女に怒り、あんな事を言ったという訳だ。」

「あ、あの…確かに、そんな事もあったような…。でも…私が好きなのは、本当はあなたで─」

「俺は、酒にも男にもだらしない女は嫌いだ!しかもそんな女のせいで、こんな面倒事に巻き込まれて…。彼女の身に何かあったら、どうしてくれるつもりだったんだ!もう、君の顔など見たくもない…早く出て行ってくれ!」

 そして私は、彼の家から追い出されてしまった。

 まさか、とっくに忘れていたあの時の事が、今になってこんな事態を引き起こすなんて─!
 
 どうしよう…私、彼に嫌われてしまったわ─!

「あら…随分早かったじゃない。ちょうど今、あなたの婚約者になるはずだった彼と…もう一人、殿方がいらしてるわよ?」

「え…?」

 お姉様に言われ、部屋に入れば…そこには、私が婚約を断ろうとしていた男と…パーティーで出会ったあの男が、怒った顔で私を待って居た。

「散々君に貢がされたのに…顔が気に入らないから、婚約破棄するだって!?ふざけるな!」

「よくも、俺に嘘の名を教えたな…!俺は、君を本気で好きになったというのに─!」

※※※

「そ、そんなに怒らないでよ…!お姉様、助けて…彼らをどうにかしてよ!」

 妹は涙を流し、私に手を伸ばしたが…私は、その手を叩き落とした。

「あなたは、余りに節操がなさすぎるわ。それが、こんな結果を招いたのよ…自業自得じゃない!私は、早く彼と仲直りをしたいから…もう行きます。後は、三人で話し合いなさい。」

「そ、そんなぁ…!」

 その後、妹の婚約話は正式に破棄となった。

 ただ、借りたお金は返さなければならず…彼女は、自身の財産を全て失った。

 更に、そんな如何わしいパーティーに参加して居た事を酷く父に咎められ…この家の恥だと、妹は親子の縁を切られ、家から追い出されてしまった。

 そして、行き場を無くした妹は…あのパーティで知り合った男の元に引き取られた。

 しかしその男は、とても性格が歪んでいる事で有名な人物だったらしく…自身を馬鹿にした罰だと言って、妹は毎晩のように彼に酷く責め立てられ、奉仕させられているとか─。

 もはや彼の婚約者というより、性奴隷の様なものね。

 一方私は、すっかり誤解も解け…彼との絆は、この騒動の前よりもずっと深まった。

 彼は、もう君を危ない目に遭わせたくない…すぐにでも、俺の元に来て欲しいと言ってくれ…私達は、予定よりもうんと早く結婚する事となった。

 突然あの男に婚約破棄を告げられた時は驚いたけれど…そのおかげで、私は幸せになり…逆に困った事になってしまい、不幸な結果を迎えたのは…妹の方だったわね─。

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