13 / 114
冬休みの始まり
しおりを挟むそんなやり取りは一ヶ月続いて、二ヶ月続いて、今日、冬休み前の終業式まで続いている。
今日でそれも終わりかな。靴箱で、上靴をスニーカーに履き替えながら、そう思う。終業式はもう終わって、大掃除も終わって、後は帰るだけだ。明日からは冬休み。部活のためだけに学校に通うようになる。そうしたら、宇野と会うことも少なくなるだろう。吹奏楽部の活動時間は朝から昼までで、陸上部は昼過ぎからだから。時間が違いすぎる。
あたしとたっちゃんの間に宇野がいるのは気分が悪かったが、これで終わりと思うと不思議に名残惜しくなる。もしかしたら、あたしは今までの親密で奇妙な関係に安心していたのかもしれない。あたしはたっちゃんが好きで、たっちゃんは宇野が好きで、宇野はたっちゃんが好きか好きじゃない。友だち以上だけど、それ以上じゃない、まったくわかりやすい関係だった。相関図にしたら、シンプルな絵になるだろう。そう、シンプルな一方通行。それがどう変わるかは、宇野だけが知っている。
ふと、制服の厚い生地が居心地悪く感じた。周りを見ると、靴箱を埋め尽くす生徒は、みんな休みが始まるって、嬉しそうな顔をしている。そう言えば、アンコンまであと少ししかない。あと、たった四日。今年は、どこが最優秀をとるかな。あたしは乾燥でかさついた左手にベージュの手袋をはめた。
「あ、英里佳」
校門まで出て行くと、門のすぐ側にたっちゃんが立っていた。たっちゃんは首に黒いマフラーを巻いていて、その色が白い肌に映えて綺麗だ。
「宇野は?」
そう訊くと、たっちゃんは首を横に降った。まだ来てないのか。別にいいけど。
「明日から冬休みだね」
たっちゃんが楽しそうに言う。
「英里佳、部活以外に何か予定ある?」
「特に無いよ」
「じゃあ、どっか遊びに行こうよ」
「うん」
「宇野君も誘ってさ」
「それは二人で行きなさい」
そう言うと、たっちゃんは顔を赤くして唇を尖らせた。最近、あたしは何かとたっちゃんを宇野にけしかけている。吹っ切っているとか、やけくそじゃない。何となくだ、何となく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる