おんなのこがたり【好きなのは、男の体のおんなのこ】

十日伊予

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暴言

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「もうさ、告っちゃいなよ」
 あたしの提案に、たっちゃんは更に顔を赤くして首をぶんぶんと横に振る。
「あたしは、宇野は良い奴だと思うよ」自然に言葉が出てくる。「たとえたっちゃんがフラれても、それはたっちゃんが男の子だからじゃないと思う。宇野がそういう奴だって、たっちゃんも分かってるでしょ? 可能性はきっとあるし、気持ちを伝えることが大事だと思うな」
 たっちゃんは恥ずかしそうに目を泳がせてあたしの話を聞いている。決めきれないんだろう。それにしても、よくこんな雄弁に喋れるなって思う。自分のことは棚に上げてさ。
「ぼ、僕、頑張ってみる」
 しばらくして、たっちゃんが意を決した。あたしはたっちゃんの頭に手を置き、撫でる。あたしの背が高いのもあるけど、同年齢の男の子より体の小さいたっちゃんの頭には、背伸びすることもなく簡単に手が置ける。そんな所が、たっちゃんを男の子じゃないように思わせて、同性を好きなたっちゃんの気持ちが痛いほどわかってしまう。たっちゃんも辛いんだ。
「おーい、カマ野郎!」
 不意に、自転車に乗った坊主頭が、通りざまにたっちゃんを罵った。確か、たっちゃんと同じクラスの男子だ。坊主頭はあたしたちより少し離れた場所で、数人の他の坊主頭達と一緒に、自転車にまたがりたむろしていた。
「キメぇんだよ!」
「テレビ出ないんですかー? ニューハーフってさぁ!」
 幼稚なからかいと、下品な笑い声が聞こえる。腹が立つ。何でそんなことができるの。たっちゃんのこと、何にも知らないくせに。何にも知ろうとしていないくせに。
「何あいつ。最っ低」
 あたしがそう言うと、たっちゃんは慌ててあたしの手を取った。
「気にしないで。僕平気だから」
 困った顔のたっちゃんが不憫で、あたしは坊主頭を殴りたくなる。だけど、そんなことをしたら悲しむのはたっちゃんだ。そう思い、ぐっと衝動を抑え込んだ。そんなあたしと、無視をするたっちゃんが気に入らなかったのだろう。坊主頭達は、下劣な侮辱の矛先を変えた。
「そこのブスもさー、レズじゃねーの? スカート開けたら着いてんだろ? カマ野郎と一緒にいるとか、頭わいてるか、お仲間しかねーよな!」
 正直、坊主頭が低能すぎて馬鹿馬鹿しい。反応するだけ時間の無駄だ。そう思った時だった。
「と、取り消して!」
 甲高い怒声が響き、坊主頭達も周りにいた無関係の生徒達も、視線をたった一人に向けた。あたしのすぐ隣に立っている、小柄で髪の長い――たっちゃんに。
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