66 / 114
アンコン前日
夢
しおりを挟む
その夜、夢を見た。
夢の中では、たっちゃんは男の子で。夕暮れのあたしの部屋で、あたしのスカートを持って立っている。薄いピンクに、白い花柄のスカート。あたしが小学校のとき、たっちゃんに貸したスカート。たっちゃんが誰にも内緒で、初めて履いたスカート。それを、右手でしっかりと持って立っている。あたしはベッドに腰掛けて、目の前のたっちゃんを見つめた。たっちゃんは裸だった。
「英里佳、僕ね」
あたしは、たっちゃんの白い身体から目をそらさなかった。人生で一度も見たことがない、大人になりかけの男の子の身体。知らない場所だけが、あたしの脳みその補正がかかって、落書きみたいになっている。
「僕は、女の子をやめるよ」
そう言って、たっちゃんは手を開き、スカートを床に落とした。アイボリーのカーペットを敷いた床が水のように波打ち、スカートを飲み込んでいく。
「私は女の子なんだ」
突然、隣から話しかけられた。目だけをそっちに向けると、あたしの隣に、宇野が座っている。
「今まで黙ってたけどね、私は女の子だったんだ」
そう言って、宇野はじっとあたしを見る。その目は宇野の目じゃなくて、黒目がちで丸いたっちゃんの目だ。あたしは震えて、首を横に振った。
「たっちゃん、ごめん。もう忘れて」
頭を両手で押さえる。そうして目を閉じようとしたら、誰かがあたしのまぶたに指を当てた。
「森ちゃんが自殺しそうで、怖い」
そっと目を見開かされた。目の前には、浜島がいる。口が裂けて、そこからよだれがダラダラ垂れている浜島が。
「オカマのくせに、ホモのくせに!」
耳元で宇野が叫んだ。中崎の声だった。
夢の中では、たっちゃんは男の子で。夕暮れのあたしの部屋で、あたしのスカートを持って立っている。薄いピンクに、白い花柄のスカート。あたしが小学校のとき、たっちゃんに貸したスカート。たっちゃんが誰にも内緒で、初めて履いたスカート。それを、右手でしっかりと持って立っている。あたしはベッドに腰掛けて、目の前のたっちゃんを見つめた。たっちゃんは裸だった。
「英里佳、僕ね」
あたしは、たっちゃんの白い身体から目をそらさなかった。人生で一度も見たことがない、大人になりかけの男の子の身体。知らない場所だけが、あたしの脳みその補正がかかって、落書きみたいになっている。
「僕は、女の子をやめるよ」
そう言って、たっちゃんは手を開き、スカートを床に落とした。アイボリーのカーペットを敷いた床が水のように波打ち、スカートを飲み込んでいく。
「私は女の子なんだ」
突然、隣から話しかけられた。目だけをそっちに向けると、あたしの隣に、宇野が座っている。
「今まで黙ってたけどね、私は女の子だったんだ」
そう言って、宇野はじっとあたしを見る。その目は宇野の目じゃなくて、黒目がちで丸いたっちゃんの目だ。あたしは震えて、首を横に振った。
「たっちゃん、ごめん。もう忘れて」
頭を両手で押さえる。そうして目を閉じようとしたら、誰かがあたしのまぶたに指を当てた。
「森ちゃんが自殺しそうで、怖い」
そっと目を見開かされた。目の前には、浜島がいる。口が裂けて、そこからよだれがダラダラ垂れている浜島が。
「オカマのくせに、ホモのくせに!」
耳元で宇野が叫んだ。中崎の声だった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる