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1566 蜜月
フランマの胸中
しおりを挟む一方その頃、フランマはミューズにアルバのことを茶化されていた。
「ずいぶんあの人たちの肩持つじゃないですか。もしかしてフランマさんもそっちなんですか~?」
ミューズがニヤニヤして言う。フランマは肩をすくめた。
「わかったよ、今度夜遊びに行く時はお前だけ置いていく」
「えっ、あ、それは」
フランマの冷たい言葉に、ミューズがあたふたとする。フランマをはじめ、ジャグリングの先輩芸人はよく後輩芸人を酒場や風俗街に連れ出す。そういった場で気に入られた後輩は舞台で良いポジションをもらいやすかったり、稽古でしっかり面倒を見てもらえたりと得をするので、後輩たちは絶対に先輩の誘いについていく。先輩のフランマがそれに連れて行かないと言い出したものだから、ミューズはたちまちに頭を下げた。
「ったく、ダチを茶化すんじゃねえよ」
呆れた顔で腕を組み、フランマがため息をつく。彼の言葉に、ミューズはちょっと唇を尖らせる。
「友達って、フランマさん、アルバさんにめちゃくちゃキレてたじゃないすか」
ミューズにそう言われ、フランマは「あー」とばつが悪そうな声を漏らして頭をかく。
「そりゃあ、あの時は怒ってたよ。でも俺も大人気なかったし、いつまでもってわけにはいかないだろ」
そう言い、またため息をついた。フランマなりに歩み寄ろうとしているのだが、アルバがちっとも応えない。彼を全て許してやって受け入れてやれば仲直りはできるだろうが、そうしてやれるほどフランマはおおらかではない。彼は、自分にも非はあるがアルバの非はそれ以上だと思っている。
「ぶっちゃけ、赤毛のこと知ってたんですか? 先輩、仲よかったでしょ」
ミューズが切り込んでくる。「知ってたけどさあ」と答え、フランマは苦虫を潰したような顔をした。
「俺、マッツィオのこと嫌いだったんだよな。あいつやばいよ。俺はやめとけって言ってた。アルバは聞かなかったけど」
ツィオのアルバへの振る舞いを思い出し、胸が悪くなる。不機嫌を撒き散らすツィオも、それに必死で謝るアルバも、見ていて気持ちのいいものではない。それに、心から好いて健気に尽くしていたアルバに、ツィオは一度たりとも想いを返してやらなかった。同郷ということもあり、フランマはアルバを一座に入った時から気にかけている。彼にとっては大切な友人の一人だ。そんな彼をどんどん不安な顔にさせていくツィオを、フランマは心の底から軽蔑して嫌っていた。
「アルバさんもやばくないですか?」
ミューズは、フランマの顔色をうかがいながら言う。同性相手にヒステリックな女のように泣いてすがっていた姿が、ミューズにとって一番強いアルバのイメージだ。フランマがうーんとうなる。
「あいつは何ていうか……そりゃあ男が絡んだら女々しいけど、突き放すほど悪いやつじゃない」
「でも、男と付き合ってるんですよ? 変態じゃないすか」
ミューズの言葉を、フランマは否定できない。「確かに変態かもしれないけど……」とつぶやいて、首を傾げた。しばらく言葉を探し、やがてちょうどぴったりのものを見つけると口を開く。
「男がいないと生きていけない女っているだろ? 俺にはああ見えてる」
フランマのせりふに、ミューズが「うえっ」と舌を出した。
「あの体格で女はないでしょー」
彼はアルバの女装姿を思い浮かべる。筋肉質で、肩幅も背丈もそれなりにあり、どこをどう見ても男にしか見えない。
「俺もそう思う」
フランマが苦笑する。彼も、妙ちくりんな友人の格好を想像していた。
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