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十日伊予

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1567 復讐

親の心

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 アルバは自室のベッドに寝転がる。拘束は解かれたが、護衛たちは彼を見張るために部屋の外にも中にもいる。メルはアルバに人質にされないよう、彼の傍からは離れて部屋の外で控えていた。
 どれだけベッドの上で呆然としていたのだろうか。気がつけば、アルバはまた縛られている。ジーグリッドとの話を終えたアンジャンドがアルバを訪ねてきて、彼に危害を加えないように一時的に拘束されたのだ。
「国祖神さまが計画に絡んでいると、ジーグリッドから聞いた。本当だな?」
 アンジャンドはアルバと距離を取り、そう尋ねる。アルバは筆記用具をしまっている引き出しを、顎で指した。アンジャンドが引き出しを調べると、ハンカチに包まれた水色の小石が見つかる。その透明がかった色味に、アンジャンドは頭を抱えた。
「父さんは、ことが終わったら都を沈めるって言ってた」
 父はそんなことはしないはずだ、そう思いながらもアルバはそう付け加える。アンジャンドはその言葉に大きく息を吐き、疲れ切った表情を見せる。
「……これはもう我々の手には負えない。極力、表沙汰にはしたくないが、国王に報告せねばならん」
 そう言い、彼はハンカチごと小石を自分のポケットにしまう。もう一度ため息をつくと、しっかりとアルバに向き合った。
「よくも、息子をたぶらかしてくれたな」
 アンジャンドの口調には、怒りが滲んでいる。アルバは乾いた笑みを浮かべた。
「ぼくだって、こんなことしたくなかった」
 ぽつりと、アルバがそんなことをつぶやく。
「でも、ぼくを育ててくれた父さんは、死んじゃったんだよ。あいつらを許せないだけじゃなくて、ぼくは父さんを救いたかった」
 ぽつり、ぽつりと言葉を口にするたびに、悲しみが胸に押し寄せる。涙が目のふちに溜まり、鼻の奥がツンと痛む。
「父さん……」
 ごめんなさい。その言葉までは間に合わず、アルバは涙を流す。しゃくりあげ、息をするのも精いっぱいだ。養父ナャへの謝罪は、嗚咽に邪魔されて唇から先には出てこない。しかし、アンジャンドは形にならないその言葉を感じ取った。
「……これは一人の父親としての言葉だ」
 泣き崩れるアルバの姿に同情を覚え、彼は口を開く。
「親のために我が子が手を汚すことなど、望まない。親は命をとしてでも子を愛するものだ」
 ──お父さんは命をかけて君を守ったんだよ。君に生きてほしかったんだよ。
 アンジャンドの言葉は、アルバの胸にかつてのラスの言葉を思い起こさせる。アルバは目頭が熱くなり、一瞬、呼吸を止めた。脳裏に優しかったナャの姿が浮かぶと、堰を切ったように激しく泣き出してしまう。
 泣きじゃくるアルバを後に、アンジャンドは部屋を出ていく。アルバは何もわからなくなるほど泣き、やがて泣き疲れて眠りに落ちた。

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