リーネリア様は生きる意味と死んだ理由を知りたい

暗い灯り

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第一章 眠りの底で

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 第1章:眠りの底で

ガタン、ゴトン——
軋む車輪の音が、闇の中を進んでいく。

木製の馬車の檻の中で、小さな影が膝を抱えていた。
緑がかった肌、尖った耳、大きな瞳。
リナはゴブリンに転生した。

だが、その瞳だけは異質だった。
どこか、大人びていた。
何かを思い出そうとしているように——
けれど、それが何なのか、まだ自分でもわからなかった。

____


リナは自殺した。
そして目覚めるとゴブリンだった。

薄暗い、森の中、岩陰で泥だらけの虫を食べていた。周りには痩せ細ったゴブリンが何体もいた。

リナは空腹が満たされると、水溜りから本を見つけた。指でなぞり、破れながらもページをめくる。
 
夢中になって落ちている本を集めた。
食欲のような衝動に駆られて、文字を貪った。

ある日、リナは夢を観た。

それとも、死の間際に見た最後の光景か。

火のように揺らめく空の下で、
黒い髪の子ども。

「リナ…ごめんね。」

自分のようで、他人のようでもあった。

次の瞬間、巨大な何かが空を覆った。
それは竜だった。
鋼のように輝く鱗。

目が覚めると。
リナは初めて声を発した。
咀嚼しきれなかった虫の足が喉を刺激する。

「…ゎだじは、じな…」
私はリナ。
人間だった。

 ____

いく月か経ち、リナは流暢に話せる様になっていた。王国の襲撃によってゴブリン達は殺された。リナは兵士に命乞いをした。


「私を……殺さないで。あなたたちの言葉で、私は話せます」
兵士たちは唖然とし、しばし沈黙の後、ひとりが言った。
「連れていけ。これはフェン様の探していた珍種かも知れない」


 ____


「ねえ、おじさん。……ゴブリンって、どうして殺されるの?」

突然の問いかけに、馬車の御者が振り返る。彼は眉をひそめたが、答えなかった。

「悪いことしてないのに。……生きてるだけで、だめなの?」

「わしには、難しいことはわからん。ただ....君は運がいい」

重たい沈黙。
彼女はそれ以上、何も言わなかった。

ただ、遠ざかる木々の向こうに、どこか懐かしい空を探していた。その空の向こうに、あの竜がいるような気がして。

自分がどこから来たのかも、なぜここにいるのかもわからない。
けれど、ただ一つ——
生きようとした。

そうして、リーネリアの物語が始まった。
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