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通りすがりの子にペンダントをプレゼントした
しおりを挟む魔王はこのアリストラスト帝国の宮殿のどこかに潜んでいる。
魔族の急襲で帝国は混乱に陥り、剣の金属音と戦いの叫び声が響き渡る。この大陸を支配してきた帝国がここで陥落すれば、それは人類の敗北を意味するかもしれない。
「くそ、魔王はどこだ!」
「レン、傷がひどいよ。私が今癒してあげるね?」
仲間の聖女イリスの助けがなければ、いくら俺――勇者レン――が剣と魔法の達人でも、とっくに倒れていただろう。銀髪が汗で額に張り付き、青い瞳が戦場の炎を映す。神話では、銀髪と青い目は世界を揺るがす存在の証とされている。勇者である俺は、その定めを背負っている。
恋人でもある聖女イリスは黒のロングヘアーに青い目だ。これは世界の運命を背負うものを助ける人物に多くみられる、とされる。
ここは大広間か? 女帝の玉座があるはずだ。急ごう、まだ間に合うかもしれない」
遠くに略式の軍装をまとった女騎士らしき人物が魔族の猛攻を必死に防いでいるのが見える。魔王軍の急襲で正装を整える暇もなかったのだろう。目を凝らすと、玉座のそばに立つ彼女――女帝アリストラスト17世か?
足が重く、痛みが走る。それでも駆け寄る。あと十歩ほどで届く距離まで来たとき、彼女の姿がはっきり見えた。
毛先がカールしたミディアム・ロングの銀髪が風に揺れ、まるで月光が舞うよう。青い瞳は深い湖のように澄み、戦いの最中でも神秘的な輝きを放っている。略式の軍装――軽い革鎧と動きやすい短めのマント――が彼女の小柄な体にフィットし、毅然とした立ち姿と儚い微笑みが混在する。剣で魔族の攻撃を受け流そうとするが、高い金属音と共に剣が折れる。慌てて魔法の結界を張り、攻撃を凌ぐ姿に、俺と同じ魔法戦士の才を感じた。
「大丈夫か!」
「大丈夫じゃないよっ……あなた、誰?」
彼女の声は弱々しくも、青い瞳が鋭く俺を捉える。帝国が裏切りで崩壊したことを知る俺には、彼女が俺を信じていない理由が分かる。だが、その銀髪と青い目を見て、俺は確信した――彼女もまた、神話に刻まれた存在だ。
「違う! 味方だ!」
「味方……? 私を見捨てなかった者なんて、もういないのに……」
俺は剣を地面に突き立て、彼女の瞳を見つめた。同じ銀髪と青い目を持つ彼女に、運命の糸を感じながら、少し照れくさく笑う。
「俺はレン。魔王を討つ者だ。あぁああ、いやぁ、そのカワイイ子だなって思ってさ。笑うなよ? マジだから」
彼女の青い瞳が揺れ、呆然とした表情が浮かぶ。俺はポケットから青い石のペンダントを取り出し、彼女の小さな手にそっと握らせた。
「これプレゼント。世界の意思とよばれる宝石使っている。何かあったら、これで俺を呼んで欲しい。必ず助けに行くから――勇者レンの約束だ」
彼女の唇が微かに動き、囁く。
「……笑わないよ」
俺は虚勢を張って笑った。
「なら良かった。その宝石に念をこめれば、俺はそれ聞くことできるからさ」
「私はエリル。普段は陛下とか女帝アリストラスト17世って呼ばれるけど……お前にはエリルって呼んでほしい。」
彼女は視線を少し逸らし、頬に薄い紅が差す。長いまつ毛が震え、慌ててカールした銀髪を耳にかける仕草が愛らしい。略式の軍装越しにも、彼女の気品と意志が滲み出ている。俺は首を傾げた。
「そっちに敵がいるのか?」
「え、ううん、違うよっ!」
その慌てた声と仕草に、胸が温かくなった。イリスが叫ぶ。
「レン、急がないと! 魔王を倒すチャンスだよ!」
「そうだな。すまないエリル、今は君を助けられない。」
「うん、分かってる。」
イリスがエリルに強力な治癒魔法をかけた。
「エリルさん、私たちが魔王を倒すから、あなたは逃げてね?」
「分かった、頑張ってみるよ」
エリルは真っ直ぐイリスを見て、俺をちらりと一瞥すると、小さく微笑んだ。
「ありがとう」
次の瞬間、魔族の咆哮が響き、黒い影が迫る。
「逃げろ、エリル! 俺が時間を稼ぐ!」
彼女はペンダントを胸に押し当て、崩れゆく宮殿を後にした。カールした銀髪が揺れ、青い瞳が光を反射して、まるで星が舞うように美しかった。俺と同じ神話の定めを背負う彼女と、再び巡り会う予感がした。
「ねえ、レン。あの女帝にペンダント渡してたけど、何?」
俺は気まずそうに頭をかいた。
「助けなきゃ死ぬだろ。一人だったし」
「カワイイ子って、言ってたよね。 戦場でナンパとはさすがですねっ」
「励ますためのノリだよ!」
イリスはクスリと笑った。癒しの光を強めて俺を軽く痛めつける。
「いてて」
「あーぁ。私、軽い彼氏もっちゃったなぁ……」
俺は立ち上がり、剣を手に歩き出した。イリスも微笑みながら後を追い、戦場の喧騒の中へ消えた。
魔王が指揮する軍であると偵察からは聞いている。やつを倒せば、この戦争は終わる。だから、エリルごめんな。俺は必ず魔王を倒す。それまで無事でいてくれ。
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