魔王討伐戦で亡国の女帝をナンパしたら、めちゃくちゃ重たく愛されている勇者の俺

蒼山りと

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あやしい男に君の気持ちはわかる、と言われた

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 古代帝国アリストラストの深部、魔王の玉座が鎮座する暗黒の間。俺とイリスは、血と汗にまみれながら、ついにその場所に辿り着いた。黒い霧が渦巻く玉座の前で、魔王シュベリートが人間の姿で俺たちを迎えた。黒髪に鋭い瞳、穏やかな微笑みを浮かべた彼は、まるで貴族のように優雅だった。

「よく来たね、勇者レン。そして聖女イリス。長い戦いだっただろう」

 その声は低く、どこか疲れた響きを帯びていた。剣先を下げず、叫んだ。

「お前が魔王か! 帝国を滅ぼし、エリルを追い詰めた張本人だな!」

 シュベリートは静かに首を振ると、玉座に腰を下ろした。その仕草はあまりにも自然で、極悪な敵には似合わない穏やかさがあった。

「張本人、か。確かに我々がこの帝国を壊した。だが、君たち人間が自ら壊し合う姿を見ていたのも、また事実だよ」


 イリスが一歩前に出て、制するように手を上げた。

「何!? 私たちが分裂したからって、魔族が攻めてきた言い訳にはならないわ!」

 シュベリートは目を細め、二人の顔をじっと見つめた。そして、ゆっくりと立ち上がり、こう呟いた。


「やっと少しだけ君たちを理解できたようだ」

 剣を握る手に力を込める。こいつは何が言いたい?

「理解? 何を言ってるんだ?」

 魔王は小さく笑い、両手を広げてみせた。その姿は、確かに人間そのものだった。

「魔族はね、理解できた魔物に擬態できるんだ。かつては君たちを恐ろしい魔物としか見ていなかった。だが、この300年、君たちを見てきた。争い、裏切り、憎しみ……そして、時に見せる絆や優しさ。それが分かったから、いまも擬態している。人間という魔物にね」

 その言葉に、俺とイリスは一瞬言葉を失った。シュベリートの瞳には、憎悪でも嘲笑でもなく、深い思索の光があった。

 イリスが震える声で反論した。


「人間を魔物呼ばわりするなんて……! 私たちはただ生きようとしてるだけよ!」

 シュベリートは頷き、静かに答えた。

「そうだね。生きようとするその姿が、時に恐ろしく、時に美しい。だからこそ、私は君たちと戦うのをやめようと思ったんだ。レン、君がエリルにあのペンダントを渡したようにね」


「お前、あれを見ていたのか……?」

シュベリートは玉座の背に手を置き、遠くを見るような目で言った。

「そうだよ、レン。あの瞬間を見ていた。あの女帝――エリルにペンダントを渡し、『必ず助けに行く』と約束した君をね。あの優しさが、私に人間を少しだけ理解するきっかけを与えたんだ」


俺は剣を握る手に汗を感じ、声を荒げた。


「見ていたなら、なぜ止めなかった! エリルは今頃死んでいるかもしれない! お前の軍が彼女を追い詰めたせいで!」


シュベリートの微笑みが一瞬消え、深い影がその顔をよぎった。


「止められなかったさ。君たちの裏切りと分裂が、彼女を孤立させた。私はただ、その結果を見届けただけだ。だが、あの約束は私に問いを残した。人間は本当に魔物なのか、それとも何か別の存在なのか、とね」


イリスが一歩進み出て、癒しの光を手に宿したまま、鋭く問いかけた。

「それで? 私たちを理解した気になって、人間の姿に擬態してるっていうの? それが魔族の答えなの?」

シュベリートは静かに頷き、彼女を見つめた。

「そうだよ、聖女。この姿は、私が君たちに近づいた証だ。魔族は理解したものに擬態する。かつては獣や怪物にしかなれなかった。だが、今はこうして人間の姿で君たちと話している。それが、私の答えだ」

レンは剣を下ろし、混乱と怒りが混じった声で呟いた。

「人間を魔物って呼んでたくせに……今さら何だよ、その言葉は。偽善か? 結局、エリルを救えないんだろ? 俺の気持ちを理解しているのか!」

シュベリートは目を閉じ、ゆっくりと息を吐いた。そして、再び俺を見据えて言った。

「偽善ではないよ、レン。あの時、私はまだ君たちを理解していなかった。エリルの件は、私にとっても重い教訓だった。だからこそ、今ここで君たちに提案するんだ。戦いをやめないか?」

イリスが驚きに目を見開き、レンも一瞬言葉を失った。

シュベリートは続けた。

「この闘いの間、私は君たちをずっと見てきた。憎しみも、優しさも、裏切りも、絆も。その全てが、人間という魔物を形作っている。もうこれ以上、理解のために血を流す必要はないだろう?」

 暗黒の間は静寂に包まれた。俺の剣を握りしめる手は震え、イリスが手から放つ聖なる光がわずかに揺れた。二人は互いの顔を見合わせ、魔王の言葉をどう受け止めるべきか、答えを見つけられずにいた
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