魔王討伐戦で亡国の女帝をナンパしたら、めちゃくちゃ重たく愛されている勇者の俺

蒼山りと

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東方の女賢者リンお姉さんの恋愛相談

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まずは仲間が必要だ。
張り紙を貼り終え、俺は酒場の片隅にあるテーブルに腰を下ろした。

ろうそくの灯りが「冒険者募集」の文字を柔らかく照らし、俺の決意を映し出すかのようだった。エリルを救うには頼もしい仲間が必要だ。王女の命令に逆らうことになるかもしれないが、彼女を助けたいという思いは揺るがない。握り潰した拳を見つめながら、俺は暗い気持ちに沈んでいた。

酒場「銀の月」は、王都イリスフィアでも冒険者たちが集まる場所として知られている。壁際では屈強な男たちが武器や鎧に身を包み、笑い声を響かせながら酒杯を傾けていた。俺は彼らの会話に時折耳を傾けた。

「ああ、あの自称『勇者レン』って奴がまた演説してるらしいな。」

「魔王復活を警告してるんだろ?あいつ、人を集めるのが妙に上手いよな。」

「信じてる奴は少ないさ。見世物として人が集まってるだけだろ。」

俺と瓜二つの男――それは街道で出会った詐欺師のことだ。なぜあんな奴が俺と同じ顔をしているのか、さっぱり分からない。もし俺が本当に勇者レンだったら…?いや、そんな考えは頭を振って追い払った。今はエリルのことで頭がいっぱいだ。

ふと気配に気づいて顔を上げると、一人の女性が立っていた。肩まで流れる黒髪と、静かに俺を見つめる紺色の瞳。街道で見た、あの詐欺師レンのそばにいた少女だ。

「覚えていますか?」

彼女の静かな声は、酒場の喧騒の中でも不思議と耳に届いた。首元には蒼いペンダントが揺れ、ろうそくの光に照らされて淡く輝いている。どこかで見た記憶があるような気がしたが、どうしても思い出せなかった。

「あぁ、街道で会った…」

俺がそう答えると、彼女は小さく頷いた。その微笑みには儚げな影がちらついていた。

「座ってもいいですか?」

俺が頷くと、彼女は静かに椅子に腰を下ろした。

「東方の女賢者リンと呼ばれています。」

少し恥ずかしそうに名乗る彼女。東方の女賢者か。落ち着いた物腰と瞳に宿る知性が、その名にふさわしい。

「俺はアル。レンの村から来たんだ。」

「はい、知っています。」

その返事に俺は少し驚いた。俺のことを知っている?彼女の瞳には何か言いたげな感情が浮かんでいるように見えた。

「冒険者を募集しているのですね。」

彼女が壁の張り紙に目をやると、俺は答えた。

「ああ…協力してくれる人を探してるんだ。」

「何かお力になれることがあれば。」

その言葉には献身的な響きがあった。見ず知らずの女性にエリルのことを話していいものか迷ったが、リンは俺の迷いを見透かしたように微笑んだ。

「恋愛相談なら乗りますよ。」

突然の言葉に俺が目を丸くすると、彼女は慌てて手を振った。

「あ、いえ…昔、よく人の相談に乗っていたので。悩んでいる様子だったから。」

頬を赤らめる彼女の仕草は初々しく、落ち着いた雰囲気とはまた違った魅力があった。不思議と話しやすい人だ。そう思いながら、俺は少しずつ口を開いた。夏祭りでの出会いから、王都への旅、そして別れまで。エリルとの思い出を語るうちに、胸の痛みが和らいでいくのを感じた。

エリルの名前を出した瞬間、リンの表情が微かに揺れた。彼女の首元のペンダントが一瞬青く光った気がしたが、リンはすぐに普段の静かな顔に戻り、俺の話に頷いてくれた。

「エリルという娘が好きなのですね。」

俯きながら照れたように言う彼女に、なぜか既視感を覚えた。

「彼女を助けなきゃいけないんだ。王女の命令で危険な任務に向かった。でも、俺は…」

「その娘に運命を感じているのですね。」

リンが静かに尋ねると、俺は素直に頷いた。

「ああ、そうかもしれない。」

その瞬間、リンの瞳に深い感情が浮かんだ。悲しみか、怒りか、それとも羨望か?

「でもね、その娘はやめておいたほうが…」

言いかけたリンは急に言葉を切り、首を振って咳払いをした。

「いいえ、何でもありません。」

少し照れたように微笑む彼女に、俺は少し緊張が解けるのを感じた。

「お姉さんに乗り換えようよ。」

冗談めいた言葉に俺が目を丸くすると、彼女は慌てて手を振った。

「冗談です、冗談。」

その仕草に俺は思わず笑ってしまった。リンは物思いにふけるような表情になり、ペンダントをそっと手で包み込んだ。

「私も昔、大切な人がいました。」

遠い記憶をたどるように、彼女の声は少し掠れていた。

「私を裏切った人…でも、やさしい人だったと思います。」

その瞳には言葉にできない感情が宿っていた。

「きっとこの辛い世界で、私を見捨てるしかなかったのでしょうね。」

寂しげに微笑むリンの横顔に、俺は切なさを感じた。

「だから、世界を変えないといけないのです。」

その言葉には静かだが揺るぎない決意が込められていた。

「世界を…変える?」

「あ、いえ…私の夢物語です。」

リンはハッとしたように言葉を飲み込み、話題を変えた。

「エリルさんを助けたいのですね。私にもお手伝いさせてください。」

その真剣な申し出に俺は驚いた。彼女は続けた。

「私は魔法が使えます。こう見えて剣だって。」

少し誇らしげに腰の小さな剣を見せる彼女に俺が感心すると、リンは首元のペンダントに手を当てた。

「このペンダントは、彼のプレゼントなんです。」

恥ずかしそうに微笑む彼女の表情には深い思い出が隠れているようだった。

「彼?」

「はい…大切な人からです。」

遠い目で答える彼女の瞳には言葉にならない思いが映っていた。

俺はその申し出をありがたく思ったが、ふと彼女が詐欺師レンのそばにいたことを思い出した。

「お前、あのレンと一緒にいたよな。あいつとどういう関係なんだ?」

リンは一瞬目を伏せ、静かに答えた。

「私が好きだった人に似ているんです。」

その言葉に俺は眉をひそめた。彼女は混乱したように続けた。

「あなたもそっくりです。まるで同一人物みたいに。」

その瞳には戸惑いと懐かしさが混じっていた。俺が何か言いかける前に、彼女は小さく首を振って謝った。

「ごめんなさい。あのレンさんが気になって、ずっと一緒にいたんです。でも、彼は私の求めている人ではないって、今わかりました。だから、気にしないでください。」

その説明に、俺は彼女の過去に何か複雑な事情があることを感じた。彼女の声には後悔と決意が混じっていて、俺はそれ以上追及するのをやめた。

「なぜ俺を助けようとするんだ?」

俺の問いに、リンは静かに微笑んだ。

「あなたに会った時、なぜか運命を感じたのです。」

その言葉に、俺は不思議な懐かしさを覚えた。まるで昔からの知り合いのような感覚だ。

リンは立ち上がり、明日また会う約束をしてくれた。去り際に振り返り、「必ずエリルさんを救い出しましょう」と微笑んだ。その表情には特別な意味が込められているように感じた。

俺は彼女の後ろ姿を見送りながら、首元で光る蒼いペンダントを思い返していた。どこかで見たことがあるような…でも、いつ、どこで?頭の奥の記憶は靄に包まれたように思い出せなかった。

それでも、東方の女賢者リンと組めば、きっとエリルを救える。そんな確信が俺の中にあった。明日もう一度会って、具体的な計画を立てよう。そう決意し、俺は残りの酒を一気に飲み干した。
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