3 / 498
東洋魔窟
薬と○○
しおりを挟む
東洋魔窟3
聞いていた通り、その従業員の家の中には誰も居なかった。ドアには鍵がかかっておらず無用心に開いていたので、樹は申し訳ないがお邪魔させてもらうことにした。
九龍によくある小さな四角い部屋。福の字を逆さまにした飾り、鉄製のベッドに薄いマット、バルコニーについた鳥籠のような格子。
荷物や生活感があるので家出という感じはしない。
争ったような跡もないし、鍵も壊されてはいない…出る時にただ締め忘れただけに見える。慌てていたのだろうか?
机には手の平サイズのお菓子の空き箱がたくさん。可愛らしいパッケージだが…樹はそれを手に取り、目を凝らした。
見覚えがある。中にはラムネが残っていた。
いや───ラムネに見せかけた、ドラッグが残っていた。
キッチンのゴミ箱にはアルミホイル。少し、燃やした形跡がある。薬を炙った跡だ。
「だから東か…」
樹はアルミホイルを見下ろしながら呟く。
この従業員はドラッグ中毒だ。そして多分、猫は薄々それに気付いていた。普段の挙動にくわえて、飼い猫が居なくなった時の様子が不自然だったのだろう。
なので薬屋の東に話を振った。猫は基本的にドライだが、一度懐に入れた人間はあまり見捨てない。東は薬物に精通しているので、この従業員が困っているのなら何かしら助けになればと思っての事だ。
このラムネのパッケージは以前【東風】で見たことがある。だけど東の扱っている薬じゃない。
九龍城では違法薬物の取引は横行していて、質の悪い安いドラッグも山程出回っている。安い物は、よく売れる。大勢の売人がそれで稼いでいる。だが他より質が悪いということは、身体への影響も他より悪いということ。摂取し始めてから依存し常用する様になり、それから廃人になってしまうまでが短い。
プラス、死亡率も高いのだ。
そうなると、売人は常に客の新規開拓をしなければならなくなる。東はそれを嫌った。
どんな性格か?口は堅いか?金払いはいいか?様々な事柄を見極めなければ回り回って自分にツケがくる。
数より質。九龍には掃いて捨てるほどの人間がいるが、それに甘えて客をとっかえひっかえするよりも少ない上客と長く付き合う方が身の為なのである。
「巷で流行ってるつって流れてきたけど、俺は高品質がウリだからこれは駄目だな」
とかなんとか、この箱を突っつきながら東が言ってた気がする。
ふいに窓の外で鳴き声。樹が格子を開けると太った猫がスルリと入ってきた。
写真の猫だ。
猫はしばらく部屋をウロウロすると、ラムネ──と見せかけたドラッグ──の空箱をハムッ!と口にくわえまた窓から出て行った。樹も同じように窓枠を乗り越え、後を追いかける。
細い鉄骨の上を通り、狭い路地を通り、九龍の街並みをすり抜け、いくらか行くと密集した建物のベランダのひとつに辿り着いた。
横の窓が開いていて猫が入っていく。樹も、また同じようにそこから中へ入り────
死体を見付けた。
聞いていた通り、その従業員の家の中には誰も居なかった。ドアには鍵がかかっておらず無用心に開いていたので、樹は申し訳ないがお邪魔させてもらうことにした。
九龍によくある小さな四角い部屋。福の字を逆さまにした飾り、鉄製のベッドに薄いマット、バルコニーについた鳥籠のような格子。
荷物や生活感があるので家出という感じはしない。
争ったような跡もないし、鍵も壊されてはいない…出る時にただ締め忘れただけに見える。慌てていたのだろうか?
机には手の平サイズのお菓子の空き箱がたくさん。可愛らしいパッケージだが…樹はそれを手に取り、目を凝らした。
見覚えがある。中にはラムネが残っていた。
いや───ラムネに見せかけた、ドラッグが残っていた。
キッチンのゴミ箱にはアルミホイル。少し、燃やした形跡がある。薬を炙った跡だ。
「だから東か…」
樹はアルミホイルを見下ろしながら呟く。
この従業員はドラッグ中毒だ。そして多分、猫は薄々それに気付いていた。普段の挙動にくわえて、飼い猫が居なくなった時の様子が不自然だったのだろう。
なので薬屋の東に話を振った。猫は基本的にドライだが、一度懐に入れた人間はあまり見捨てない。東は薬物に精通しているので、この従業員が困っているのなら何かしら助けになればと思っての事だ。
このラムネのパッケージは以前【東風】で見たことがある。だけど東の扱っている薬じゃない。
九龍城では違法薬物の取引は横行していて、質の悪い安いドラッグも山程出回っている。安い物は、よく売れる。大勢の売人がそれで稼いでいる。だが他より質が悪いということは、身体への影響も他より悪いということ。摂取し始めてから依存し常用する様になり、それから廃人になってしまうまでが短い。
プラス、死亡率も高いのだ。
そうなると、売人は常に客の新規開拓をしなければならなくなる。東はそれを嫌った。
どんな性格か?口は堅いか?金払いはいいか?様々な事柄を見極めなければ回り回って自分にツケがくる。
数より質。九龍には掃いて捨てるほどの人間がいるが、それに甘えて客をとっかえひっかえするよりも少ない上客と長く付き合う方が身の為なのである。
「巷で流行ってるつって流れてきたけど、俺は高品質がウリだからこれは駄目だな」
とかなんとか、この箱を突っつきながら東が言ってた気がする。
ふいに窓の外で鳴き声。樹が格子を開けると太った猫がスルリと入ってきた。
写真の猫だ。
猫はしばらく部屋をウロウロすると、ラムネ──と見せかけたドラッグ──の空箱をハムッ!と口にくわえまた窓から出て行った。樹も同じように窓枠を乗り越え、後を追いかける。
細い鉄骨の上を通り、狭い路地を通り、九龍の街並みをすり抜け、いくらか行くと密集した建物のベランダのひとつに辿り着いた。
横の窓が開いていて猫が入っていく。樹も、また同じようにそこから中へ入り────
死体を見付けた。
16
あなたにおすすめの小説
熟女愛好家ユウスケの青春(熟女漁り)
MisakiNonagase
現代文学
高校まで勉強一筋で大学デビューをしたユウスケは家庭教師の教え子の母親と不倫交際するが、彼にとって彼女とが初の男女交際。そこでユウスケは自分が熟女好きだと自覚する。それからユウスケは戦略と実戦を重ねて、清潔感と聞き上手を武器にたくさんの熟女と付き合うことになるストーリーです。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
春の雨はあたたかいー家出JKがオッサンの嫁になって女子大生になるまでのお話
登夢
恋愛
春の雨の夜に出会った訳あり家出JKと真面目な独身サラリーマンの1年間の同居生活を綴ったラブストーリーです。私は家出JKで春の雨の日の夜に駅前にいたところオッサンに拾われて家に連れ帰ってもらった。家出の訳を聞いたオッサンは、自分と同じに境遇に同情して私を同居させてくれた。同居の代わりに私は家事を引き受けることにしたが、真面目なオッサンは私を抱こうとしなかった。18歳になったときオッサンにプロポーズされる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
〈社会人百合〉アキとハル
みなはらつかさ
恋愛
女の子拾いました――。
ある朝起きたら、隣にネイキッドな女の子が寝ていた!?
主人公・紅(くれない)アキは、どういったことかと問いただすと、酔っ払った勢いで、彼女・葵(あおい)ハルと一夜をともにしたらしい。
しかも、ハルは失踪中の大企業令嬢で……?
絵:Novel AI
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる