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はじめまして、小さな電車
眠たい人生
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ああ眠い。こんな授業、なんの意味があるんだろう。大きくあくびをして、ぐっと体を伸ばす。
私・佐野千春(さのちはる)は、中学2年生。
今は、数学の授業の真っ最中。前に立つ先生が、呪文のように数式を唱えている。
まったく、意味わかんないよね、こんな事。無駄に時間を使いすぎじゃない?先生達はみな、自分の理論が正しいんだって思っているような態度で腹が立つ。
本当に眠い。机に突っ伏して眠りたい。でも、できないんだよなあ………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、小さい頃から人一倍色んなことがよくできた。勉強とか、運動とかね。
おかげで、色んな人からたくさん褒められた。家族はもちろん、先生から、周りの友達まで。
私はその事が、すごくうれしかった。私は、もっともっと褒められたくて、いろいろ頑張った。本当に頑張った。
するとある日、親戚のおばさんに
「まあ、本当にお利口さんでいい子ね。まるでうちのコとは大違い。」
と言われた。
いつもの褒め言葉のはずなのに、嬉しかったのに、その言葉だけは、なぜか引っかかった。
(あれ………?「お利口さん」で「いい子」じゃないと、おばさんの「うちのコ」みたいに言われちゃうの………?)
そう思うと、それ以外に考えられなくなった。皆の「お利口さん」「いい子」じゃないと、いけないんだ。そうだと思ってしまった。
そして、その日を堺に、私は、皆の望む「お利口さん」で「いい子」の、「私じゃない誰か」になってしまったんだ。
お面を被って、誰に対しても礼儀正しく接した。皆の望む「私」になった。
本当の「私」は、どこかに行ってしまった………
そして小6の冬、もう卒業も目前というところで、私は倒れた。
お医者さんに聞けば、理由は過労だそうだ。
その事を聞いた両親は、酷く心配してきた。なにか疲れる事があったんじゃないか、無理せずに休め、と言っていたが、私は「全然平気」と言った。何より、無駄に心配をかけさせたくなかったから。
でも、当の私も、どうして「過労」に倒れたのか、検討もつかなかった。
両親が手続きをしているとき、その事を看護婦さんに相談してみると、看護婦さんは少し迷ったような様子を見せてから、こう言った。
「………人のお家はわからないから、下手に言えないのだけれど……一応参考程度に聞いてね。………私が貴方を見ると、自分の気持ちを隠してるんじゃないか、と思うの。」
初めは、看護婦さんが何を言っているのか分からなかった。
(……自分の気持ちを隠す?……そんなことない、これは私の気持ちのはず………)
そう思ったが、なぜか確証が持てなかった。
「少し考えてみてほしいの、自分が本当に何をおもっているのか。周りの人の気持ちに関係なく、ね。」
私は病院を出たあとも、しばらくそのことについて考えていた。
今の私は本当に、「私」なのだろうか………
そして、自分の生き方がおかしい事に気付いたのは、中学の入学式が終わったあとだった。ずいぶん遅い。遅すぎる。
私は、それほど周りの声に毒されてたんだと思う。
あの看護婦さんがいなけりゃ、今頃どうなっていたか………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、今まで過ごして来た人生の半分以上を、間違えてしまった。そしてそれは、周りから見た「私」の性格を構成してしまった。
中学になると、性格とかが、どんどん変わっていくから大丈夫、なんて学校で習ったけど、うちの親はこれまでの「優等生」を愛してるんだ。今更、性格を変えるのも面倒だ。
おかげで私は、未だに「優等生」を演じてやっている。だから、授業中に寝ることなど許されないのだ。「優等生」が、居眠りをするはずはないから。
正直めんどくさい。
対して代わり映えもなく、楽しくもなく、ただ疲れるだけの人生に、私はとっくに飽きていた。
「起立、礼、着席」
いつの間にかチャイムが鳴り、授業が終わった。
私がもう1度伸びをしていると、
「佐野さん、ちょっといい?」
と先生に呼ばれた。
(……ああ、また面倒な用か。今度はなんだろう。)
「実は、3組の北原さんについてなんだけど………」
「えっ……き、北原ですか……」
その名前を聞いて、私はビクッとした。外で言ったことはないが、私はそいつの事が、何を隠そう、嫌いなのだ。
私・佐野千春(さのちはる)は、中学2年生。
今は、数学の授業の真っ最中。前に立つ先生が、呪文のように数式を唱えている。
まったく、意味わかんないよね、こんな事。無駄に時間を使いすぎじゃない?先生達はみな、自分の理論が正しいんだって思っているような態度で腹が立つ。
本当に眠い。机に突っ伏して眠りたい。でも、できないんだよなあ………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、小さい頃から人一倍色んなことがよくできた。勉強とか、運動とかね。
おかげで、色んな人からたくさん褒められた。家族はもちろん、先生から、周りの友達まで。
私はその事が、すごくうれしかった。私は、もっともっと褒められたくて、いろいろ頑張った。本当に頑張った。
するとある日、親戚のおばさんに
「まあ、本当にお利口さんでいい子ね。まるでうちのコとは大違い。」
と言われた。
いつもの褒め言葉のはずなのに、嬉しかったのに、その言葉だけは、なぜか引っかかった。
(あれ………?「お利口さん」で「いい子」じゃないと、おばさんの「うちのコ」みたいに言われちゃうの………?)
そう思うと、それ以外に考えられなくなった。皆の「お利口さん」「いい子」じゃないと、いけないんだ。そうだと思ってしまった。
そして、その日を堺に、私は、皆の望む「お利口さん」で「いい子」の、「私じゃない誰か」になってしまったんだ。
お面を被って、誰に対しても礼儀正しく接した。皆の望む「私」になった。
本当の「私」は、どこかに行ってしまった………
そして小6の冬、もう卒業も目前というところで、私は倒れた。
お医者さんに聞けば、理由は過労だそうだ。
その事を聞いた両親は、酷く心配してきた。なにか疲れる事があったんじゃないか、無理せずに休め、と言っていたが、私は「全然平気」と言った。何より、無駄に心配をかけさせたくなかったから。
でも、当の私も、どうして「過労」に倒れたのか、検討もつかなかった。
両親が手続きをしているとき、その事を看護婦さんに相談してみると、看護婦さんは少し迷ったような様子を見せてから、こう言った。
「………人のお家はわからないから、下手に言えないのだけれど……一応参考程度に聞いてね。………私が貴方を見ると、自分の気持ちを隠してるんじゃないか、と思うの。」
初めは、看護婦さんが何を言っているのか分からなかった。
(……自分の気持ちを隠す?……そんなことない、これは私の気持ちのはず………)
そう思ったが、なぜか確証が持てなかった。
「少し考えてみてほしいの、自分が本当に何をおもっているのか。周りの人の気持ちに関係なく、ね。」
私は病院を出たあとも、しばらくそのことについて考えていた。
今の私は本当に、「私」なのだろうか………
そして、自分の生き方がおかしい事に気付いたのは、中学の入学式が終わったあとだった。ずいぶん遅い。遅すぎる。
私は、それほど周りの声に毒されてたんだと思う。
あの看護婦さんがいなけりゃ、今頃どうなっていたか………
◇◇◇◇◇◇◇◇◇
私は、今まで過ごして来た人生の半分以上を、間違えてしまった。そしてそれは、周りから見た「私」の性格を構成してしまった。
中学になると、性格とかが、どんどん変わっていくから大丈夫、なんて学校で習ったけど、うちの親はこれまでの「優等生」を愛してるんだ。今更、性格を変えるのも面倒だ。
おかげで私は、未だに「優等生」を演じてやっている。だから、授業中に寝ることなど許されないのだ。「優等生」が、居眠りをするはずはないから。
正直めんどくさい。
対して代わり映えもなく、楽しくもなく、ただ疲れるだけの人生に、私はとっくに飽きていた。
「起立、礼、着席」
いつの間にかチャイムが鳴り、授業が終わった。
私がもう1度伸びをしていると、
「佐野さん、ちょっといい?」
と先生に呼ばれた。
(……ああ、また面倒な用か。今度はなんだろう。)
「実は、3組の北原さんについてなんだけど………」
「えっ……き、北原ですか……」
その名前を聞いて、私はビクッとした。外で言ったことはないが、私はそいつの事が、何を隠そう、嫌いなのだ。
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