現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第31話 エルフの里エルラン村

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猪熊亭の食堂で、エルフ姉妹と一緒に食事をしてると、俺は周りの人達から憐れみの視線を向けられていた。
きっと顔についた紅葉模様の赤痣のせいだろう。

エルフ姉妹は仲良く食事をしており、向かいに座る俺とは視線を合わせない。
俺も女性の視線が怖いので、その方が楽なのだが、今日は姉妹をエルフの里に送り届ける予定なので少し気まずい。

「ここの料理は美味しいわね。今度作ってみようかしら」
「うん、とっても美味しいよね。お姉ちゃん」

ララとルルは本当に仲の良い姉妹だ。
俺は自分の姉のことを思い出して、嫌な気分になった。

ララとルルは、許可なく街に入ったので、街中から移動しなければならない。
そして、千里眼で2人の里を探すという作業も残っている。

『この2人の里ならわかりますので、座標を送りますよ』

こういう時、エイシスは役に立つのだが、余計なことをするのでいまいち安心できない。

「食事が終わったら送って行くからな。用意しとけよ」

「まって、せっかく街に来たんだから少し見物したい」
「私も見てみたい」

誘拐されてたのに観光気分かよ。

「わかったよ。午前中だけだぞ。午後から出発だ」

「「やったーー!」」

今日は仕事ができないな。
お金稼がないといけないのに。

「ケン、どうしたの?浮かない顔して」
「ケン兄ちゃんどうしたの?」

「いや、お金稼いでポーション作りをしようって思ってたから、その事を考えてただけだ」

「ポーションなら私のお婆ちゃんが毎日作ってるよ。エルフの間でも有名な薬師なんだから」
「お婆ちゃんすごいの~~」

「そうなのか?」

「ケンが良ければポーション作りを教えてもらえるように頼んであげてもいいわよ」
「いいわよ」

ポーションの作り方はスマホのメモ帳でわかるけど、細かい温度とか時間とかは書いて無いので自分で作る場合は失敗覚悟で何度も練習するようだと思っていたけど、教えてくれるのなら助かる。

「じゃあ、頼んでもらえるか?」

「「いいわよ(いいよ)」」

(やったー!これでポーション作りが始められる)

『長かったですね。ここまでくるのに』

(いろいろあったんだ。仕方ないだろう?)

『始めからマスターが薬師さんに頼んで教えてもらっていれば、こんなに引っ張ることにはならなかったはずですけど?』

(そ、それは、知らない人に話しかけるのは勇気がいるんだよ。コミュ症なめんな!)

『はあ~~いつになったら大賢者に相応しいマスターになってくれるのやら』

エイシスの呆れた声を脳内で聞きながら、もう厄介ごとには首を突っ込まないぞと思っていた。

それからエルフ姉妹を連れて街に繰り出した。
ララもルルも里の外に出たことがなかったようで、目を輝かせながら風景や商店を眺めていた。

ララは15、6歳、ルルは10歳前後。
2人は、綺麗な服や装飾品に興味があるらしく、店に入っては服を自分にあてて似合っているかどうか、試していた。

「あまりお金は出せないが、好きな物を買ってもいいぞ」

「「えっ、いいの?(やったー!)」」

買いたい物があったらしい。
欲しければ最初から言えば良いのに。

『マスター、それは少し違います。欲しくても遠慮して言えない事が普通なのです』

(そうなのか?)

『マスターは、もう少し女心を理解した方が良いですよ。でないとハーレムは築けません』

(そんなの作る気ないから。俺は一生独身で構わない)

『やれやれ……』

「そうだ。ペロのリボン買わないといけないのだった」

《忘れてたの?酷い》

エルフ姉妹は可愛い洋服を見ている。
その間に俺はリボンを探す。

このリボン、ララに似合いそうだな……
ルルにはこっちの色がいいかも……

俺は思わずそんな事を思っていた。
は!?俺………なんでそんなこと……

『買ったらどうですか?』

「そうだな、買おうか……」

ペロの分も含めて3つリボンを購入した。


◇◇◇


お昼をおしゃれなカフェみたいなところですませて、今は影渡りでエルフ里のエルラン村の入り口付近に移動した。

ララとルルの髪の毛にはララが緑色、ルルが水色のリボンが結ばれている。
首に巻きついてるペロはピンクのリボンだ。

エルフ姉妹の買い物はここぞとばかりたくさん買った。
主にお菓子だけど。
金貨1枚が消えてしまったので、稼がないとマジヤバい。


それで俺はエルフの里の中にあるエルラン村の前でエルフ姉妹にここで待っててほしいと言われて待っている。

2人は木の蔦で出来た半円の門を潜り、中に入って行った。
この門の中にエルフの村があり、人間が来るとしたら村を出て商売をしているエルフの商人の従者くらいだという。
種族的な差別とは違うらしいが、エルフにとって村は木々の恩恵を受け取る神聖な場所らしく、人間が入るには村長の許可が必要になるようだ。

ララとルルが門を潜ってから、かれこれ1時間は経っている。
俺は暇を持て余し、学校カバンに入っていたラノベを取り出して続きを読み始めた。

そういえば、この世界に来てゆっくり本も読めなかった。
魔獣と戦い、ギルドの仕事をし、おまけに誘拐犯を捕まえてこうして今ここにいる。

結構、忙しなかったんだな……

『まだまだですよ。ラノベの主人公はもっと頻繁に事件が起きてますし』

「何でそんなことまで知ってんの?」

『マスターが樫村女子から借りた本は読書済みです』

「俺、まだ3、4冊しか読んでないけど?全部で10冊は超えてたよね?」

『それは秘密です』

えっ、どういうこと?
エイシスは、実態がないから読めないと思うけど?
マナがあれば情報を汲み取ることができるって前に言ってたけど、どうやってラノベを読んだの?

謎だ……

『謎めいた女の子の方がキュンってくるでしょう?そういう事です』

「いやいや、そういう事じゃなくってね……」

「お待たせーー」

そう言ってやってきたのはララと見知らぬエルフの男性だった。
背の高い美丈夫の男性で、その目はキリッとしていた。

「君がケン君か。この度は娘のララとルルを助けてくれてありがとう。娘達が居なくなって森の中をあちこち探したんだ。魔獣におそわれたのではないかと心配でしょうがなかった。でも、ケン君が2人を助け出してくれた。感謝しても仕切れない。本当にありがとう」

良いお父さんのようで、ララは「お父さんは、もう~~」っと甘えた声を出していた。

「たまたまララと出会って、助ける手段があったからそうしたまでです」

「そんな謙遜など必要ない。大森林の中層でララを見つけてくれたのだろう。そんなところにいて無事な人間が只者ではないのは分かっている。2人に聞いたのだが、ケン君のことは言えない、と言っていた。大森林を抜け出せるほどの能力の持ち主だ。警戒するのは当たり前だし、私も聞こうと思わない。娘達の命の恩人だしね」

そう言ってくれるのは助かる。
それにララとルルは約束を守ってくれたようだ。

「さあ、こんなところで立ち話は良くない。我が家に来てくれ。妻もケン君を歓迎する用意をしている」

「それでは遠慮なくお邪魔します」
「うむ、そうしてくれ」

ララ達と一緒に門を潜ると、そこは別世界だった。

はっ!?
どうなってるの、これ………

門の外から見た景色と中に入った時の景色がまるで違うのだ。
門の外から見たのは、木々の中に平家の家並みが点在する普通の村みたいだったが、中に入ると遥か遠くに大きな木が見えている。
その木は天まで届いており、雲を突き抜けて先が見えない。
村は木々は多いが広がる大地に石畳の道路。
咲き誇る草花に幾つかのツリーハウス。
そして豪華な木造の建築物などもいくつかある。

「これってどういうこと?」

「へへ、驚いた?あの蔦の門は一種の転移門なんだよ。特別な許可がないと本当のエルフの村に入れないんだ。この場所は、大森林の最奥地だし、周りには結界が張ってあって危険な魔獣は入って来れないの。
商人とか来てもさっきの見たままの村しか知らないんだよ。ケンは特別なんだ」

そうララが自慢げに話してくれた。

転移門……エルフの魔法か?

『正確には精霊魔法ですね。精霊力を使って一定の場所に飛ばされると考えてくれれば良いと思います』

「すごいな、エルフって……」
「えへん、すごいでしょう?」

ララのドヤ顔に納得してしまうほど心を持っていかれた。

「もしかして、あの大きな木は世界樹とか?」
「すごい、良く知ってるね。エルフ以外世界樹の存在知らないと思ってたけど人間でも知ってる人いたんだ」

地球のラノベ知識ですけどね~~

「ケン君、失礼だが世界樹の話はどこで?」

ララのお父さんに問いかけられた。
俺は咄嗟に……

「俺は遠いところから来たんですけど、その地方では大きな木が天を貫いていると昔話があったんです。それを思い出して……」

嘘ですけど……

「そんな話が……恐らく大昔に里を出たエルフが伝えたのかも知れないね」

なんとか無事に済んだようだ。よかった……

《ねぇ、ねぇ、ここってすごく気持ち良い場所ね》

ペロがそう念話してくると、ララのお父さんが驚いた顔をして俺を見た。

「まさか、君が……」

その驚き加減が普通ではないので、聞き返してしまった。

「どうかしたんですか?」

「いや、何でもない。でも、その首に巻かれている白蛇はホワイトパイソンの幼体ではないね。少し特殊だが精霊だね」

ペロちゃん、見抜かれました……

「何故わかったんですか?」
「私の契約精霊が教えてくれた」
「それは念話ですか?」
「そうだ。君も使えるようだね」

ララのお父さんと話しているとララが驚いた様子で俺とペロを見出した。

「ず、ず、ズルい!」

「え、どうしたんだ、ララ」
「そのペロちゃん精霊だったの?何で教えてくれなかったの?私だってまだ、精霊と契約してないのに~~」

そういうことらしい。

「別に教えなかったわけじゃないよ。聞かれない限り喋らない方が良いと思っただけだよ」

「でも、ズルい。ケンのくせに~~。エルフの私がまだなのに~~」

ララは、家に着くまでそんな事を言っていた。
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