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第53話 新たな拠点候補
しおりを挟む【エアー・カッター】
初級の風魔法で、拠点候補地の草を刈っている。
少し小高い丘になった場所で、湖を見渡せる良い場所だと思う。
「あらかた草は刈れたけど、木はどうするか」
ここは大森林の中。
拠点地は草だけではなく勿論木も生えている。
「あの数本の木が邪魔で湖を見渡せない。切っても問題ないよな」
ここは大森林、エイシスに言わせれば誰の所有地でもない。
だが、とあるニュースで富士山が見えないと言って木を切った者がネットで叩かれ訴訟沙汰までになったのを知っていたので、躊躇いがあった。
『マスター、それ地球の話ですよね?ここは誰の土地でもないのですから問題ないですよ』
同じことを何度も言うエイシスだが、もしかしたらどこかの王家が先に見つけて所有を主張するかもしれないだろ?
権力とか傘にきてさー。
後で問題になるのは煩わしい。
『言っておきますがマスターは大賢者(仮仮)なのですから、もし王家が理不尽なことを言って来たとしても跳ね返すことができますよ』
(仮)の仮がひとつ増えてるのだが?
そう思っていると無性にポテトチップが食べたくなってきた。
「グゥー」
白蛇と遊んでいる少女のお腹が鳴ったようだ。
「ご飯にするか」
調味料はいざという時の為にストレージの中に入っている。
塩、コショウ、醤油、あ、味噌は入れてない。
それに、ストレージにあるのは肉ばかりだ。
(野菜とかお菓子とかいろいろ買って入れとけば良かったよ。エイシスが急に転移するから用意ができてないよ)
「ねえ、肉とかでいい?野菜はないんだ」
「大丈夫です。お肉好きだし…ですし」
まだ、慣れてないようだ。
まあ、誰でも見知らぬ人と出会って数時間で慣れるわけないか……
森に少し入り薪を集める。
燃えやすいように落ち葉もかき集めた。
そして、火の準備ができたらストレージから調理道具を取り出して、肉を食べやすい大きさに切り分け塩コショウをフリフリする。
実際は調理道具と言ってもポーションを作る為の錬金術の道具なのだが。
フライパンがないので、錬金鍋で焼いてみた。
辺り一帯に美味しそうな匂いが立ち込める。
最後に醤油をさっーとふりかけてできあがりだ。
「どうぞ、熱いから気をつけろよ」
《私にもちょうだい》
ペロが催促してきた。
さっき下働きの男って言ったのはわすれないからな!
勿論、ペロの分も用意してある。
「美味しい。なんか香ばしい匂いと味がお肉を引き立ててる」
「そうか、それなら良かったよ」
どうやらお気にめしたようだ。
「それで君はどうしてあんなところにいたんだ?」
「それは……」
「言いたくないなら無理に言わなくてもいい」
「私は……私はユリア・ストロークって言います。実は……」
それからユリアちゃんはポツポツ自分の話をし始めた。
魔力過多症の病のせいで、相当苦労したようだ。
話を聞いて自分と重なる部分がある。
しかし、俺は悩んでいた。
この子は家に帰りたくないと言う。
俺も家から追い出された身だ。その気持ちは良くわかる。
エイシスは俺と一緒に修行しないといつか魔力暴走を起こしてこの子の生命に関わると言っていた。
なら、この子がそうならないように鍛えるしかないか……
「わかった。もし俺と一緒に行動するか?って聞いたらどうしたい?」
「ケンさまは、何か目的があってこの現世に顕現されたのですか?」
は!?言ってる意味がわからない。
でも、勝手に転移されたなんて言えないし、困ったな。
「そ、そうだな、世界(自分)の安寧かな?」
俺自身の安定な生活を送ることができるのが最も重要なことだ。
「さすがです。私にそのような大役が務まるとは思えませんが、少しでもお役に立ちたいです」
「えーっと、つまり一緒に行動するって事でいいのかな?」
「はい、ぜひ。ユリア頑張りますので」
何か誤解してるっぽいが、まあ後からいろいろわかるだろうし、まあ、いいか。
こうしてユリアちゃんと一緒に修行する事になりました。
◆
「そうか、そんなことがあったのか。アンジェラ、チェルシーよくぞ無事に帰って来てくれた」
私は先程起きた出来事をチェルシーと一緒にアミリア王女殿下に報告した。
「はい、あの白い髪の少年がいなければ私達は既にこの世にいないでしょう」
あの少年は、消えるように居なくなった。
魔法に詳しいチェルシーは、魔力の痕跡が地面にあるので、闇魔法の使い手なのではと言っていたが、チェルシーも様々な魔法を使うところを見ており、首を傾げていた。
「そうか、それほど……うむ、その白い髪の少年に会ったなら是非とも私からもお礼をしなければいけないな。大切な部下を救ってくれたのだから」
「殿下、勿体無いお言葉ありがとうございます。ですがお礼なら直接助けられた私達がすべきと考えます。まだ、お礼の言葉さえかけられず、去って行ってしまったので」
「ほう、今時珍しい御仁であるな。権力を傘に着て好き放題しておるどこかの貴族連中とはわけが違う」
「殿下、アンジェラ様の前でそのようなお言葉は控えて下さい」
アミリア王女の側近であるネリア様に気を遣われてしまった。
「そうだったな。すまないな。どうも私はネリアに言わせればひと言多いらしい」
「いいえ、私はもう気にしておりませんので。ネリア様もお気遣いありがとうございます」
報告が済ませて、チェルシーと一緒に休憩をとった。
チェルシーは、我がライスパーク領の出身で父上の視察に同行した時、小麦畑を案内してくれた村長の娘で顔見知りだった。
白鳳騎士団が創設された時、チェルシーがいたので驚いたが、身分の違いはあるが仲良くさせてもらっている。
「アンジェラ様はあの白髪の少年をどう思いましたか?」
「うむ、助けられて正直感謝している。できる限りの褒美を渡したい気分だ。私自身を望むなら嫁いでも構わない。だが一度殴ってやらないと気がすまない」
「そうですよね。助けてくれたことはとても嬉しいです。でも、私も一回ビンタを喰らわせたいです。乙女のあられも無い姿を見られたので」
二人はその時のことを思い出したのか、顔を紅くするのだった。
◆
「ブルッ……何だか寒気を感じたぞ。風邪でもひいたか?」
『マスターは、病とは無縁だと前に言いましたよね。それでどうするのですか?これでは、家とはいえないですよ』
結局、湖の前に立ち塞がる木を切り倒し、ドライで乾燥させてから材木に仕上げ家を造ろうとしたのだが、材木が足りずただ積み上げただけで終わってしまった。
「こんな時、深海君がいてくれたらこの材木で家を建ててくれるのに」
ペロ用の犬小屋を組み立てるだけでも四苦八苦したのに、家なんて無理。
ラノベの主人公は、どうやっていろいろな知識を得たのだろう?家だって創造魔法とかで一瞬で造るし。
『マスターこの分ですと野宿ですよ。また、魔物が襲って来て一晩中戦うハメになっても知りませんよ』
流石に今夜はゆっくり寝たい。
一旦、王都の猪熊亭に行くか。
いろいろ仕入れたいし。
「よし、決めた!王都に行こう!」
『まあ、今夜くらいは仕方ありませんね。ユリアもいますし』
エイシスの許可も得たので、ユリアちゃんを影収納してから影移動で王都に向かったのだった。
◆
「おー、ここは見晴らしも良くて良い場所だな。湖も見えるし、綺麗に草も刈られてる。今日はここで野営をおこなう」
白鳳騎士団達は、あれからさらに大森林の奥に向かい、湖のある場所にでた。
少し小高い場所があり、誰か人がいたのか綺麗に草が刈り取られ、材木まで積み上がっていた。
「殿下、ここは人の手が入っています。誰かが開拓したのではありませんか?」
「恐らくそうだろう。だが、これ程野営にもってこいの場所は大森林の中ではなかなか難しいとは思わないか?みんなも慣れない行軍で疲れも出る頃だし、ここを拠点として活動すれば、探索も楽になるだろう。もし、誰かが所有を主張してきたら、買い取るか相応の対価を支払えば問題はなかろう」
「殿下がそうおしゃるのなら。ですが、もし開拓者が来た時の交渉はお任せしましたよ」
「交渉事はネリアの方が得意だろ?」
「殿下がおっしゃったのです。お願いしますね」
(やれ、やれ、こういう時のネリアは頑固だからな)
「殿下、何か?」
「いや、なんでもない。さあ、みんな、ここを拠点としよう。各々野営の準備にとりかかれ」
こうして、白鳳騎士団は、誰かが切り拓いた場所で野営の準備に取り掛かったのであった。
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