現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第60話 冒険者ギルドで

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【ゲート】を出た俺は、その足で冒険者ギルドへ向かった。

ギルドの扉を開けると、いつも以上に騒がしい。

「……何かあったのか?」

そう呟きつつ、俺は買取の受付の前に進んだ。

「すみません、魔石の買取をお願いします」

「はい、ではギルド証を確認させていただきます」

初めて対応する受付の綺麗なお姉さんの言葉に従って、ギルド証を提示する。

「はい、確認できました。ケンイチロウ様ですね。それでは、魔石を台の上に置いてください」

……そう言われても、この台に乗るかな?

「すみません、大量にありまして。この台の上では狭すぎます。場所を変えてもよろしいですか?」

そう言い返すと、受付のお姉さんは俺が持っている魔法鞄をチラッと見た。

「あっ、この前、大量の魔物を買取に出したのは……もしかしてケンイチロウ様ですか?」

「多分そうです」

 「わかりました。こちらへどうぞ」

……助かった。ここで魔石を出していたら、かなり目立つところだった。

通されたのは、受付奥にある個室だった。

……ここに入るのは初めてだな。いつもは解体場の方だったし。

そして俺は、テーブルの上にアンデットの魔石を魔法鞄から取り出した。

その光景を見た受付のお姉さんは、目をぱちくりさせたまま固まっていた。

「あの……」

「はっ……! し、失礼しました。ケンイチロウ様、この魔石は一体どうされたのですか?」

「えーと、貧民街に用事があって。そこで偶然、廃墟同然の教会を見つけたんです。興味本位で中に入ったら、床が抜け落ちまして……そしたら地下に大量のアンデットがいて。で、浄化したんですけど……」

「すみません、少しここでお待ちいただけますか?」

そう言って、慌ただしく受付のお姉さんは部屋を出て行った。

しばらく待っていたが、なかなか戻ってこない。手持ちぶさたなので、刃こぼれした剣にさっき習得した【リペア】をかけてみる。

(おおー! 新品みたいになったぞ)

『マスター、楽しそうですね』

(うんうん、こういう魔法が欲しかったんだ。攻撃魔法は危ないし滅多に使えないけど、この魔法は夢が広がるよ)

そう喜んでいると、受付のお姉さんがスキンヘッドの怖そうなおっさんを引き連れてきた。

「お前がケンイチロウか? この魔石はどうした?」

いきなり威圧的な口調で問いかけてきた。
その態度に少しイラついたが、冷静に答えを返す。

「さっき、そちらのお姉さんに説明しましたけど? それで、あなたは誰なんですか?」

「俺はこのギルドのサブマスター、デリウスだ。それより魔石の件だ。お前、テイマーなんだろ? テイマーがアンデットを倒せるわけがねぇ。どこで手に入れた? 正直に吐け」

(ああ、ダメだ……怒りが抑えきれない)

「正直に話したのに、その物言いはないだろ? なぜ最初から疑ってかかる? 俺は、そういう態度をとる奴が一番嫌いなんだ」

『(あちゃーっ!マスターのトラウマを刺激してしまったようです。まあ、この場合怒っても仕方ありませんか……)』

「テイマーのくせに何を偉そうに言ってやがる。お前、まだ鉄級だよな? そもそも鉄級の冒険者がアンデットを倒せるわけがねぇ。少なくとも、事前にアンデット対策を整えた銀級冒険者以上じゃなきゃ無理なんだよ」

『マスター、やっちゃってください』

エイシスの一言で、少し冷静さを取り戻した。

この場で大暴れしても後が面倒だ。

「わかりました。買い取りは結構です」

そう言って、魔法鞄に魔石をしまい始めた。
だが、そのおっさんは――

「待て。それは証拠品だ。勝手に持ち帰ることは許さん」

「はっ!?」

あまりにも勝手な言い草に、普段から抑え込んでいた魔力が解放された。
その衝撃はギルドの建物を揺るがし、目の前にいるおっさんや受付のお姉さんは魔力の影響で白眼を剥き、口から泡を吹き出した。

『マスター、魔力を抑えないとみんな死にますよ』

その言葉を聞いて、慌てて魔力を抑えた。
だが、二人はすでに気を失い、ピクピクと痙攣している。

その姿を見て、さすがに焦り始めた。

(……死なないよな?)

『さあ? 心配なら【ヒール】でもかけておけばいいのでは?』

女性の方にだけ【ヒール】と【クリーン】をかけた。
男の方も股間が濡れてるが無視した。
そして、魔石を回収すると、そのまま影に潜ったのだった。



「何だ、これは……何が起きた?」

「これは、抑えていた魔力が解放された時の衝撃じゃ。それにしても、凄まじい魔力量じゃのう」

私は、王都ギルドマスターのマルクス・ウィル。
ちょうど今、訪ねてきた賢者クライン・ルーズベルト様のお話を伺っていたところだ。

その時――ギルド全体を揺るがすほどの大きな衝撃が襲った。

私はテーブルに置かれたベルを鳴らし、すぐに人を呼び出した。
だが、誰一人、来る気配がない。

「マルクス、無駄じゃよ。あの魔力に当てられたのじゃ。大半の者は気を失うか、その場から動けまい。……どれ、わしが見てこよう」

「私も参ります」

賢者様の後に続いてギルド内を見回る。
案の定、気を失っている者や、その場にへたり込んで動けなくなっている職員ばかりだった。

一階に降りると、高ランクの冒険者たちはまだ意識があり、会話ができた。

「突然、衝撃が襲ってきたんだ。凄いなんてもんじゃなかったぜ」

「多分、発生源は受付の奥だと思う」

そのような証言を得て、発生源と思われる受付奥の個室へ向かう。
そこには、二人の職員が気を失い、床に倒れていた。

「うむ……ここで間違いないようじゃ」

賢者様は魔力の痕跡を探っているのだろう。

その間に私は倒れている職員へ近づき、意識があるかどうかを確かめた。

だが、そこで違和感を覚えた。
倒れている男性はサブマスターのデリウス。
金級冒険者にまで上り詰めた斧使いで、口は悪いが生真面目な性格をしている。

もう一人は受付嬢のナタリア。
冒険者から人気があり、真面目な女性だが、自身が冒険者として活動した経験はない。

なのに――ナタリアは外傷ひとつなく気を失っているだけなのに対し、耐性のあるはずのデリウスの方が、より酷い状態だった。

「ここで何かがあったのは間違いない。だが、詳細は二人が目を覚ましてからじゃのう」

「ええ……そうなるでしょうね」

……

しばらくして、大方の職員が目を覚ましたので話を聞くと、ナタリアが接客した冒険者がどうも今回の騒動の原因らしい。

先に、目を覚ましたナタリアに聞き取り調査を始めた。

「鉄級冒険者のケンイチロウ様が、大量の魔石を買い取ってほしいと申されましたので、奥の個室にご案内しました」

「その大量の魔石――入手先は聞いたのか?」

「はい。用事で貧民街を訪れた際、廃墟同然の教会を見つけたそうです。中に入ったところ床が抜けて地下へ落ち、そこにいた大量のアンデットを浄化したと本人は申しておりました」

「なに! 実はその件で賢者様が来訪されておる。冒険者の中に聖魔法の【浄化】を使える者はおらぬか、と尋ねられてな」

「ほぅ……そうなると、先の貧民街で起きた現象は、そのケンイチロウとかいう冒険者の仕業、ということになるのう」

「それで、どうしてあんなことになったんだ」

「私には判断がつきませんでしたので、ギルドマスターに報告しようと伺ったのですが賢者様とお話し中とのことで、代わりにデリウスさんへ報告いたしました」

「それでデリウスが一緒だったのか」

「はい。ですがデリウスさんは『鉄級冒険者がアンデットを倒せるわけがない』と言い出し、ケンイチロウ様をまるで盗人のように疑ってかかりました。
我慢しきれなくなったケンイチロウ様は、魔石を売るのをやめると言い、回収を始めたのです。そこへデリウスさんが『魔石は証拠品として預かる』と告げた途端――突然、あの衝撃が襲ってきました。その後のことは……私にも分かりません」

「うむ……デリウスの口の悪さと生真面目さが裏目に出てしまったわけか……」

「ギルドマスター、デリウスさんは悪くないと思います。私でもそういう気持ちがありました」
 
「それは分かっている。ただ、そのケンイチロウとかいう冒険者は、冒険者になったばかりだというのに、大量の魔物をこのギルドに卸しているらしい。
……二人とも、等級や常識に囚われているのかもしれんな。過去には、木級から一気にミスリル級へと昇り詰めた者もいた。――そうですよね、賢者様」

「ははは、耳が痛いのう。じゃが、これに懲りてその冒険者が二度とギルドへ来ぬ可能性もある。
……惜しい人材を逃すことになるやもしれんぞ」

「さて……デリウスが目を覚ましたら知らせてくれ。もう下がっていいぞ」

「はい、失礼いたします」

さて……どうしたものか、この一件。

ギルドマスターは思案し、頭を悩ませるのであった。


………
参考資料 冒険者ランク

オリハルコン級 (S級)
ミスリル級 (A級)
金級 (B級)
銀級 (C級)
銅級 (D級)
鉄級 (E級)
木級 (F級)
ーーーーー
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