現代錬金術のすゝめ 〜ソロキャンプに行ったら賢者の石を拾った〜

涼月 風

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第88話 知り合いとの再会

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いろいろあった学校の一日も終わり、今は放課後。
金曜日とあって、クラスのみんなは「どこそこに行こう」とか楽しそうに話し合っていた。

チーちゃんとミーちゃんは部活へ行ってしまい、俺は深海くんと二人で下校していた。

「それにしても、白髪とは。もう“陰の者”とは言えませんな……まてよ。白はどんなものにでも染まる色。全てを受け入れるその度量の深さ……私は誤解しておりました。黒が陰を代表する色だと認識しておりましたが、白こそが究極の陰でしたか」

言ってる意味はよく分からないが、独特な口調でそう言う深海君に、なぜだか心がほぐれる。
彼の言葉には、どこか優しさが混じっている気がした。

「今まで黙っていたことは、謝るよ」

「なに、そんなことは些細なこと。謝罪など、必要ありませんぞ」

深海くんは、そう答えた。

(性格、よすぎだろーっ!)

『マスターとは大違いですね』

(悪かったな!)

「そういえば、八王子ゲートの“狭間”が消えた影響で、いろんな機械が持ち込めるようになったそうですぞ。
さっそく、ゲート先のダンジョン映像がニュースで流れてましたぞ」

「そうなんだ。ダンジョンって、どんなところなんだろうね?」

異世界は知ってるけど、ダンジョンはまだ知らない。

「拙者も、ネットで得た知識しか持ち合わせておりませぬゆえ、なんとも返答のしようがありませんな。
ですが――この先、探索者による配信などで、さらに詳しい情報が得られることでしょうな」

「バカな配信者が現れそうだな。命の危険がある場所なのに」

「そうでござるな。有名になりたい者にとっては朗報でしょうな。
まあ、政府が規制をかけなければの話になりますが」

「深海くんはいずれダンジョンに入るの?」

「一度は経験したいと思っておりますぞ。そのために、最近ダイエットを始めたでござる」

「ダイエットか……つらそうだね」

「そうでもないでござるよ。妹が積極的にダイエットメニューを考えて作ってくれるでござるから。
今朝も、なんと痩せると評判のオリーブオイルで揚げた唐揚げを食べてきたのでござるよ」

(それ、絶対痩せないと思う……)

そんな時、スマホが鳴った。
誰かからメッセージが届いたらしい。

「ちょっと、ごめん」

そう断ってからスマホを見ると、弓崎先輩からのメッセージが入っていた。

……
「明日の一時、◯◯駅の改札口手前に集合。約束のお礼をしたいから、来てよね。
都合が悪かったら連絡ください」
……

そういえば、ID交換したんだった。
土日は向こうに行きたかったが、少しの間なら構わないだろう。
それに、断っても先延ばしにするだけだ。
用事はさっさと済ませてしまおう。

「わかりました」

そう返事を書いて送信した。

深海くんと駅で別れ、バイト先のコンビニへ向かう。
辞めるにしても、いきなりシフトに穴を開けたら迷惑がかかる。
今日は仕事をして、店長に話すつもりだった。

……が、結果的に、すぐに帰宅している。

接客業なので、その髪の色では困るという理由で、行ったその場で解雇されてしまったのだ。

俺としては辞めるつもりだったので、都合が良かったのだが……

「解雇」となると、やはり少し落ち込む。

ネットで調べてみると、コンビニ本部から何か言われる場合もあるらしい。
だが、店舗のオーナーが了承していれば問題ない、ということのようだ。

『日が浅いせいで、マスターとの信頼関係が築かれていなかったのですね』

(そうだよな。接客業でこの髪は無いよな……)

頭では理解していた。
それでも、いざこうして現実を突きつけられると、気分は沈むものだ。

……

家に帰って着替えたあと、亜空間のログハウスへ向かった。

だが、誰もいない。
仕方なく教会の方へ行ってみる。

「あれ、おかしいな。爺さんは……ああ、釣竿が無くなってる。湖で釣りでもしてるみたいだな。
でも、他のみんなはどこに行った?」

千里眼で確認すると、みんなが結界の方に集まっていた。
しかも、その外側には見知った顔ぶれが――。

慌てて駆けつけると、エルフのララとルル、そして師匠がみんなと口論している。

「この結界はなかなか厄介じゃな!」

師匠は杖でドンドンと地面を叩いていた。

「だから!主人の許可がねぇと入れねーんだって、さっきから言ってるだろうが!」

(結界張ったの、俺じゃなくてペロなんだけどねー……)

「みんな、そこまでーっ! 師匠、どうしたんですか?
それにララとルルも来てたんですね!」

「あ、ケンがやっと来た! 早く中に入れてよ!」

「いいけど、ちょっと待ってくれ」

いつもならペロが違和感を述べて、催促するのだが、音沙汰がない。

仕方なしに結界の外へ出て、みんなと手を繋いで中に入れた。

「ケンよ、いつの間にあのような結界を張れるようになったのじゃ?」

「いや、あれは俺じゃなくてペロが張ったんですよ。白い蛇のあいつです」

「ふむ……さすがウンディーネ様が目をかけておるだけのことはある。只者ではないと思っておったが、そこまでとはのう……」

(でも、どうやって、俺がここにいるってわかったんだろう?)

「で、ララとルルはどうしたの?」

「えへへ、ケン、何か気づかない?」
ララがいたずらっぽく笑いながら身を乗り出してくる。

「ん? もしかして……背が伸びた?」

「ちがーう! 精霊と契約したの!」

ララは胸を張り、嬉しそうに続けた。

「私は風の大精霊・シルフ様と! 妹のルルは――なんと、エルフの間でも誰も契約できなかった光の精霊・リュミエール様と契約できたんだよ!」

「へぇ……そりゃあ、すごいな」

思わず感嘆の声が漏れる。

「ケン兄ちゃん、それでね!」

ルルが一歩前に出て、目を輝かせながら言った。

「エルフの里でお祭りが開かれるの! そのお誘いに来たんだよ。もちろん、参加してくれるよね?」

エルフの里――そこは限られた者しか入れない特別な場所。

「師匠、相談なのですが……」

そう言って、俺はこの場にいる仲間たちを紹介し、事情を話したのだった。

すると、師匠は腕を組み、軽くうなずいた。

「ふむ……みんなケンの家族同然の者たちなら、問題はない。この私が、エルフの里への立ち入りを許可しよう」

そう言ってくれた師匠の言葉に、ルルとララは顔を見合わせて喜んだ。

そのあと、みんなを教会に案内し、お茶を振る舞ってしばらく談笑していた。
ちょうどその時、湖へ釣りに行っていた爺さんが、大きな魚を抱えて帰ってきたのだ。

「いやぁ、今日も大漁……ん? お、おぬしは――!」

爺さんの目が見開かれる。

「そこにいるのは、ナナではないか!」

「お前は……ゴンタロウ!? な、なぜお前がここにいるのじゃ!」

まさかの名前の呼び合いに、場が一瞬で静まり返った。
どうやら、二人は昔からの知り合いらしい。
それも、ただの知り合いではなさそうだった。



剣聖爺さんとエルフの師匠は、若かりし頃、同じ冒険者のパーティーを組んでいたそうだ。

パーティーのリーダーであるダークエルフのゴンキチは、剣聖爺さんの兄であり、師匠とは因縁のある相手だったらしい。

「ゴンキチのやつがあの若い人族の女子を連れて来てからおかしくなったのじゃ」

「確かに、兄貴は女に目がないからあらゆる女を引っ掛けては遊んでおったな」
 
「わしを口説いた矢先にあの女を連れてきたのじゃぞ。しかも、ボン・キュン・ボンっと三拍子揃ってる女じゃ。
その時、ゴンキチはなんと言ったと思う?
『女は出るとこ出て、引っ込んでるところは引っ込んでねえとなあ。常に引っ込んでる誰かとは大違いだ』と抜かしよった。
絶対、あやつは殺す!」

「ははは、まあ、確かにあの女が来たらすぐにパーティーは解散したよな。それ以来かのう。ナナと会うのは」

(その女。パーティークラッシャーじゃん)

「ああ、そうじゃった。その点、お主は相変わらずの剣バカなのか?」

「はは、否定はできぬが、最近は新しい趣味を見つけたんじゃよ。ほら」

爺さんは、いつも使っている釣竿を師匠に見せた。

そんな昔話に夢中になっている二人をよそに、女子たちは情報交換をしていた。

俺とカナドは仕方なく、今夜の夕食の話をしている。

「お寿司があるけど、これだけの人数だとちょっと足りないな」

「肉がたくさん余ってるから、俺が何が作るか?」

「爺さんの魚もあるし、足りるかな?」

「問題ねーけど、パンは欲しいな。おかずはたくさんあるが、パンはそろそろ切れそうだ」

「わかった。向こうでパンを買ってくるよ」

『マスター、日本だとお金が足りないのでは?』

(そうだった……。この世界ならたくさんあるけど、日本では貧乏だった)

(仕方ない。こっちでパンを買うか。ちょっと、固いけど味は似たり寄ったりだし)

「ちょっと行ってくる」

影に潜って、国内きっての麦の生産地であるライスパーク領に向かった。




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