闇治癒師は平穏を望む

涼月 風

文字の大きさ
17 / 89
第1章

第17話 真相

しおりを挟む



「よし、着いたぞ」

「今日はありがとうございます。結構、楽しかったですよ」

「おお、俺も楽しかったぜ」

「楓さんが夕飯一緒にどうぞってメッセージが届いています。何だか、今日はご馳走みたいですよ」

「そうか、じゃあゴチになるか、車パーキングに停めてくるわ」

マンションに着いて、エントランスで恭司さんが来るのを待っている。
恭司さんが歩いてくるが、両手をポケットに突っ込み肩を揺らして歩く姿は、裏社会の人間を彷彿させる。

真面目そうな格好をすれば、顔はイケメンだしモテると思うんだけどね。

「よーーお待たせ」

防犯ドアのロックキーを開けてマンションに入り、エレベーターに乗り込んで28階を押す。

高速で上昇するエレベーターが、乗るたびにもし落ちたらと考えると少し焦る。

エレベーターが28階に着く。
この階層は4部屋しかなく、ひとつは俺と楓さん、そして霧坂さんが住んでる2801号室、2802号室は楓さんの事務所になっている。
そして、2803号室と2804号室は昨日まで空いてたのだが、誰かが引っ越してきたようで空き部屋は2804号室だけとなった。

「誰か引っ越してきたようだな」

「ええ、ここは竜宮寺家の持ち物なので、身元がしっかりした人達だと思いますよ」

「まあ、拓海は気をつけておけ。お前は狙われてるからな」

「ええ、わかっています」

鍵を開けて部屋に入ると、なぜか霧坂さんが腕を組んで玄関の中で待っていた。

「おお、柚子じゃねえか、しっかりやってるか?」

「でたな、ドラ猫。駄猫を連れて行く時は一報入れて下さい。私、焦ったんですから」

「わりーわりー、忘れてたわ」

「忘れてたじゃねえ、このドラ猫」

霧坂さんは、正面から蹴りを恭司さんに打ち込んだ。
だが、恭司さんはそれを左手でガードして右ストレートを霧坂さんのボディーに打ち返す。
霧坂さんは、後ろに下がって距離をとりそれを回避した。

「あのさ、玄関で何やってんの?俺、うがいとか手を洗いたいんだけど」

「駄猫も連絡ぐらい入れろ!」

俺は駄猫らしい。

でも、流石に俺には蹴りも拳も飛んでこなかった。

怒りモードの霧坂さんを放っておいて、俺は手を洗いに洗面所に。
恭司さんや霧坂さんが俺の後に続いた。

「今日は、ご馳走なんでしょう。何かの記念日?」

後を着いてきた霧坂さんに尋ねると、

「いろいろあるみたいだよ」

「記憶にはないけど」

「なあ、なんか妙に肉じゃがとか食べたくなったわ。なんかいい匂いがするし」

「うん、うん、食欲を誘う匂いだよね~~」

そう言いながらリビングに行くとそこにいる人達を見て俺と恭司さんは固まってしまった。

俺にとってはあり得ない人がいる。

「な、なんでここに結城さんが?」

「おーーガキンチョじゃねえか、元気にしてたか?」

俺のクラスメイトの結城さんと妹である陽菜ちゃんがソファーに腰掛けていたのだった。

俺は、霧坂さんの方を見ると、両手を肩の高さに上げて首を横に振るジェスチャーをしてた。

「こ、こんばんは、蔵敷君」
「う、うん、こんばんは」

「わーーお兄ちゃん達だ」

ぎこちない俺と結城さんと比べて陽菜ちゃんは笑顔満載だ。

「拓海様、お帰りなさい」

「あ、楓さん、これどんな状況?」

楓さんがキッチンから出てくると、その後から落ち着いた女性が顔を出した。

「こんばんは、拓海くん、この間はありがとうございます。おかげで元気になりました。今日は、私の快気祝いと引っ越し祝いを兼ねて楓さんとお料理してたんですよ。たくさん作ったのでいっぱい食べてくださいね」

顔を出したのは俺が治療した結城さんのお母さんだった。

「引っ越し祝いって、まさか2803号室ですか?」

「ええ、陣開さんの好意で仕事を一緒にすることになりまして、住まいもこちらを紹介して頂きました。これから、渚や陽菜ともどもよろしくね。拓海くん」

どうやらそういう事らしい。

これってサプライズなのか?


料理は、もう少しかかるようで俺は自室に戻り部屋着に着替えた。
リビングに顔を出すと恭司さんが陽菜ちゃんとゲームして盛り上がっていた。

「おい、爆弾投げるなんて卑怯だろう!」
「勝てばいいんだよ。お兄ちゃんって弱いね。ざぁこ、ざぁこ」
「ぐぬぬぬ」

この2人は、精神年齢が同じくらいなんだと思う。

そんなゲームをしてる時に結城さんがちょいちょいと手を振って招いている。

リビングは結構広いのでここでも話ができるのだが、結城さんは俺をベランダに誘っていた。

「蔵敷君、いきなりごめんね」

「驚いたけど謝る必要はないよ」

「今日、柚子ちゃんと一緒に帰ったの。仲良くなろうと思ってね。それで、私が今日引っ越しするんだって話して新しい住まいに着いたら、柚子ちゃんも同じマンションだったの。それも驚いたんだけど、同じ階で柚子ちゃんが蔵敷君と一緒に住んでるって知ってさらに驚いたんだ」

「普通、驚くよね」

「そうだよ、驚きすぎて心臓がもたないかもってぐらい驚いたんだから」

驚いたけど姿の結城さんを想像できる。
それより、霧坂さんは猫被りはやめたのだろうか、気になる。

「お母さん、楓さんと一緒に仕事するんだ。楓さん、いつも忙しそうにしてたから俺も嬉しいよ」

「お母さん、病気になって助からないって言われてたから会社辞めちゃってたんだ。でも、すぐにお仕事できるようになって張り切ってるよ」

「それはよかった」

「あのね、私、楓さんの書類にサインしたんだ」

ということはこれの事を知っているということだ。

「そうか……驚いたでしょう?」

「ううん、驚いたのもあるけど数倍嬉しかった。蔵敷君がお母さんを治してくれたんだよね。ほんとにありがとう」

そう言って頭を下げた結城さんにかける言葉を探していた。

「あのさ、俺って変でしょ?変な力を持ってるし怖くない?」

「怖いなんて全然思わないよ。それより凄いって思った。だけど、きっと蔵敷君にとってはその力は欲しくなかったのかな、とか思ったりもした」

この子は、俺の心を見透かしているのだろうか?

「確かにみんなに凄いとか役に立つとか言われるんだけど、正直、こんな能力はいらなかったかな。俺は普通に過ごせればそれでよかったんだ」

「そうなんだ。私はそのことに何もいえないけど、これだけは言えるよ。お母さんを、陽菜をそして私を救ってくれて本当にありがとう」

その言葉を聞いて、俺の中にある何かがスッと消えてくような感じを受けた。

それが、なんなのか俺にはまだわかってなかった。





「夕食できたわよ~~」

結城さんのお母さんの声が届く。
なんか、この声を聞いてるだけで元気が出てきそうだ。

「蔵敷君、ご飯できたって。お母さんの料理ってほんと美味しいんだよ」

「うん、既に匂いでわかるよ」

みんなでテーブルについて食事が始まった。
食べる前に結城さんのお母さんから軽く挨拶があったが、目の前の料理の方が気になった。

「うめーー、何これ、こんなうめー肉じゃが食ったことねえよ」

恭司さんは相変わらずがっついている。

「確かに美味しいですわね、おほほほ」

あ、そのキャラ、続いてたんだ。

「おい、柚子。きしょ」

「何だと、このドラ猫!ベランダでろ!」

「やだね~~俺飯食ってるし」

「クソッ、覚えておけ。春香姉さんに告げ口してやる」

「おい、待て、それシャレになんねえから」

既にキャラは崩壊したようだ。

「柚子ちゃん、大人しく食べないとダメだよ。少し溢してるし」

結城さんは面倒見が良いのかキャラのことは触れずに霧坂さんが溢したオカズを拾い集めていた。

「何、ザコ兄は、お姉さんが怖いんだあ~~、いいこと聞いた」

「おい、ガキンチョ。ゴリラ女なんて怖くねえから、それに俺に怖いもんなんてねえから」

すると、霧坂さんがスマホを恭司さんに向けた。

『おい、バカ弟。誰がゴリラ女だ!はあん!』

霧坂さんは恭司さんのお姉さんとビデオ通信をしたらしい。

「はっ、柚子、シャレになんねえよ。マジ勘弁してくれ」

『おい、あとで覚えておけ』

そう言って恭司さんのお姉さんは、スマホから姿をけした。

「「「ははははは、おかしい」」」結城親子にはツボに入ったようで笑いが収まらない。

「蔵敷君、助けて、笑いすぎてお腹が痛い」

「結城さん、自分でなんとかしてね」

「もう、こんなに笑ったのっていつ以来かしら。ほんと楽しいわ」

「俺、笑いとってるつもりないんだけど」

「恭司さんは存在自体がギャグですよ、諦めてください」

「おい、拓海、言っていい事と悪事があるんだぞ」

「すみません、俺そういうのよくわかんないです」

「ガチかよ」

「嘘です」

「真顔で言うな、信じちまうだろう!」

「「「はははは」」」

結城親子には恭司さんがツボになったらしい。
何を言ってもおかしそうに笑っていた。

「皆さん、せっかくの料理が冷めてしまいますよ。せっかく茜さんが作ってくれたんですか美味しく頂きましょうね」

楓さんの言葉に一度は静かになったのだが、恭司さんのやらかしは再び食卓に笑いをもたらすのだった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...