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第1章
第26話 施設
しおりを挟む北太平洋とオホーツク海に挟まれた細長い島に、大きな漁船が港に着岸した。
この港は普段、漁師が使う港ではなく軍事関連の港で島民の立ち入りは禁止されている。
その港に辿り着いた漁船から人々は降り始めた。
そこに目隠しをされてロープで拘束された人が数人、子供を含めて降りてきた。
…………………
(まさか、ここは俺がいた場所か?)
陸地に降りた時に、感じた外気温、空気、そして匂い。
それが以前監禁されていた場所の感じと酷似していた。
「Cー46、懐かしいか、だが残念だな。ここは前の場所じゃねえ。それに日本でもねえってだけ教えてやるぜ」
そうか、組織はあの国と手を結んだか。
前から資金提供を受けていたらしいが、あの国の軍隊が出張ってきたら面倒だな。
それだと、仕掛けるのは本拠地に着いてからだ。
おそらく、そこにはあいつがいる。
あいつだけは絶対殺す。
「さっさっ車に乗れ!」
窓が目隠しされたバスに詰め込まれる。
清水先生をはじめ攫われた子供達も悲鳴をあげながら、入れさせられた。
拉致されてから、ろくな扱いされてないのだろう。みんな体調が悪そうだ。
「拓海くん、私達どうなるのかな?」
不安そうに小声で囁く清水先生。
「大丈夫です。俺がなんとかします」
俺と一緒にいなければ、こんな事にならなかった。
巻き込んでしまった清水先生は、俺が無事に返す。
『ゲゲーッ』
一緒に乗っている子供が吐いた。
既に胃の中は空のようで、唾液だけを繰り返し吐いている。
距離があるし、直接触れる事ができれば癒す事ができるのに。
飯塚君が薦めてくれたラノベに、主人公がエリアヒールという広範囲の回復魔法を使っていた。
無差別に使う事は、小説じゃなければできないだろうけど目に見えてる子供達や清水先生を意識すれば……
うん、出来そうだ。
意識を集中して、能力を発動した。
ラノベのような魔法ではないから魔法陣が発動するわけではないし、身体が光を帯びるわけでもない。
でも、確実に効力は出ているだろう。
その証拠にさっき吐いてた子供は落ち着いている。
だが、これは大怪我や重病患者には向いてない。直接触れなければ効果はないだろう。
「拓海くん、今何がした?」
「少し能力を使いました」
「ありがとう、でも無理しないで」
「わかりました」
清水先生も気分が良くなったのかさっきより言葉に力が入っていた。
しばらくしてバスが止まった。
「着いたぞ、さっさと降りろ!」
子供達を先頭にバスから降ろされる。
着いた場所は、広い場所に高い塀が取り囲んでいる中に四角い白い建物が建っている場所だった。
☆
拓海達が連れ去られる少し前のこと。
駅前の広場のベンチでグースカ寝ている老人がいた。
浮浪者と間違えるところだが、身につけている服は高価なもので、酔っ払って寝てしまったのだと理解できる。
「おじいさん、おじいさん、ここで寝てたらダメですよ」
優しく声をかけたのは、駅前交番に勤める婦警さんだった。
「おーー美佐恵ちゃん、あいらぶゆー」
完全に酔っ払いである。
「私は美佐恵ちゃんではありませんよ。おきて下さい」
婦警さんも呆れたように、声をかけた。
一緒にい若い男性の警官も呆れながら、
「ここで寝てたらダメだ。起きて家に帰るんだ」
「う~~、最近の黒服のにいちゃんは無慈悲じゃのう、わしはもっと美佐恵ちゃんと遊びたいのじゃ」
完全にキャバクラと勘違いしている。
『キキーーッ!』
その時、駅前の大通りの交差点で激しいブレーキ音がした。
黒塗りの車から黒服の男達が出てきて、隣の車の窓カラスを割ったのだ。
「むむ!」
さっきまで寝ていた爺さんが飛び起きた。
「関崎、連絡をいれろ。拳銃を所持してる」
「わかりました」
遠目からも異常事態が起きてるのがわかる。
二人の警官が対応してる間に、さっきまでベンチで寝ていた爺さんはその場から消えていた。
………
「まずったわい」
すっかりこの街の繁華街が気に入ってしまった霧坂修造は、お姉ちゃんの居るお店ではっちゃっけていた。
ホテルに泊まるのも面倒なので、駅前のベンチでうたた寝をしてたら、急に胸騒ぎがした。
案の定、護衛相手である蔵敷拓海が連れ攫われる現場を目撃したのだった。
急いで駆けつけ、去っていくクルマに持っていた小型発信機を投げつける。
拓海が乗っていた車の運転手は、その場で雲仙家に連絡を入れてるようだ。
「ちょっと借りるぞい」
運転手をその場に放っておいて、修造はスマホを手に持ち、発信機の行方を追い始めた。
後部座席の窓ガラスが割れてるだけで、走るのには問題ない。
しばらく追跡して竜宮寺家に連絡を入れる。車の向かう方向から港に向かっていると判断したからだ。
竜宮寺家は直ぐに動くだろう、と思っているので、拓海達が連れ攫われてもそんなに心配はしていない。
ただ、婆さんに護衛をほったらかして飲み歩いていた事がバレたらマズい。
完全にアルゼンチン・バックブリーカーを決められる。
せっかく、腰の調子がよくなったのにまた傷めるのは勘弁してほしい。
「それに、わしらがいない方が坊主にはやりやすいじゃろうがな」
そんなことを呟いて、自分の腰の未来の為に車を走らせるのだった。
☆
目の前にある白い建物は、拓海達が以前監禁されていた場所ではないと物語っている。
だが、その雰囲気は前と何も変わらない。
吐き気がするほど禍々しい。
「さっさと歩けってんだ!『バシッ!』」
足元がふらついた子供を蹴り飛ばす男。
俺達の周囲には8人の男達がいる。
その全てが、外国人だ。
ここなら、場所も広いし都合がいい。
俺は、周囲の男達に向けて電撃を放つ。
『ドン!』と鈍い音がして、屈強の男達が倒れ出した。
拘束されてるロープを身体強化を使って千切り、手足を自由に解放する。
バスに乗ってから目隠しは外されているので、素早く清水先生の拘束を外す。
「拓海くん、あなた……」
「ここで見たことは内緒ですよ。それより、子供達をお願いできますか?」
男達が倒れてどうして良いのかわからない子供達を順番にロープを切り清水先生の方に『逃げろ』と話しかける。
6人の子供達を解放して、その中に日本人の子供が1人いた。
以前、行方不明になってニュースで報道されてた子だ。
白い建物から数人が自動小銃を構えて出てきた。
持ってる自動小銃はAKー47、一般的なあの国の自動小銃だ。
連れてきた子供が逃げたとわかって、威嚇射撃の意味を込めて小銃を発砲させた。
俺は清水先生の周りに集まった子供達の前にバリアを発生させる。
そして、俺は1人前に出て指先を敵に向かって突き出した。
そに指先からは圧縮された空気が発射された。
その瞬間、一瞬で近くに接敵し拳を思いっきり顔面にぶち込んだ。
電気を走らせれば一瞬で終わるが、子供に向けて発砲するクズはどうしても俺の手で倒したかった。
拳は顔面にめり込みそして粉砕された。
残る残党は、電撃で潰す。
こいつらには、手加減など必要がない。
「拓海くん!」
清水先生の声で後ろを振り返ると背の高い男に拳銃を突き立てられていた。
見える敵は始末したが、どこかに隠れていたのだろう。
「そこまでだ、Cー46!」
俺をそう呼ぶのは旧組織の残党だ。
だが、あの男ではない。
その時、子供達の頭上にあり得ない人物が登場した。
「そいや!邪魔じゃ、退け!」
清水先生に銃を向けてた人物の頭上から足蹴りを入れた人物こそ霧坂修造、その人だ。
「こっちは任せておけ」
どうしてここに、と言いたいが詳しい話は後で聞こう。
何せ、建物からあの男が出てきたのだから。
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