闇治癒師は平穏を望む

涼月 風

文字の大きさ
68 / 89
第1章

第68話 海外

しおりを挟む



あれから、恭司さんは大変だった。
詰め寄った樺沢さんに言いたい放題言われて落ち込んでいた。
そして、どういうわけかルミを見た志島さんが異常なほど興奮し、その様子を見た樺沢さんが『同士』と言って仲良くなってしまった。

結局、恭司さんは女子達の蚊帳の外に置かれて、まあ、俺もなのだが、男二人で情けない会話をしながら自宅に戻ったのだ。

昼食はみんなで家で食べることになった。
事前に連絡を入れたので坂井さんが、たくさん作ってくれた。
女子達はみんな喜んで食べていたが、バイト組の3人は仕事があるので不参加だ。

何故かルミは癖のある女子……オタク系女子に人気がある。
志島さんもアニソン大好きだったようで、動画サイトに踊ったり、歌ったりした動画を投稿してた過去があるそうだ。

そんな姦しい女子達が帰った後で、出かけていた楓さんが帰ってきた。
そして、おもむろに俺に告げたのだった。

「当主様からご連絡がありました。治療の依頼なのですがどうしますか?」

敢えて内容を控えている様子だ。
こういう場合は楓さんにとって受けて欲しくない依頼の場合が多い。

「緊急の案件、若しくは断るとまずい案件ですか?」

「はい、両方です」

これは、急ぎの仕事だ。しかも、結構色々思惑が絡んでそうなやつだ。

「治療相手が困ってるなら、俺はやろうと思う」

正直言って面倒なことは多い。
だが、Aー4を始末した今の俺には誰かを治療して自分の正当性を認めがっている。
そんなことで罪悪感が消えるわけはないと知っているのに、どんな時も俺は偽善的で我儘な奴なんだ。

「わかりました。出発は相手の用意ができ次第となります。拓海様の持ち物は私が用意します。拓海様は、個人的に持っていきたい物をバッグに入れといて下さい」

期末テストは無理のようだ。
また、後で受けるんだろうな。

そんな事を考えていると、巫女さんバイト組の3人が帰って来たようだ。
きっと、明日の日曜日も仕事をするのだろうが、期末テスト前にアルバイトして勉強の方は平気なのだろうか?





特別チャーター機は、羽田や成田空港からではなく、横田基地から飛び立った。

米軍人が数十名とこちらのメンバーは、楓さん、恭司さんや春香さんの父親である近藤琢磨さん。それと、霧坂修造爺さん。それに政府から外交官の鍋石貞利さんと岸金冬美さん。総理直轄の特殊部隊から安田実さん、小波蓮也さん、静宮美香さん、桑崎甚太さんの10名が搭乗している。

「こりゃあ、快適な飛行機じゃの。エコノミークラスとは段違いじゃな」

「確かに、だが、爺さんは竜宮寺家のプライベートジェット機に何度も乗ってるだろう?そう驚くことはないだろうに」

修造爺さんと近藤琢磨さんは、何度も一緒に仕事をしてるらしい。
今回は、政治がらみなので竜宮寺家直々に派遣を要請されたようだ。

「恭司さんや柚子がだいぶごねてたね?」

「仕方ありません。今回は学生であるあの二人を連れて行くわけにはいきませんから」

ニューヨークに行くと知って柚子や恭司さんは護衛として一緒一緒についていくと何度も楓さんに言っていた。
だが、
竜宮寺家から直接琢磨さんと修造爺さんに依頼がなされていた為、しぶしぶ引き下がったのだった。

「現地にはどれくらいで着くんだろう?」

「飛行時間は12~13時間です。あちらの空港からは2時間ほどかかると聞いています」

現在、治療対象者は自宅療養してるらしい。
勿論、そこには医療スタッフが待機している、という話だ。

「まさか、海外とは思わなかったよ」

「ええ、私も当主様からのお話しを聞いて、はじめはお断りしようと思っていたのですが、政治的な問題で断ることができませんでした」

「それに、俺パスポートとか無いんだけど?」

「外務省の方が特別に用意してくれましたよ」

国家権力ってすごい……

「こぞうは、海外は初めてか?」

「はい、拉致された時以外で初めてです」

「あの国は、みんなスタイルがええぞ。みんなボン・キュ・ボボンじゃ」

また、エロ話になってるよ。

「それにみんな肉食ってるから、日本人に比べて胸がボイン・ボインと弾力があるんじゃ。わしの秘剣が久しぶりに発揮できるぞい」

「修造様、お静かにお願いします!」

楓さんの冷たい口調に流石の爺さんも冷や汗をかいている。

「そうじゃな、うん」

楓さん、もしかして最強?

「拓海様、こちらで映画が見れますよ。ヘッドホンはこちらです」

どうやら楓さんは、修造爺さんを牽制したいらしい。

俺もその方が助かるけど。

その後、何本物映画を見て飛行機の中を過ごしたのだった。





飛行機が着いた場所は、一般の空港てはなくニューヨークにある空軍基地だった。

その為、面倒な入国審査などはなくパスポートを確認しただけだった。

特殊部隊の人達は、拳銃を所持してるし一般の空港では問題になっていただろう。

『ミスタータクミ・クラシキ、ようこそ、アメリア民衆国に。君を歓迎する』

そう挨拶してきたのは、大統領補佐官のジョージ・サテライズさんだ。

「こちらこそ、歓迎に感謝します」

お互いに握手を交わして、次に外交官の人達と挨拶を交わしている。

お互い紹介が済むと滑走路に止めてある大型のバスに乗り込んだ。
 
その間特殊部隊の人達は、周囲の警戒を、琢磨さんと修造爺さんは俺と楓さんのすぐ後ろにいた。

この車は、バスを改造したようで豪華な内装となっており応接セットもある。

そこで、外交官の鍋石さんと岸金さんとジョージさんとで話あっている。

俺は楓さんと一緒に後方の座席に腰掛け飛行機での疲れを回復していた。

「はは、長旅は腰にくるわい」

「回復しましょうか?」

「それじゃあ、お言葉に甘えるかのう」

みんな疲れているだろうから、日本人スタッフに向けて能力を発動した。

派手な魔法陣や光ることはないが、みんな楽になったようで驚いた顔をしてる。 

「おお、楽になった。拓海がやってくれたのか?助かるぞ」

琢磨さんも不調部分があったようで感謝された。

「いつも恭司さんにはお世話になってますから」

「あいつは役にたってるのか?迷惑をかけてるとしか思えないが」

まあ、それが恭司さんだからね。

「いいえ、ものすごくお世話になってますよ。良い意味で」

「あははは、腕はそこそこだがあいつは行動がバカだからな。それにしても拓海は規格外だな。将道様が大事にしたがるわけだ、わははは」

琢磨さんは、恭司さんの父親だけあって豪快な人だ。

この親子はよく似てる。

外交官達の話はまだ続いている。
偉い人と話をするだけで肩が凝るのに、外交官の人達は、冗談を交えながら会話している。

きっと、優秀なら人達なのだろうな。

政治は、本当に大変な仕事なのだと改めて思った。





そして、2時間かからずに到着したところは、一面芝生が覆っている中に建っている白亜の豪邸だった。

「広いし綺麗なところだね」

「まるで、ゴルフ場の中のクラブハウス見たいだな。豪華さは断然こちらが上だが」

建物の周りや敷地のあちこちで巡回している警備員がいる。

立ち振る舞いから軍人なのかもしれない。

『ミスタータクミ、お待ちしておりました。こちらです。どうぞ』

中に案内されて広い応接室に着く。
ソファーに促されて弾力のあるソファーに腰掛けた。

「ここも広いね」

「ええ、竜宮寺家も負けてませんけどね」

楓さんは対抗意識があるようだ。
そして、コーヒーを用意してくれて、少しの間、その場で待機していた。

そして、応接室に来たのは40歳ぐらいの夫婦だった。

『ようこそ、アメリヤへ。私は、グリース・マスカットだ。長旅で疲れただろう。ゆっくりすればいい』

『私はグリースの妻のキャロラインよ。ミスタータクミ。娘のフローリアの為にわざわざ日本から来てくれてありがとう。歓迎するわ』

握手だけの挨拶かと思ったら、ハグされた。
こういう挨拶は苦手だ。

その場で少し会話をする。
奥さんのキャロラインさんが現大統領の娘でグリースさんはお婿さんらしい。

そして、今回治療対象のフローリアさんは14才の少女。
ハリケーンの中、楽しみにしていたミュージカルを見に行ってたようだ。

だが途中で公演は中止になり、迎えの車に乗ろうとしてる時に風に飛ばされた大きな看板の下敷きになったらしい。

一命を取り留めたのは車の開いたドアが看板の直撃を防いだようだ。

それからマスカット夫婦に連れられて娘さんが居る部屋に案内された。

『イヤ!誰も入って来ないで!』

マスカット夫婦がノックしたら、そんな返事が部屋の中から聞こえた。




しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに

千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」 「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」 許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。 許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。 上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。 言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。 絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、 「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」 何故か求婚されることに。 困りながらも巻き込まれる騒動を通じて ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。 こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。

処理中です...