闇治癒師は平穏を望む

涼月 風

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第1章

第76話 期末試験

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あれから、あさぎり護衛艦に乗り込みそのまま横須賀まで帰った。

楓さん達は、ハワイから飛行機に乗り俺よりも早く日本に着いていた。

横須賀まで迎えに来てくれた楓さんや他のみんなには、僅かな時間とはいえバカンスを楽しんでいた俺としては申し訳ない気持ちでいっぱいだった。

それから、あの飛行機の事なのだが要人が一人乗っていた。
世界的な宗教イリスト教の枢機卿であるミッサーナ氏である。

彼はニューヨークのイリスト教の会合に出席し、その後日本の会合に出席する為にあの飛行機に乗っていたようだ。

今回の件は彼を狙ったテロ行為であるとアメリア国のニュースで騒がれていた。

というのは、『ルナマリア』という民族?組織?からマスコミに向けて犯行声明を出したらしい。

しかし、彼らの失態は乗員乗客が全員無事だった事だ。

それに時系列に言えば、飛行機が落下する前に声明がなされたことになる。

確かにあの飛行機の状況では、誰も助からないと判断できるし、運良く助かっても数人だっただろう。

そんな話を連絡先を交換したフローリから聞かされた。

そのフローリからは鬼電のように着信履歴が凄い事になっていた。

スマホは、バッグに入れといたので受け取ったのは楓さんと再会してからだ。

機内モードを解除すると直ぐにフローリから連絡がきた。

声の調子から余程焦っていたらしい。
寝ずに連絡をこまめにしてたらしい。それに飛行機を手配してくれたマスカット夫婦も気を揉んでいたそうだ。この事に関しても申し訳ない気持ちになった。

そして、久々に学園に行き、今俺は期末テストを受けている。

期末に関しては全教科なので2日間はこの状態でテストを受けなければならない。

そして、テストが終わって大きな伸びをしていると声がかかった。

「蔵敷君だっけ?テストどうだった?」

声をかけて来たのは、同じテストを受けていた安斉由良さんという別クラスの女子だ。

大きな眼鏡をかけていて、暑いのにマスクをしている。
髪の毛は、長く綺麗な黒髪だがどうにも作り物っぽい。

「どうだろう?出来たような出来なかったような感じかな。そっちは?」

「まあまあかな。苦手な科目もあったけど何とか解けたわよ」

彼女は順調のようだ。

今回のテストは安斉さんと二人きりだ。
彼女も、期末テストを受けれなかったらしい。

「蔵敷君とこうして話すのは初めてね。君はいろいろと噂があるから直ぐにわかったわよ」

「噂って何だろう?」

「知らないの?学園三大美少女を連れ回しているハーレム野郎って有名だよ」

ハーレム野郎ってなんだよ!

確か渚や柚子、そしてアンジェにはファンクラブまであるらしいし、そういう噂があってもおかしくはないか。

「俺自身が弁解しても仕方ないと思うけど、誤解なんだよね。たまたま家が近かっただけなんだが」

「まあ、噂なんて言いたい奴が勝手に言ってるだけだしね。そういうことにしておくわ」

女子はそういう話が好きみたいだ。

「安斉さんもテスト受けれなかったんだね」

「まあね。ちょっと体調崩しちゃってね。蔵敷君はどうしたの?」

「まあ、俺も同じかな」

この話題はマズい。
会話をふったなは俺だし、これがブーメランってことか。

「じゃあ、私は帰るわ。明日もよろしく」

「こちらこそ」

彼女が教室から出て行って、何故だかホットする。
陰気な姿な彼女だが、隠しきれないオーラみたいなものを感じた。

「あまり関わりたくない人種だな」

そう呟いて教室を出るのだった。





とある国のとある街の崩れかけたビルの一室で浅黒い彫の深い人相の男が机の上にあった酒瓶を投げ捨てた。

「クソッ!どういうことだ!」

室内には、その男の他にも数人の男達が苦虫を噛み潰したような顔をしている。

「統領、作戦は完璧でした。仲間が買収した整備員も嘘をついている様子はなかった。確実に仕掛けた爆薬は破裂して左翼は完全におしゃかになっていたはずです」

「安定飛行中の高度は約1万メートル上空です。左翼がいかれちまったら海に真っ逆さまになって飛行機は大破してたはずです」

しかし、その言葉を聞いても統領と呼ばれた男は納得していない。

「じゃあ聞くが、何で飛行機は無事で乗員乗客の誰もが死んでねえんだ?」

「世間が言うには、パイロットの操縦技術が長けていたって言われてます」

「そんな事聞いたんじゃねえ!」

そして、もうひとつの酒瓶が壁に向かって投げ捨てられた。

部屋にアルコールの匂いが充満する。

「俺達の目的のひとつであるイリスト教の失墜は無駄に終わった。次期教皇と有力視されるミッサーナ枢機卿をあの場で仕留めていれば情勢は変わったんだ。他の候補者はある程度金を積めばどうにかなる存在だ。我がルナマリア教がイリスト教を支配できたんだぞ。くそったれ!」

「確かに今ではイリストの奇跡とか喚いてるコメンテーターもいるしな。逆に俺達はイリスト教の株を上げちまったことになる」

「そういう事だ。何で悉く作戦が失敗するんだ?孫のところに行く予定だったアメリアの大統領もこちらの作戦を知ってたかのように急遽予定を変更しやがった。孫に会って、喜んで帰る途中に襲う作戦も無駄になっちまった」

「誰か情報を流している奴がいるんじゃねえか?」

一瞬部屋の中が静まりかえった。

「仲間を疑うことは許さん!我がルナマリアの名をみんな胸に刻んでいるんだ」

「「「「「ルナマリアの名に誓って!」」」」」

そこにいる者達が胸に手を当ててそう言った。

「来月、イリスト教皇が日本の平和式典に出席する予定だ」

「今回の枢機卿の日本訪問はその予定を練る為のものですか?」

「ああ、会合と名を打ってるが本来の目的はそれだ」

「では、枢機卿ではなく先に教皇をやるんですね?」

「ああ、枢機卿はその後、始末する。それで今回例の人形を投入する」

「あの胡散臭い風見屋とかいう奴から仕入れたあの人形ですか?確かにパワーがありますが、簡単な命令しかインプットできませんぜ」

「ああ、ヘルガイドも逃げられたが重傷を負わせることができた。あいつはもう裏の世界で暮らせねえだろう」

「何体投入するつもりですか?」

「10体全部だ。今度こそ失敗は許されねえぞ」

「わかりました。手配しときます」

密かに悪意のこもった物事が進みつつあった。





期末テストを受けていた教室を出ると、生徒会長の立科孝志さんが廊下で待っていた。

「やあ、拓海君、大変だったね」

いろいろ聞きたいこともあるのだろうが、学園では遠慮してるようだ。

「ええ、いろいろありましたけど大丈夫ですよ。会長こそここで何してるんですか?」

「勿論、拓海君に用があって待っていたんだ。さあ、行こう」

この人、何だか恭司さんに似てきたかもしれない。

「会長、俺明日もテストですし柚子達も教室で待ってると思うので帰りますよ」

そういうと、会長は胡散臭い笑顔を浮かべた。

「霧坂さんには連絡を入れてある。拓海君を少し借りるってね。だから、さあ行こう」

どうも面倒ごとの予感がする。

「どこに行くんですか?」

「勿論、生徒会室だよ」

「俺、帰ります」

「待ってくれ。大事な話があるんだ。この学園の将来の為に君の力が必要なんだ」

ほら、面倒ごとだった。

廊下でそんな話をするわけにもいかない。
他の生徒達もこちらを見ているし。

「わかりました。そのかわり俺は何もしませんよ」

「じゃあ、行こうか」

話を聞いちゃいない。
いや、聞いてないフリをしてるだけだな。

会長に無理やり連れて行かされて生徒会室に着いたのだが、大きな机で書類整理している女生徒しかいなかった。

「ここって、いつも人数少ないですよね」

「みんな用事があるからね。今日は会計の稲田さんがいるから僕も助かっているんだ」

「初めてまして。稲田穂乃果です。2年3組に在籍しています」

彼女はわざわざ仕事を中断して立ち上がって挨拶してくれた。
彼女の印象は『小さい』だ。
恭司さんの友達の樺沢さんも小さいけど150センチ前後で、ある部分だけは知り合いの女性よりも大きいのだが、稲田さんは全体的にコンパクトな感じだ。

「蔵敷拓海です。1年3組です」

「はい、知ってますよ。蔵敷君は有名ですから」

俺は有名らしい。
きっと学園に蔓延る例の噂のせいだ。

「そうですか、良い方面で有名なら良いのですけど」

「学園の美少女達を三股するクソ野郎って事で有名です」

はは、さっきハーレム野郎って言われて今度はクソ野郎か。
次は何て呼ばれるんだ?

すると会長が話に割り込んできた。

「甘いぞ、揚げあんぱんに砂糖をぶっかけたより甘いぞ稲田さん。僕が知ってる限りあと4人、いや5人はいるぞ。つまり拓海君は八股クソ野郎なんだ」

「俺、帰ります!」

「待ってくれ。今のは冗談ではなく冗談なんだ」

この人何が言いたいのだろう?
最初に会った時より知能指数が落ちてる気がする。

「ほほう。会長そうすると蔵敷君は八股のオロチって事ですね」

「ふん、神話に例えるなど甘いぞ、稲田さん。拓海君は……」

「会長、そろそろ要件をお願いします。じゃないとガチで帰りますから」

俺の話で盛り上がるんじゃねえ!

「そうだった。要件は次期生徒会長の事だ。夏休み明けに会長選挙が行われる。しかし、内部組みでは2年生の安藤葉月さんしか有力な候補者はいない」

「じゃあ、安藤さんで良いんじゃないですか?」

「それが安藤さんに打診したのだが断られてしまった」

「そうなんですね」

「だから、拓海君に説得してもらいたいのだ。安藤さんを次期生徒会長にと」

やはり、面倒ごとだった。
明日からはさっさと帰ろう、と心に誓った。




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