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閑話 白金結月〜神宮司沙希〜鴨志田結衣
しおりを挟む~白金結月~
私は生徒会長の白金結月です。
今日は、編入試験があるので朝早くから学園に来ている。
「あ~あ、こんなに早くにも~う」
オバさん……理事長に言われたから仕方ない部分もあるけど、最近の私の悩みは学園で密かに売買されている薬の件だ。
オバさん……理事長は例の男の子に協力を仰ぐと言っていた。
あの名家の警護を司る藤宮家の客人らしい。
名前は東藤和輝。
学園の個人資料では合衆国からの帰国子女と書かれている。
そして、今日編入試験を受けるのは、その妹、東藤メイファンと東藤莉音だと言う。
学園の資料ではありきたりな個人情報しか記載されていない。
おそらく経歴も嘘なのだろう。
何者なの?
私は出来るだけ危険な人達はこの学園に入って欲しくない。
これ以上の問題を起こされては私も困る。
でも、オバさん……理事長はなぜか嬉しそうだ。
それは、学園に生徒が増えるのは良いことだと思うし、生徒確保が難しい今の世では嬉しくなるのも当然だ。
でも、理事長の喜び方は少し違うように思える。
何か子供のようにワクワクしてる感じだ。
監視システムの導入も率先して理事長が進めた。
生徒のプライバシーに関わるから、私は非協力的だった。
でも、薬の件がある。
万が一、この事が世間に知られたら私の好きな緑扇館学園はおしまいだ。
私は理事長の意見に賛同した。
でも、この事は私と理事長しか知らない。
他の生徒や先生にバレたら大変だ。
そういう話のある中、例の藤宮家の客人、東藤和輝と会う事になった。
高等部の編入試験を受ける妹さんと一緒にだ。
オバさんが東藤くん達と話をしてる。
私は隣の部屋で待機させられていた。
呼ばれたので行ってみると、暗そうな男子と明るい狐目の女の子が座っていた。
理事長との話を聞いてると、暗いけどまともそうな男子だ。
頭も良さそうな感じを受ける。
また、メイさんの方は妹と言っても血の繋がりがないのは明らかだ。
明るいけど、どこか冷たい、そんな印象だった。
放課後に東藤くんと詳細を詰める事になる。
仕事には真面目に取り組むタイプと判断した私は東藤くんの監視を含めて近くに置いておく方が安心だと判断した。
私の補佐についてもらおう。
そうすれば、何かした場合、すぐに理事長に報告できる。
会ったばかりで信頼関係など持てるはずもない。
とにかく得体の知れない人物だ。
こちらが油断してたら寝首を掻かれるかもしれない。
放課後、東藤くんがやってきた。
淡々と話は進むが、補佐の件は断られてしまった。
だけど、それでは困る。
期限付きで納得してくれた時は、思わず笑みが浮かんだ。
これで、監視ができる。
あとは詳細を詰めて、あの部屋に連れて行くだけだ。
男子と2人きり。
あんな誰も近寄らない場所で迫られたら、私に抵抗する術はない。
でも、東藤くんは飄々としててまるで私に興味がないみたいだ。
少し、女としてのプライドが傷つく。
でも、何かあって欲しい訳じゃない。
私の初めては、好きな人が現れるまで大事にとっておくつもりだ。
この後、残務がまだ残ってる。
帰りたいけどそうもいかない。
そうだ、東藤くんはもう私の補佐なんだから手伝ってもらおうか?
生徒会室に連れて行って残務をお願いしてみると『いいですよ』と呆気なく返事をくれた。
書類をまとめる作業だけでも骨が折れるのに、時系列でしっかり仕事をこなしてくれた。
仕事できる人なんだぁ。
私は東藤くんに対する警戒度を少しだけ緩めた。
◇
~神宮司沙希~
「もーーう!お兄ちゃんはっ!」
なんで妹が増えてるの?
お兄ちゃんの妹は私だけなんだよ。
なんで血のつながらない女の子を妹にするのよ!
本当の妹は私だけなんだからっ!
考えるとイライラしてくる。
でも、仕方のない事だともわかっている。
でも、納得なんかしないからねっ!
メイさんはともかく莉音ちゃんまで……
ああ、いいなあ、あの偽妹達はいつも一緒にいられて……
あ~~考えると頭にくる。
お兄ちゃんに呪いのメッセージでも送ろうかな?
私はベッドにあるクマのぬいぐるみに八つ当たりする。
可哀想だが、私の気持ちはどうにもならない。
ダメだ。
これじゃあ、いつまで経っても私はお兄ちゃんの後輩のままだ。
でも、良い方法が思い浮かばない。
この家に誘ってもダメだった。
あと、残す手は……
お母さんに会ってもらおう。
これは賭けだ。
ああ、でも失敗したらお兄ちゃんは……
お兄ちゃんの気持ちを考えたら、そんな事はできない。
きっと悲しむから。
あの時みたいに泣いちゃうかも。
う~~ん、私はどうしたらいいの?
誰か教えてーー!!
私の心の叫びはクマのぬいぐるみだけが聞いていた。
◇
~鴨志田結衣~
どうしよう、どうしよう、どうしよう……
ダイエットは成功した。
お菓子を我慢し食事も減らした。
それに有酸素運動も実践した。
体重は、前に戻ったどころか少し減っていた。
私は今日までの努力を自分で褒めてあげたい。
私だって頑張ればできる子なのだ。
喜んでみんなにその事を伝えた。
少しテンションが高かったのだと思う。
油断した。
つい、羅維華ちゃんに「結衣はなんでそんなに頑張ったの?」と尋ねられてポロって東藤君との約束を話してしまったのだ。
すると、みんなは『え~~!!」っと驚いていた。
それだけなら、まだ良かった。
いつの間にか男子達もその会話を聞いていた。
東藤君は既に帰ったあとだ。
教室に残ってたみんなにもバレた。
あ~~なんで私言っちゃったの!
悔やんでも仕方がない。
それで、2人では危険だという事になり、みんなで遊園地に行く事になってしまった。
どうしよう、どうしよう、どうしよう……
東藤君になんて伝えればいい?
結局、その日は東藤君にその事を伝えられなかった。
はあ~~私のバカ……
でも、これで東藤君がみんなと仲良くなれるかも?
う~~ん、でも嫌だ。
2人だけがいい。
そうだ。みんなと行動するフリをして東藤君と抜け出せばいいんだ。
今の私には、それしかない。
明日の朝、東藤君に伝えよう。
私はそう思って途中まで書き込んだ東藤君宛のメッセージを消した。
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