インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

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第65話 木曜日は期待(1)

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次の日、聡美姉から学園の監視システムの契約書を俺は手渡された。
事前に電話で概ねの予算は話してあると言う。
あとは契約書に理事長のサインをもらえれば、事が進むらしい。

それとメイと莉音の入学が許可された。
来週の月曜日から登校するようだ。

慌ただしい朝、俺は珠美を幼稚園に送ってから学校に向かった。
ちびっ子達は、一通りレッスンが完了したとメイから言われた。
俺は、そういう風に仕上がったのか知らない。
今日で合宿は、終わりにすると報告があった。
今日からは所属事務所で練習するようだ。

蓼科さんには、その旨の報告は済ませてあるらしい。
俺も、今日、細かい調整の為に所属事務所に行く事になっている。

遅刻ギリギリでクラスの着くと、相変わらずクラスの中は騒がしかった。
鴨志田さんと目が合い、軽く挨拶された。
そんな様子を見てた男子達が俺を睨みつけている。

俺を睨んでもどうしようもないと思うのだが……

席に着くと直ぐにホームルームが始まった。
いい加減な出席をとって解散となる。

昨日の生徒会長の残務は結構な量があった。
帰りは午後7時ごろまでかかってしまった。
生徒会とは大変な仕事のようだ。

授業が終わり休み時間になる度『FG5』の話題や『HINA』の話題が上がった。神崎も有名らしい。

そして、鴨志田さんからメッセージが届く。
内容は日曜日の件だ。
忘れてたわけではないが、少し驚く内容に変わっていた。

「ごめん、みんなも行く事になった」

そうメッセージにはかかれていた。
意味がわからないので、尋ねてみると、

いつもの女子グループに知られて俺と2人だと危険だという事になったらしい。
それで、女子グループと立花達男子3人と一緒に遊園地に行く事になったと書かれていた。

謝られても困るので「気にするな」と書いて送る。
それにしても、俺が参加する意味はないと思うが……

それで俺の当たりが強かったのかと納得もできた。

1時間目の休み時間に聡美姉から頼まれてた契約書を持って理事長室を訪ねる。
理事長は、契約内容を確認してサインしてくれた。
工事は、金曜日の夜、終わらなければ土日の夜を予定している。
機材の導入は業者が行う。
それは一般生徒がいない土曜日に搬入される事になった。


そして昼休み、いつもの木陰で穂乃果と神崎と3人で弁当を食べていると神崎に話しかけられた。

「東藤くんって鴨志田さんとお付き合いしてるの?」
「してないよ。何でそんな事を聞くんだ?」
「だって、みんな言ってたよ。日曜日にデートする予定だったって」
「デートじゃないぞ。約束してただけだ」
「ふ~~ん、そうなんだ」

そんな話をしてると穂乃果が

「東藤殿はお忙しいお方です。それに約束を違える事はありません。前に約束した事を果たすだけでしょう」
「穂乃果ちゃんはいいの?」
「何がですか?」
「東藤くんが他の子とデートしても」
「東藤殿と私はそのような関係ではありません。それに約束を交わしてますから問題ないです」

その約束ってアレだよな……

「そうなんだ。その約束って気になるけど教えてくれないよね」
「こればかりは、申し訳ありません」

「神崎は誤解してるぞ。鴨志田さんだけではなく、みんなと行く事になった。2人きりではない。神崎も一緒に行くか?その方が俺も嬉しい」
「その日はね、前から読モの仕事が入ってるんだ」
「そうか、それなら仕方がないな」

「あ、そうだ。明日穂乃果ちゃんちに行ける事になったよ」
「私は構いません。妹と2人で暮らしてますので気にしないでおいで下さい」
「うん、ありがとう」

神崎は嬉しそうだし、穂乃果も女子の友達ができて嬉しいのだろう。

「俺も時間があったら顔を出すよ」
「わかった。お隣さんだものね」
「ああ、そういう事だ」

3人でお弁当を食べる事が日常となりつつある。
でも、そんなまったりとした時間に連絡が入った。
聡美姉からだ。
~~~~~
「もしもし、カズ君?」
「ああ、どうかしたか?」
「学校楽しんでるとこ悪いんだけど、緊急の案件」
「わかった、どこに行けばいい?」
「違う、違う、どこにも行かなくてもいいから、総代から連絡が入ったの」
「そういうことか」
「うん、日曜日の夕方、名家の集まりがあるんだけど、ガードを頼まれたの」
「総代には優秀な警護官がついているだろう?」
「違うわ。ガードを頼まれたのは百合子様よ」
「えっ……」
「表立ってガードしなくてもいいと言っていたわ。総代の護衛官の補佐に付きながら百合子様を陰ながらガードしてほしいと言っていたんだけど、どうする?」
「あの爺さんの事だ。何か考えがあってのことなんだろう」
「私もそう思う」
「わかった」
「じゃあ、OKの連絡入れとくね」
~~~~~

「東藤殿、顔色が悪いようですが何かトラブルでも?」

穂乃果が俺を心配して尋ねた。

「心配ない」
「そうですか、何かご用がお有りでしたらいつでも私をお申し付けください」
「ああ、ありがとう」

そんな俺と穂乃果のやりとりを見て神崎は訳が分からないようだ。
でも、それを尋ねる事はしなかった。
神崎も空気を読める良い子らしい。





昼休みが終わるまで、スマホに来ているメッセージの返信に明け暮れた。
どうにかみんなに返信が終わると午後の授業が始まる。

特に変わった事のない学校での1日が終わりを向かえる。
学校が終わると、今日はサンセット・サンライズ・エンターテインメント・ミュージックに行かなければならない。
長い会社名なので頭文字を取ってSSEMと呼ぶ事にした。

最寄駅に着いて会社まで歩いて行く途中で声をかけられた。

「ヤッホー、久々だね~~サブ郎」

俺をサブ郎と呼ぶのは『FG5』のメンバー柚木カレンだ。

「カレンもこれからみたいだな」
「うん、今日はテレビ局で収録なんだ」
「そうか、頑張れよ」
「サブ郎は来てくれないの?最近、美春ちゃんも忙しそうだし最初だけ顔出して直ぐにどこか言っちゃうんだよ」
「ああ、『苺パフェ8』の件で忙しそうにしてるからな」
「うん、それは知ってるけど、私達って蔑ろにされてない?」
「そんな事はないぞ。メンバーみんながしっかりしてるから任せても大丈夫だと思ってるんだ」
「へへへ、そうかな」

カレンとそんな話をしながら会社に着くと、俺は前に注意された社員証を胸に付けた。

「じゃあね~~私こっちだから」
「ああ、またな」

カレンと別れて、俺は蓼科さんを探す。
蓼科さんは自分のデスクで頭を抱えていた。

嫌な予感がする……

このまま声をかけずに帰ろう。
俺は踵を返して入ってきた方に向かい歩き出す。
すると『ガシッ』と肩を捕まれた。
しかもネイルが肩に食い込んで痛い。

「東藤君、どこ行くきかな、かな?」
「お茶でも買おうかと……」
「ふ~~ん、さっき私を見たよね?」

これはホラー映画か何かか?

「……今日は良い天気ですね」

こういう場合は天気の話題が1番だ。

「私の場合は920ヘクトパスカルよ」
「台風並みの低気圧ですね」

「わ~~ん!東藤君どうしよううう」

やはり、問題抱えてるよ、この人……

「どうしたんですか?」
「い、い、い……」
「胃潰瘍ですか?早く治さないよ」
「違うわっ!い、よ」
「だから何が言いたいのかさっぱりわかりません」
「衣装の発注忘れてた……」
「……………」

うん、帰ろう。
今すぐ帰ろう。

その場を離れようとすると『ガシッ!』と両肩を捕まれれる。
ネイルがさらに肩に食い込んで痛い。

蓼科さんって、できそうなOLタイプなのに残念な人だ。

「衣装ってどれくらいでできるんですか?」
「急ぎで1週間かな?」
「……………」


「本番日曜日ですよ」
「知ってます。胃に穴が開くほどよ~~く知ってますう」
「間に合わないですね」
「そうね、どう考えたって無理ね」
「……………」

「あ~~っ、屋外だから台風が来てミニ・コンサート潰れないかしら」

そんな事考えてたからヘクトパスカルが出てきたのか……

「間に合わなければ私服でも仕方ないじゃないですか」
「そういうわけにはいきません。初ライブなのよ。普通の私服でとか有り得ないわ。だから、素人は困るのよね」
「俺、帰ります」

「待ってーー!嘘だから、本当に頼りにしてるから、だから見捨てないで~~」

このままだと時間だけが過ぎて行く。
と言っても俺に衣装とかファッションとかまるでわからない。

「あっ………!」
「ど、どうしたの?衣装を用意するアイデア浮かんだの?」
「市販の服を買ってきたらいいんじゃないですか?可愛いやつを」
「なんだ、そんな事なの。使えないわね、そんなのとっくに考えたわよ。でも、子供服なんて独身の私にわかると思う?思わないよね?」

「他の社員さんに聞けばいいじゃないですか。たくさんいるんだし」
「私もそう思って聞こうとすると、みんなどこかに行っちゃうのよ。急に仕事が入ったり、腹痛になったりするの。何でだろう?」

トラブルに巻き込まれたくないようだ。
賢いな、ここの社員……
衣装か、それって神崎なら詳しいのか?

俺はスマホを手にして神崎に電話をかける。
数回なって慌てたように神崎がでた。
~~~~~
「俺、東藤だけど」
『うん、うん、ちょっと待ってね』

何だか忙しそうだ。『お兄ちゃん、あっち行っててよ~』とか聞こえてくる。

「あ、ごめんね、急だったからちょっとあって~~」
「こっちこそ忙しい時にすまん。それで、聞きたい事があるのだが」
「なに?」
「小学生高学年の子に人気のファッションブランドって何か知ってるか?」
「そうね~~いろいろあるけど……(もう、お兄ちゃんそんなんじゃないから)あっ、ごめん、こっちの話。今、人気なのはミルク・ミント・ローズかしら」
「そうか、ミルク・ミント・ローズだな。助かった。礼は何か奢るよ」
「いいよ。そんなの」
「じゃあ、本当に助かった、またな」
「うん、またね(もう、お兄ちゃん、邪魔しないで!)」
~~~~~
神崎は何だか大変そうだな……

「蓼科さん、わかりました。ミルク・ミント・ローズが小学生に人気のようですよ」

「そうなんだ。何かめんどくさい名前のブランドね」

お前がいうな!

「ローズさん繋がりでいいんじゃないですか?」
「わかった。電話してみる」

その後、アポを取った蓼科さんは俺を連れ立ってミルク・ミント・ローズの店に行く。

そしたら、夏に販売する新商品が急遽出るらしく、そのコーデをちびっ子達の衣装代わりにする事が決まった。
ミルク・ミント・ローズの方も良い宣伝になると喜んでいる。
納品も在庫があるらしく、明日には届くそうだ。

帰りに蓼科さんは、俺の肩をバンバン叩いていた。
仕事が上手くいってテンションが高めなのはわかるが、俺の肩は痛いままだった。


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