インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

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第70話 夜の学校

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あれから、喫茶店で神崎兄妹、そしてマイペースな穂乃果とお喋りして家に帰った。

神崎兄は、妹のことが心配で様子を見にきたらしい。
読モの姿の神崎と地味子の神崎を知ってる俺がバラしたりしないか不安だったようだ。
だが、俺が業界人だと知ると、秘密が守られると思い安心した様子をみせた。
それに神崎兄は、『FG5』のファンらしく、中でもアヤカ推しのようで、俺にアヤカのサインを貰ってくれと頼まれた。

そういえば、アヤカは雰囲気的に神崎に似てるような気がする。
2人とも、髪の毛金髪だし……

別に俺が損をするわけでもないので、素直にOKする。
神崎兄は、これからサークルの飲み会があるということなので途中で別れた。

それから穂乃果と神崎は一緒に帰った。
俺も一緒だったが、神崎兄からは1メートルは離れるようにと言われていたので律儀に守っている。

神崎は藤宮家別邸の門を見て『デカッ』とひと言呟いた。
その後は、稽古場の裏手にある穂乃果の家に帰って行った。


そして、夜の8時、俺とメイは緑扇館学園に来ている。
今日の朝、メイが起きてこなかったのは、ちびっ子達の指導が終わり、久々のネットゲームを一晩中楽しんでたそうだ。
ゲームの中で仲間のユートンさんと狩りに出掛けたらしい。

肝心のちびっ子達の指導の件を聞こうとしたら、ひらりと交わされる。
メイにも少しは自覚があったようで、俺から何か言われるのが嫌で距離を置いてたようだ。

今更、メイを叱ってもちびっ子達の件はどうする事もできない。
合宿中に忙しかった俺の責任もある。
二言三言注意するだけで終わりにした。

理事長室によると、緑藤詩織理事長は、俺達を待っていた。
そこには、生徒会長の白金結月と白金葉月もそこにいた。

俺の思った通り、白金葉月は会長の妹だった。
メイが編入するクラスと一緒らしいので、顔合わせも兼ねて残っていたようだ。

「それじゃあ、私は帰るわね」

理事長はそう言って帰って行った。
前から予定が入っていたようだ。
俺達は生徒会室に移動する。

機材を運んでくる業者は、9時ごろ着く予定だ。
生徒会室でみんなでお茶を飲んでると、会長が謝罪してきた。

「お昼の時は領内君がすまなかったわね」
「ひとつの意見です。気にしてません」
「彼は悪い子じゃないのだけど少し思い込みが激しいところがあるのよ」

すると今度は白金妹が

「領内先輩は、姉さんのことが好きみたいなんです」
「俺にあたりが強かったのは私情が絡んでいたと?」
「はい、私はそう思います」

するとメイが

「小さい男なのネ。みっともないあるヨ」
「ええ、私もそう思います」

メイと白金妹はタイプこそ違うが仲良くなれるかもしれない。
そんな気がする。

「会長達は帰らないのですか?」
「あら、私達がいたら邪魔かしら?」
「そういう意味ではないです。徹夜仕事になりますし肉体労働ですから慣れないと疲れますよ」
「疲れたら休ませてもらうわ。この部屋の隣には仮眠室があるのよ」
「それでしたら遠慮しないで休んで下さい」

「私も休むのネ~~」
「メイ、お前はダメだ。昼間ずっと寝てたって雫姉が言ってたぞ。少しは働け」
「もう、グーグは人使いが荒いのネ」

そんな、話を知ってるとトラックのエンジン音が聞こえてきた。
この生徒会室がある特別等の近くに停車する。

「来たみたいだな」

俺が部屋を出ると、みんなもそれに続いた。

表に出てみると大きなトラックが2台と数台の作業車、そしてその中に赤いポルシェが停まってる。

「ヤッホーー、カズ君、来たよ~~」

聡美姉だ。
まさか、現場に来るとは聞いていない。

「聡美姉、夕食の時、来るって聞いてないぞ」
「カズ君を驚かせようと思ってね。黙ってた。えへへへ。そちらが白金さんかな?」
「ああ、生徒会長の白金結月さんとその妹の葉月さんだ」

「こんばんは。藤宮聡美様ですよね。お初にお目に掛かります」

会長は丁寧に挨拶する。
それに習って妹の葉月も頭を下げた。

「いいの、いいの、そんな堅苦しい挨拶しなくても。カズ君がお世話になってるんだもの。普通にして構わないよ」

「そうなのネ、狸女に頭を下げることないのネ」
「あ~~どたま来たあ!狐女は煩いのよ。このネトゲ廃人」
「ネトゲは文化なのネ~~それがわからないなんて頭の悪い胸だけオバケなのネ」

顔合わせる度にちょこちょこ言い争いをするこの2人は仲が良いのか悪いのかよくわからない。

「ほら、聡美姉もメイも仕事始めるぞ」

そう声をかけると作業者の中からガタイの良いおっさんが出てきた。
昨夜、一緒に飲んだ建設会社社長の丹堂峰造だ。

「あれ、カズキの姿が見えねえけど、あいつはバックれたか?」

目の前にいるのだが……

俺は、おっさんに声をかける。

「昨夜会ったというのにもう忘れたのか?」
「うむ……お前、カズキか?」
「そうだよ」
「はははは、まいった!これじゃあ、モテねえはずだ。忍ママに良い土産話ができたよ。ガハハハ」

豪快な笑い方は相変わらずだ。

「あの~~それってどういう意味ですか?」

白金妹がそんな事を尋ねてきた。

「紹介するよ。今回の発注者の白金結月さんと葉月さんだ」

俺が間に入ってその話題を消す。
しかし、おっさんは語り出した。

「ああ、カズキの見た目が昨夜飲んだ時とえらい違ってたもんでな、おかしくて腹が捻れそうだ。ガハハハ、昨夜言ってたんだよ。カズキは学校でモテるだろうってよ。そこにいたクラブのママも店のお姉ちゃん達もカズキのイケメン具合に驚いてたんだぜ。芸能界でもホストでもこんな綺麗な顔した男は見た事ねぇってな。でも、今のカズキは、ガハハハ。お前、何でそんな野暮ったい姿してんだ?」

「え、そうなんですか?」
「東藤君、眼鏡を外して顔をよく見せなさい」

白金妹と姉は興味を持ったようだ。
このおっさんは余計な事を言ってくれる。

「ほら、余計な話はなしだ。仕事してくれ」
「ハハハ、わかってるよ。こちとらプロだ。さっさと終わらしちまうよ」

丹堂のおっさんは、そう言って現場に来てる者達に指図をし始めた。
聡美姉も図面を広げて不備がないか調整している。

思ってたよりきた職人の数が多くて、俺達はただ、その仕事ぶりを眺めているだけで終わりそうだ。

「職人さんが多く来てくれたんで会長達の出番は無さそうですよ。仮眠室で休んでて結構です」

俺がそう言うと白金姉妹は俺の顔をジッと見つめている。

「あの、何か?」

「そうね、生徒会室でお茶でも飲もうかしら」
「そうですね、姉さん」

そう言いながらも俺の顔を見つめる2人。
何がどうした?

「私も休むネ」

「メイ、お前はダメだ。職人さんはみんな男だ。女性しか入れない場所もある。メイは、そこをやってもらう」

「グーグは鬼なのネ。せっかく持ってきたノーパソでログインしようと思ってたのに……」

ここまで来てネトゲをするつもりだったのか?
まさにネトゲ廃人になりつつある。

「ほら、仕事だ」

俺はメイを引っ張って聡美姉と合流する。
白金姉妹は、生徒会室に行ったようだ。

そして、時間は過ぎ、一部足りない機材も出てきたが、どうにか概ねの範囲はカバーできたようだ。

その頃には、すっかり周囲も明るくなってきてたのだが……

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