76 / 89
第73話 土曜日の夜は思惑
しおりを挟む音楽番組の生出演を控えていた『FG5』のメンバーは、楽屋で出演準備をしていた。
「ねえ、美春さんまだ来ないの?プロデューサーが話しあるって言ってるのに」
リリカはイライラしながら、専属のメイクさんに化粧をしてもらってるメンバーを見ながらそう言った。
「今、こっちに向かってるってさ。あ、サブちゃんも来るって書いてある~~」
アヤカが嬉しそうにスマホを見ながら返答した。
「そ、それなら仕方ないわね」
リリカも何だか嬉しそうだ。
「サブ郎来るんだ。仕事する気になったのかな?」
ユキナは、特に感情を表さず会話の流れでそう呟いた。
「サブキはできる人間、頭もいい」
「そうそう、私もサブ君に学校の勉強でお世話になってるし」
和輝の事をサブキと勝手に呼ぶのは関内ミミカ。
それに応えてサブ君と呼ぶのは柚木カレンだ。
2人は学校の勉強でわからないことがあると、直ぐに和輝に連絡を入れてる。
和輝は、2人の個人教師をしてるようなものだ。
「ミミカもカレンも自分の勉強は1人でちゃんとやらないとダメだよ」
リリカは思ってた以上にカズキが他のメンバーとやりとしてるのを知って面白くないようだ。
「リリカちゃんだって、この間の課題カズキが手伝ってくれたんだあ~~って喜んでたじゃない」
揚げ足をとるアヤカにリリカは慌てている。
「そ、それは仕方なくなの、カズキが手伝ってやるよって言うから。深い意味はないんだから」
「じゃあ、私、今度のオフにでもサブちゃんとデートしようかなぁ」
「だ、ダメよアヤカ!2人きりなんてダメに決まってるでしょう!」
「じゃあ、リリカちゃんも一緒に3人でサブちゃんとどこか遊びに行こうか?」
「それなら仕方ないわよね。カズキはサブなんだし私達メンバーに奉仕するのが当たり前なんだから」
アヤカはリリカに背を向けて『クックッ』と細い笑みを浮かべて笑っている。
どうやらリリカをからかって面白がっているようだ。
「そう言えばサブ郎、苺パフェのサブもしてるの?」
「美春ちゃんに強引にさせられたんじゃないの、いつものことだし」
「サブキには世話になってる。苺パフェは私達の妹分、応援しないといけない」
「じゃあ、今日は生だし、明日のこと、少し宣伝してあげようか」
「それがいいと思いま~~す」
「仕方ないわね」
リリカ達は、まだよくわかっていない。
自分達の発言がどんな影響を及ぼすのかを……
◆
収録が終わった『FG5』のメンバー達は、契約してあるタクシーに乗せて家に帰った。
生番組中に苺パフェの宣伝もしてくれたらしい。
俺は、その後、雫姉から連絡を受けて、ロッポンギにあるお洒落なカフェバーに来ている。
カウンターに座る俺の隣には雫姉が色っぽい格好をしてカクテルを飲んでいた。
今回の調査は北キュウシュウで仕掛けたある人物がトウキョウに来てるので、その人物が会う相手の素性を知る為である。
雫姉は、たまに俺に寄りかかってはチラリと俺の顔をみる。
普段メイド姿しかしない雫姉が胸の開いた色っぽい姿で見るから、正直調査どころではない。
「こういう仕事は聡美姉がする方が多いと思うけど、聡美姉は別の仕事か何か?」
「カズキ様、私と一緒にいるのに他の女の話しをするなんて酷い方ですね」
「そういう意味ではないのだが……」
「もう、女の扱いに慣れてないですね。こういう時は『君と一緒の方が楽しいよ』と直ぐにフォローしないといけませんよ」
そんな気持ち悪いこと言う奴いるのか?
「え~と、雫姉には感謝しかない。俺がこうやって過ごせてるのは雫姉のおかげだ。雫姉、いつもありがとう」
「ズッキューン! カズキ様、ずるいですよ。『君と一緒の方が楽しい』とか気持ち悪いこと言うのかと思えば、こんな素敵な言葉を頂けるなんて、雫はもうどうなっても構いません」
ズッキューンって効果音、自分で言う人初めて見た。
それに、雫姉も気持ち悪いって思ってたんだあ、なら言わせるような事するな!
「そ、それより仕事しないとダメだろう」
「そうですね。これではお嬢様みたいにポンポコ狸になってしまいますね」
「ポンポコ狸って?」
「私がここに来る前、お嬢様の部屋を覗いたら、お腹を出して気持ちよさそうにグースカ寝てました。私は、その出てるお腹にお嬢様のご愛用のルージュで顔を描いてきたんですよ。これがその写真です」
確かに寝てる聡美姉のお腹に顔が描いてある。
おかめちゃんみたいだ。
「確かにポンポコ狸だな」
「そうでしょう。だから今度お嬢様が我儘言ったらこの写真を見せてポンポコ狸の名を襲名して差し上げようと思ってます」
うん、雫姉だけは怒らせないようにしよう……
そんな写真を見ているとターゲットの相手が来たようだ。
若い水商売の女性を1人連れて来ている。
「ほら、来ましたよ」
「誰だかわかる?」
「ええ、西音寺公彦。名家西音寺家の分家で現当主の三男です。現在、西音寺商事の役員をしています。あの男には勿体ない地位ですけどね」
歳は40過ぎに見える。
良い年をしてチャラそうな雰囲気を持つ男だ。
「そうか、あの男か……」
話してる内容は、口の動きを盗み見て把握した。
どうやら間違いなさそうだ。
「どうする?」
「どうしましょうか?腐れチンポ野郎ですが一応名家の方ですので少し根回しが必要になりますね」
「じゃあ、帰って要相談だな」
「それがいいでしょう」
その男は連れてきた女性に肩を回して手を胸の部分に当てていた。
見てるこっちが吐き気をもよおす。
クズは大人になってもクズのままなんだな……
俺の中にいる闇の部分は、そいつを殺せることが楽しくて仕方がないようだ。
時々、胸を締め付けてきやがる。
「カズキ様、名残惜しいですが、今夜はここまでです」
雫姉は俺の変化に気付いたのか、俺にもたれかかって上目使いでそう言った。
「わかった……」
俺と雫姉は、静かにその店を出て行くのだった。
◆
~神崎陽奈~
「ただいまーー」
「おかえり、陽奈」
私は、初めてお友達の家にお泊りした。
そのお友達は樫藤穂乃果ちゃん。
とっても可愛くてお人形さんのような黒髪の女の子。
「楽しかったみたいだな。それで東藤は一緒だったのか?」
「東藤君、チョコって顔出して直ぐに妹さんとどこかに行っちゃたんだあ」
「そ、そうか、妹がいるのか、なら、安心だな」
「え、お兄ちゃん、それどういう意味?」
「妹がいる奴なら兄貴の気持ちもわかると言いたいんだよ」
「ふ~~ん、変なお兄ちゃん」
私は、手を洗いうがいをして自室で着替える。
家にいる時は、ラフな格好だ。
リビングを通り過ぎて冷蔵庫から麦茶を取り出す。
「あ、陽奈。悪いが俺にもくれ」
リビングでスマホで誰かとやりとりしてるお兄ちゃん。
もしかして、彼女ができたのかも……
「なに真剣にスマホを見てるの?」
「ああ、明日の仕事の件だ。撮影場所がスタジオから変更になった。トウキョウドームの近くらしい」
「そうなんだあ、あ、それってもしかしてラクーダってとこの近く?」
「そうだけど、それがどうしたんだ?」
「東藤君、いや、あのね、穂乃果ちゃんの妹が在籍してる『苺パフェ8』のミニ・コンサートがそこのガーデンステージでする予定なんだ」
「そうか、時間が有れば見に行けると思うぞ。今回のテーマは秋のコーディネイト。秋の行楽シーズンを迎えて遊びに行くカップルの衣装らしい」
「秋物か~~明日、暑くなるのかな?」
「良い天気らしいぞ。それで、撮影場所が変更になったらしい。近くに公園も遊園地もある。お出かけカップル衣装の撮影にはもってこいだろう」
「そうだけど、汗かきそうで嫌だな」
「館内にスパがあるってさ。撮影が終われば寄ってもいいぞ」
「行きたいけど、1人じゃ怖いよ」
「う~~ん、そう言っても男とは別だろうし俺が側に着いてくわけにもいかないし……」
「そうだ、穂乃果ちゃん、誘ってみるよ。妹のコンサート見たいだろうし、いい案でしょう?」
「ああ、相手が迷惑でなかったらな」
そうだ。穂乃果ちゃんを誘えば、東藤君がいてもお兄ちゃんは変に思わない。
東藤君は苺パフェの方にいるから、時間ができたら会いに行けるし。
うふふふ、楽しみ……
私、こんな幸せでいいのかな?
最近、楽しいことばかりで、逆に不安になるよ。
早く明日にならないかなぁ……
0
あなたにおすすめの小説
陰キャ幼馴染に振られた負けヒロインは俺がいる限り絶対に勝つ!
みずがめ
恋愛
★講談社ラノベ文庫新人賞佳作を受賞しました!
杉藤千夏はツンデレ少女である。
そんな彼女は誤解から好意を抱いていた幼馴染に軽蔑されてしまう。その場面を偶然目撃した佐野将隆は絶好のチャンスだと立ち上がった。
千夏に好意を寄せていた将隆だったが、彼女には生まれた頃から幼馴染の男子がいた。半ば諦めていたのに突然転がり込んできた好機。それを逃すことなく、将隆は千夏の弱った心に容赦なくつけ込んでいくのであった。
徐々に解されていく千夏の心。いつしか彼女は将隆なしではいられなくなっていく…。口うるさいツンデレ女子が優しい美少女幼馴染だと気づいても、今さらもう遅い!
※他サイトにも投稿しています。
※表紙絵イラストはおしつじさん、ロゴはあっきコタロウさんに作っていただきました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
俺は陰キャだったはずなのに……なぜか学園内でモテ期が到来した件
こうたろ
青春
友人も恋人も居ないボッチ学生だった山田拓海が何故かモテだしてしまう。
・学園一の美人で、男女問わず憧れの的。
・陸上部のエースで、明るく活発なスポーツ女子。
・物静かで儚げな美術部員。
・アメリカから来た金髪碧眼でハイテンションな留学生。
・幼稚園から中学まで毎朝一緒に登校していた幼馴染。
拓海の生活はどうなるのか!?
至れり尽くせり!僕専用メイドの全員が溺愛してくる件
こうたろ
青春
普通の大学生・佐藤健太は目覚めると、自宅が豪華な洋館に変わり10人の美人メイドたちに「お目覚めですか、ご主人様?」と一斉に迎えられる。いつの間にか彼らの“専属主人”になっていた健太は戸惑う間もなく、朝から晩までメイドたちの超至れり尽くせりな奉仕を受け始める。
クラスのマドンナがなぜか俺のメイドになっていた件について
沢田美
恋愛
名家の御曹司として何不自由ない生活を送りながらも、内気で陰気な性格のせいで孤独に生きてきた裕貴真一郎(ゆうき しんいちろう)。
かつてのいじめが原因で、彼は1年間も学校から遠ざかっていた。
しかし、久しぶりに登校したその日――彼は運命の出会いを果たす。
現れたのは、まるで絵から飛び出してきたかのような美少女。
その瞳にはどこかミステリアスな輝きが宿り、真一郎の心をかき乱していく。
「今日から私、あなたのメイドになります!」
なんと彼女は、突然メイドとして彼の家で働くことに!?
謎めいた美少女と陰キャ御曹司の、予測不能な主従ラブコメが幕を開ける!
カクヨム、小説家になろうの方でも連載しています!
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
静かに過ごしたい冬馬君が学園のマドンナに好かれてしまった件について
おとら@ 書籍発売中
青春
この物語は、とある理由から目立ちたくないぼっちの少年の成長物語である
そんなある日、少年は不良に絡まれている女子を助けてしまったが……。
なんと、彼女は学園のマドンナだった……!
こうして平穏に過ごしたい少年の生活は一変することになる。
彼女を避けていたが、度々遭遇してしまう。
そんな中、少年は次第に彼女に惹かれていく……。
そして助けられた少女もまた……。
二人の青春、そして成長物語をご覧ください。
※中盤から甘々にご注意を。
※性描写ありは保険です。
他サイトにも掲載しております。
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる