インミシべルな玩具〜暗殺者として育てられた俺が普通の高校生に〜

涼月 風

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第73話 土曜日の夜は思惑

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音楽番組の生出演を控えていた『FG5』のメンバーは、楽屋で出演準備をしていた。

「ねえ、美春さんまだ来ないの?プロデューサーが話しあるって言ってるのに」

リリカはイライラしながら、専属のメイクさんに化粧をしてもらってるメンバーを見ながらそう言った。

「今、こっちに向かってるってさ。あ、サブちゃんも来るって書いてある~~」

アヤカが嬉しそうにスマホを見ながら返答した。

「そ、それなら仕方ないわね」

リリカも何だか嬉しそうだ。

「サブ郎来るんだ。仕事する気になったのかな?」

ユキナは、特に感情を表さず会話の流れでそう呟いた。

「サブキはできる人間、頭もいい」
「そうそう、私もサブ君に学校の勉強でお世話になってるし」

和輝の事をサブキと勝手に呼ぶのは関内ミミカ。
それに応えてサブ君と呼ぶのは柚木カレンだ。
2人は学校の勉強でわからないことがあると、直ぐに和輝に連絡を入れてる。
和輝は、2人の個人教師をしてるようなものだ。

「ミミカもカレンも自分の勉強は1人でちゃんとやらないとダメだよ」

リリカは思ってた以上にカズキが他のメンバーとやりとしてるのを知って面白くないようだ。

「リリカちゃんだって、この間の課題カズキが手伝ってくれたんだあ~~って喜んでたじゃない」

揚げ足をとるアヤカにリリカは慌てている。

「そ、それは仕方なくなの、カズキが手伝ってやるよって言うから。深い意味はないんだから」
「じゃあ、私、今度のオフにでもサブちゃんとデートしようかなぁ」
「だ、ダメよアヤカ!2人きりなんてダメに決まってるでしょう!」
「じゃあ、リリカちゃんも一緒に3人でサブちゃんとどこか遊びに行こうか?」
「それなら仕方ないわよね。カズキはサブなんだし私達メンバーに奉仕するのが当たり前なんだから」

アヤカはリリカに背を向けて『クックッ』と細い笑みを浮かべて笑っている。
どうやらリリカをからかって面白がっているようだ。

「そう言えばサブ郎、苺パフェのサブもしてるの?」
「美春ちゃんに強引にさせられたんじゃないの、いつものことだし」
「サブキには世話になってる。苺パフェは私達の妹分、応援しないといけない」
「じゃあ、今日は生だし、明日のこと、少し宣伝してあげようか」
「それがいいと思いま~~す」
「仕方ないわね」

リリカ達は、まだよくわかっていない。
自分達の発言がどんな影響を及ぼすのかを……





収録が終わった『FG5』のメンバー達は、契約してあるタクシーに乗せて家に帰った。
生番組中に苺パフェの宣伝もしてくれたらしい。
 
俺は、その後、雫姉から連絡を受けて、ロッポンギにあるお洒落なカフェバーに来ている。

カウンターに座る俺の隣には雫姉が色っぽい格好をしてカクテルを飲んでいた。

今回の調査は北キュウシュウで仕掛けたある人物がトウキョウに来てるので、その人物が会う相手の素性を知る為である。

雫姉は、たまに俺に寄りかかってはチラリと俺の顔をみる。

普段メイド姿しかしない雫姉が胸の開いた色っぽい姿で見るから、正直調査どころではない。

「こういう仕事は聡美姉がする方が多いと思うけど、聡美姉は別の仕事か何か?」

「カズキ様、私と一緒にいるのに他の女の話しをするなんて酷い方ですね」

「そういう意味ではないのだが……」

「もう、女の扱いに慣れてないですね。こういう時は『君と一緒の方が楽しいよ』と直ぐにフォローしないといけませんよ」

そんな気持ち悪いこと言う奴いるのか?

「え~と、雫姉には感謝しかない。俺がこうやって過ごせてるのは雫姉のおかげだ。雫姉、いつもありがとう」

「ズッキューン! カズキ様、ずるいですよ。『君と一緒の方が楽しい』とか気持ち悪いこと言うのかと思えば、こんな素敵な言葉を頂けるなんて、雫はもうどうなっても構いません」

ズッキューンって効果音、自分で言う人初めて見た。
それに、雫姉も気持ち悪いって思ってたんだあ、なら言わせるような事するな!

「そ、それより仕事しないとダメだろう」
「そうですね。これではお嬢様みたいにポンポコ狸になってしまいますね」
「ポンポコ狸って?」
「私がここに来る前、お嬢様の部屋を覗いたら、お腹を出して気持ちよさそうにグースカ寝てました。私は、その出てるお腹にお嬢様のご愛用のルージュで顔を描いてきたんですよ。これがその写真です」

確かに寝てる聡美姉のお腹に顔が描いてある。
おかめちゃんみたいだ。

「確かにポンポコ狸だな」
「そうでしょう。だから今度お嬢様が我儘言ったらこの写真を見せてポンポコ狸の名を襲名して差し上げようと思ってます」

うん、雫姉だけは怒らせないようにしよう……

そんな写真を見ているとターゲットの相手が来たようだ。
若い水商売の女性を1人連れて来ている。

「ほら、来ましたよ」
「誰だかわかる?」
「ええ、西音寺公彦。名家西音寺家の分家で現当主の三男です。現在、西音寺商事の役員をしています。あの男には勿体ない地位ですけどね」

歳は40過ぎに見える。
良い年をしてチャラそうな雰囲気を持つ男だ。

「そうか、あの男か……」

話してる内容は、口の動きを盗み見て把握した。
どうやら間違いなさそうだ。

「どうする?」
「どうしましょうか?腐れチンポ野郎ですが一応名家の方ですので少し根回しが必要になりますね」
「じゃあ、帰って要相談だな」
「それがいいでしょう」

その男は連れてきた女性に肩を回して手を胸の部分に当てていた。
見てるこっちが吐き気をもよおす。

クズは大人になってもクズのままなんだな……

俺の中にいる闇の部分は、そいつを殺せることが楽しくて仕方がないようだ。
時々、胸を締め付けてきやがる。

「カズキ様、名残惜しいですが、今夜はここまでです」

雫姉は俺の変化に気付いたのか、俺にもたれかかって上目使いでそう言った。

「わかった……」

俺と雫姉は、静かにその店を出て行くのだった。





~神崎陽奈~

「ただいまーー」

「おかえり、陽奈」

私は、初めてお友達の家にお泊りした。
そのお友達は樫藤穂乃果ちゃん。
とっても可愛くてお人形さんのような黒髪の女の子。

「楽しかったみたいだな。それで東藤は一緒だったのか?」
「東藤君、チョコって顔出して直ぐに妹さんとどこかに行っちゃたんだあ」
「そ、そうか、妹がいるのか、なら、安心だな」
「え、お兄ちゃん、それどういう意味?」
「妹がいる奴なら兄貴の気持ちもわかると言いたいんだよ」
「ふ~~ん、変なお兄ちゃん」

私は、手を洗いうがいをして自室で着替える。
家にいる時は、ラフな格好だ。

リビングを通り過ぎて冷蔵庫から麦茶を取り出す。

「あ、陽奈。悪いが俺にもくれ」

リビングでスマホで誰かとやりとりしてるお兄ちゃん。
もしかして、彼女ができたのかも……

「なに真剣にスマホを見てるの?」
「ああ、明日の仕事の件だ。撮影場所がスタジオから変更になった。トウキョウドームの近くらしい」
「そうなんだあ、あ、それってもしかしてラクーダってとこの近く?」
「そうだけど、それがどうしたんだ?」

「東藤君、いや、あのね、穂乃果ちゃんの妹が在籍してる『苺パフェ8』のミニ・コンサートがそこのガーデンステージでする予定なんだ」

「そうか、時間が有れば見に行けると思うぞ。今回のテーマは秋のコーディネイト。秋の行楽シーズンを迎えて遊びに行くカップルの衣装らしい」

「秋物か~~明日、暑くなるのかな?」

「良い天気らしいぞ。それで、撮影場所が変更になったらしい。近くに公園も遊園地もある。お出かけカップル衣装の撮影にはもってこいだろう」

「そうだけど、汗かきそうで嫌だな」

「館内にスパがあるってさ。撮影が終われば寄ってもいいぞ」

「行きたいけど、1人じゃ怖いよ」

「う~~ん、そう言っても男とは別だろうし俺が側に着いてくわけにもいかないし……」

「そうだ、穂乃果ちゃん、誘ってみるよ。妹のコンサート見たいだろうし、いい案でしょう?」

「ああ、相手が迷惑でなかったらな」

そうだ。穂乃果ちゃんを誘えば、東藤君がいてもお兄ちゃんは変に思わない。
東藤君は苺パフェの方にいるから、時間ができたら会いに行けるし。

うふふふ、楽しみ……

私、こんな幸せでいいのかな?
最近、楽しいことばかりで、逆に不安になるよ。

早く明日にならないかなぁ……

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