君がいい、どうしても

たがわリウ

文字の大きさ
10 / 20

少し経てば平気

しおりを挟む
 時々近くの会話に参加しながらグラスを仰ぎ、箸をすすめる。店員が忙しなく行き来する店内は騒々しさが溢れていた。

「こっち飲み物追加おねがいしまーす」
「あ、こっちも」

 店員を呼ぶ声をかき消すように笑い声が響く。アルコールはないはずなのに皆いつもよりテンションが高かった。
 普段通り友達とふざけ合う男子、何かの話題で盛り上がる女子、あからさまに気になる相手にアピールする人達。こういうイベントは気になる相手と近づく絶好の機会だ。
 モテたいと言っていたのに、俺は何故か自分から誰かに話しかける気になれなかった。今思いっきり楽しむというより、これからの楽しみを待っている。以前にも何度か参加した食事会だが、今日は妙に浮ついていて、少しの緊張を感じていた。

「ねぇ日高、広尾くんと仲良いよね?」
「え、あー、まぁ」

 トイレに行くからといなくなった男子に代わり、派手な女子が向かいの席に座る。いつも一緒にいるメンバーではないが数回話したことがあった。

「今日、広尾くん来るって聞いたけど、ほんと?」
「俺もそう聞いてる」
「え、でも来てないじゃん」
「だな」
「だなって……なんか聞いてないの? あたし今日バイト休んできたんだけど」

 うきうきしていた様子から一転、女子の声は低くなる。こうやっていない広尾のことを聞かれたのは初めてじゃなかった。その度に俺は「なにも聞いてない」と返している。
 今回も同じように返そうとした時、店の入口付近が騒がしくなった。自然と視線を向けると、まさに今話題にしていた人物が店内を見渡している。
 目立っている広尾を眺めていると不意に目が合う。俺の方へ真っ直ぐ近づいてきた。

「ごめん、ここ入れてくれる?」
「どぞどぞ。広尾くん来てくれて嬉しい」
「ほんとに来たんか……」

 話していた女子が横にずれ、俺の向かいに広尾は座る。店内中の視線がここに集まっていた。広尾が来ることを知らない人もいたのか「なんで広尾?」という声も聞こえる。

「広尾くん何飲むー?」
「ウーロン茶。後で自分で注文する」
「えー、あたしも頼むから一緒に言うよ?」

 あきらかにテンションが上がった女子は触れそうなほど体を寄せる。広尾は少し眉を寄せ俯いた。女子の相手が面倒だからかと思ったが、何か様子がいつもと違う。ざわりと嫌な予感がした。

「広尾、調子悪い?」
「え、そーなん?」
「……少し。昨日遅番のあと課題やってたから寝不足で」
「え、大丈夫かよ」

 体調を崩した広尾を見るのは初めてだった。顔色が悪く、とても少し不調なだけには見えない。

「大丈夫? あたし濡れたおしぼりもらってくる」
「いや、少し経てば平気だと思う」
「いーからいーから」

 こういったことに慣れているのか女子はすぐに動いた。座っててと言うように肩を軽く叩き立ち上がる。広尾と女子のやり取りを見て、俺は何故か焦燥感にかられた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

ヤンデレ執着系イケメンのターゲットな訳ですが

街の頑張り屋さん
BL
執着系イケメンのターゲットな僕がなんとか逃げようとするも逃げられない そんなお話です

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

この身を滅ぼすほど、狂った執着を君に。─隻眼の幼馴染が、突然別人に成り代わったみたいに、おれを溺愛し始めた─

髙槻 壬黎
BL
【誰よりも優しい君の、その特別になりたかった。あいつにだけ向けるその瞳に、俺は映りたかったんだ───】 村を魔物に襲われ、命からがら逃げ出した少年・フレデリクを救ったのは、美しくも飄々とした貴族の少年──テオドア・ユートリスだった。 それから十二年。いろいろありつつも立派に育ったフレデリクは、訳あって左目を負傷したテオドアと共に、ギルドで依頼をこなす剣士として穏やかな生活を送っていた。 しかしそんな二人の関係は、ある日を境に、突然歪み始めてしまう。 数日間の外出から戻ったテオドアは、以前とどこか様子が違って見えた。 表情も、言葉遣いも、距離感さえも──まるで「別人」のように。 戸惑うフレデリクだったが、そんな彼を見つめるテオドアの瞳には、何故か歪んだ愛情が滲んでいた。 「──好きだ。フレデリクのことが、どうしようもなく、好きなんだ……」 震える声に、熱く抱きしめてくる体。 テオドアにずっと片思いしていたフレデリクは、彼と付き合うことになるが、不気味な違和感は拭いきれないまま。 このテオドアは、本当に自分がよく知る"テオドア"なのだろうか。 フレデリクは彼の変化に違和感を持つ内に、閉ざしていた"あの男"との記憶を、嫌でも思い出すことになっていく── 三角関係×ヤンデレ×ファンタジー

美形な幼馴染のヤンデレ過ぎる執着愛

月夜の晩に
BL
愛が過ぎてヤンデレになった攻めくんの話。 ※ホラーです

花香る人

佐治尚実
BL
平凡な高校生のユイトは、なぜか美形ハイスペックの同学年のカイと親友であった。 いつも自分のことを気に掛けてくれるカイは、とても美しく優しい。 自分のような取り柄もない人間はカイに不釣り合いだ、とユイトは内心悩んでいた。 ある高校二年の冬、二人は図書館で過ごしていた。毎日カイが聞いてくる問いに、ユイトはその日初めて嘘を吐いた。 もしも親友が主人公に思いを寄せてたら ユイト 平凡、大人しい カイ 美形、変態、裏表激しい 今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。

その執着、愛ですか?~追い詰めたのは俺かお前か~

ちろる
BL
白鳳出版に勤める風間伊吹(かざまいぶき)は 付き合って一年三ヶ月になる恋人、佐伯真白(さえきましろ)の 徐々に見えてきた異常な執着心に倦怠感を抱いていた。 なんとか元の真白に戻って欲しいと願うが──。 ヤンデレ先輩×ノンケ後輩。 表紙画はミカスケ様のフリーイラストを 拝借させて頂いています。

俺の家に盗聴器が仕掛けられた

りこ
BL
家に帰ったら何か違和感。洗濯物が取り込まれている。だれ?親に聞いたが親ではない。 ──これはもしかして、俺にヤンデレストーカーが!?と興奮した秋は親友の雪に連絡をした。 俺の経験(漫画)ではこれはもう盗聴器とか仕掛けられてんのよ。というから調べると本当にあった。

囲いの中で

すずかけあおい
BL
幼馴染の衛介の作った囲いの中で生きてきた尚紀にとっては、衛介の言うことが普通だった。それは成長して大学生になってもそのままで―――。 〔攻め〕椎名 衛介(しいな えいすけ)20歳 大学生 〔受け〕小井 尚紀(こい なおき)19歳→20歳 大学生 外部サイトでも同作品を投稿しています。

処理中です...