summer summer!

たがわリウ

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本編

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「成海くん、こっち向いて」

真剣で懇願するような声だった。俺はゆっくりと体の向きを変える。
いつもとは違う明の声に、どうしても悪い方に考えてしまった。
体を強ばらせたまま、明の目を見る。真剣な目は、直ぐに何かを懐かしむように細められた。

「俺が今住んでるとこは、渋滞が多くて、ビーチが有名なんだ」

予想していたものとは違う答えに、一瞬ぽかんとする。そんな俺を気にすることもなく、明は言葉を続けた。

「朝はクラクションがそこかしこで鳴ってて、ビーチにはサーファーと観光客が集まるんだ。音楽を流して自由に踊ってる人もいる」
「……渋滞は嫌だけど、そういうの聞くと海外って感じがするな」

明が教えてくれる景色は、俺の中にもすんなりと入ってきた。細められた明の目を見ながら、俺も同じ景色を見られているのだろうかと思う。
波の音と乾いた空気に包まれているような気がした。

「撮影で移動の時とか、進まない車の中でいつも成海くんを思うんだ。今何してるんだろう、どんな風に成長したのかな、俺のこと覚えてるかなって。賑わうビーチを見て、海の向こうにいる成海くんを想像してた。日本がどの方角かなんて知らないのに」
「……」

遠くを見ていた目が俺を見る。強く何かを訴える瞳にハッとした。シャツを無意識に握りしめる。

「この一ヶ月で成海くんに意識してもらおうって、必死だったよ。俺は成海くんと分かち合う時間を、この夏だけで終わらせる気は無かったから。……ねぇ成海くん、あの日言えなかったこと、いま伝えてもいい?」

あの日。離れ離れになることに怯えることしかできなかった夏。
今の俺たちなら、また離れ離れになっても繋がったままでいられる。明と再会してまだあまり時間が経っていないのに、何故かそんな確信があった。
何を言われるのかほぼ想像はついている。けれど期待と不安で喉が閉まった。俺はゆっくりと頷く。

「こんなふうに寝たのなんて成海くん以外いないよ。俺が触りたいと思うのも、触って欲しいと思うのも、成海くんだけだから。家族のようにいつも幸せを願ってるし、親友のように心を一緒にしたい。でも家族や親友以上に、成海くんの近くにいたい。こうやって我儘な気持ちがどんどん溢れてくるんだ。成海くんだけが俺の特別だよ。大好きなんだ、成海くん。成海くんの特別に、俺も選んでもらいたい」

何故か胸が切なさで締め付けられて、視界は滲む。こんなにも言葉を尽くして気持ちを伝えてくれる明。そんな明に、俺は何を返せるだろう。
熱い息を吐きながら、大きな手を両手で包んだ。何を言えばいいか分からないけど、この想いが伝わるよう願う。

「俺も、明のことが好きだよ。大好きだ。恋というものを知らずにいた頃も、離れていた数年間も、再会した今も、ずっと好きだった。おまえの我儘と同じように、俺のこの気持ちもどんどん強く溢れてくるんだ」

こんなにも胸が熱くなったのは初めてだった。好きな人と同じ気持ちでいる。それが大きな奇跡に思えて、胸がつかえる。
緊張を滲ませていた明の顔が、みるみるうちに喜びで綻んだ。
背中にまわった腕で引き寄せられ、額と額がくっつく。そういえば昔も、よくこうして寝ていたのを思い出した。

「……嬉しい」
「うん」

幸福感を堪能するかのように、俺たちはしばらくじっとしていた。
至近距離で視線を合わせるのが恥ずかしくて目を伏せていた俺の頬に、明は触れる。声は発していないのに呼ばれた気がして、視線を持ち上げた。
愛しさを伝えてくる熱っぽい瞳。ゆっくりと近づいてくる明の顔。
あ、そうか、と俺は急いで目を閉じる。

「ん」

ふにっと押し付けられた唇は、しばらく動かない。
明とキスをしている。それを認識した瞬間、嬉しさと緊張と切なさに包まれた。体すべてが火照る。
頭を真っ白にしているうちに、押し付けあっていた唇は離れた。

「ねぇ、成海くん……あの日の俺たちには知りえなかったこと、俺は成海くんとしたい。成海くんは、どう?」

明が何を言っているのかは、すぐにわかった。けれどキスだけでいっぱいいっぱいの俺は、数秒黙り込む。
そんな俺に明は少しだけ体を引いた。考えるよりも先に、俺は明の手を握る。

「わるい、嫌とかじゃないんだ。ただ、いっぱいいっぱいで……でも、俺も同じ気持ちだ」

手を掴まれた明は驚きを浮かべた後、眉を下げて笑った。その幸せそうな表情はモデルのAKIとしては見せたことがないもので、心臓が締め付けられる。
こんな顔をさせたのが自分だと思うと不思議だった。
そんなことを考えているうちに、体を起こした明は俺に跨る。また表情が変わり、今度は欲望を隠さない目が俺に向けられた。
その瞳に捕らわれたとき、もう逃げることはできないと悟る。ゾクッと何かが背中を駆け抜けた。

「成海くんを俺で満たしたい。成海くんでいっぱい満たされたい」

荒々しくシャツを脱いだ明。ムワッと広がった香水の匂いが、俺の動きを止めた。
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