Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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Thunder

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正直に言ってしまえば、魁は道雪のことを『ナメていた』。

しかしいざ立ち会ってみればやはり有間家の現当主なのだということをあらためて実感させられる程の力が道雪にはあった。

先程までの余裕や侮蔑の混じった笑みは捨て、魁は道雪に対して本気を出すことにした。魁は纏っていた魔力を影のようなものから形状かたちを変え、まさにいま対峙している道雪と同じように稲妻を纏っていた。ひとつ違う点といえば道雪は青白い稲妻を纏っているのに対し、魁は黒く禍々しい稲妻を纏っているということだ。

まず先に仕掛けたのは道雪だった、地面を蹴り魁の横から雷を纏った拳を突き出す。が、魁はこれを躱しすぐさま道雪に向かって黒雷を纏った脚で回し蹴りを繰り出す。だがそこに道雪の姿はなく、既に元の場所へと戻っていた。

「なるほど。『動きが速い』というより、『見切りが早い』というべきか。」

「僕は千尋ほど建御雷を使いこなせないのでね、仕掛けたら退く。ヒットアンドアウェイってやつさ。」

いま目の前で繰り広げられた二人のやり取りを見て千尋はただ目を見張っていた、普段は戦いを好まず穏やかである父親が自分よりも速く動き、魁と互角に渡り合っているのだから。

「しかし、そのような戦法では日が暮れてしまうな。私は構わぬが人間の貴様はどうかな?」

「心配は無用さ、僕には切り札があるんだ。君たちのような者を相手にする時のための切り札がね。」

そう言うと道雪は右手に建御雷の雷を集中させる。

「よう見ておれ、千尋。あれぞあやつの戦法を最大限に活かすことのできる道雪の奥の手、『雷切らいきり』だ。」

「雷切・・・。」

道雪は右手で手刀を構え、建御雷の雷は手刀に纏うように刃状へと形状かたちを変える。

「雷切、『雷で切る』とは随分と単純なことだ。脆弱な人間にはお似合いだが。」

「あいにく、雷切るじゃないんだ。僕のこの技はね、んだよ。」

道雪の言葉を聞き、魁は『ふっ』と声を出してほくそ笑んだ。

「『雷を切った』?よくもまあそんなハッタリを、生真面目なアナタにしては面白い冗談だ。」

「そいつはどうも。ハッタリかどうか、すぐにわかるさ。」

道雪は雷を纏った右手を構える、それに対し魁は右手を前に出し魔力を集中させる。『雷切とは接近戦の技である。』こう見た魁は魔力を鉄砲弾のように撃ちだし、道雪を近寄らせない戦法をとることにした。

実際、魁の見解は当たっている。道雪の雷切は建御雷の雷を纏った手刀で切る、ただそれだけである。しかし万歳の言った通り、この技は道雪の戦法でこそ活きる技なのだ。

魁が魔力の弾を撃つと同時に道雪は地面を蹴り、魔力の弾をギリギリではなく余裕をもって避けながら魁に近づく。魁は驚いた、道雪が接近してきたことにではなく魔力の弾を避けるために大回りな動きをしたことにだ。

千尋と動きが違いすぎる、千尋であれば多少かすり傷を負ってでも魔力の弾の合間をかいくぐって最短距離で接近してくるだろう。だがいま目の前に接近してきた男、千尋の父親である道雪はかすり傷すら負わないように接近してきたのだ。

道雪は雷切を纏った手刀を振りかざし、魁に向けて思い切り振り下ろした。手刀の動きに追従して雷が天から落ち、魁を射抜く。
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