Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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Agonize

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外はすっかり日が暮れ、千歳たちは帰宅しようと着替えたあとロビーで待ち合わせをしていた。先に着替えが済んだ千歳がロビーに着くと若葉の姉がマッサージチェアに座っていた。

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛・・・!」

若葉の姉はすごく美人なのだがその美貌に似つかわしくない低い声を漏らしていた、千歳の存在に気づいた若葉の姉は千歳に声をかける。

「あ゛ぁ゛千歳はん、もう着替え終わったん?うちは妹着替え終わってるの待ってんねん。」


そう言いながら若葉の姉がリモコンのボタンを押すとマッサージチェアの駆動音が止み、立ち上がった若葉の姉が伸びをする。身体のあちこちから『ポキポキ』と骨の鳴る音が聞こえ若葉の姉は気持ちよさそうな声をあげる。

それから若葉の姉は自販機でコーヒー牛乳を二本買うとそのうちの一本を千歳に渡しベンチに座る、そして隣の空いてるところを手でポンポンと叩き座るように促す。

コーヒー牛乳を受け取った千歳が素直に若葉の姉の隣に座ると、若葉の姉はコーヒー牛乳のビンの蓋を開け一口飲んだあと話し始める。

「そういうたら自己紹介がまだやったね。うちはたちばな 日輪ひのわ、どうぞよろしゅうね千歳はん。」

「よろしくお願いします、えーっと・・・」

なんと呼べばいいか少し迷う千歳にニコリと微笑みながら日輪がすり寄り耳打ちをする。

「『日輪』、でええよ。」

「日輪・・・さん。」

突然耳元で囁かれ戸惑う千歳、日輪はその様子を面白がり『ふふふ』と笑っている。

「いきなりこんなん聞くのもなんやけど、妹のことどう思てるん?」

「若葉ちゃんは・・・可愛い後輩です、俺の事を慕ってくれてますし。妹のようにも思っています、なんでだか他人の気がしなくて。」

千歳の言葉に日輪は微笑んだまま『ふーん』と声をあげまた千歳の耳元へ顔を近づける。

「せやったら、妹のことこれからもよろしゅうね。千歳はん。」

「は、はい。ていうかあの、日輪さん近いです・・・」

千歳の反応に日輪は思わず千歳を抱きしめようとしてくるが、若葉たちの声が聞こえてきたので日輪は残念そうに千歳と離れる。

ーーーーー
ーーー


家の近くのバス停まで帰ってきた千歳たちは各々の帰路に着いた、家の前で紗奈と別れ千歳が妹たちと帰宅すると自分の部屋に入りベッドに寝転がる。

そしてプールで紗奈と過ごした時間を思い出していた、特に印象に残っているのはビーチバレーの後に紗奈と一緒にアイスクリームの店に行った時のこと。ニコニコと満面の笑みを浮かべながら腕を組んできた紗奈のが千歳の肘に・・・

千歳は思わずバッと起き上がり邪念を払うように両手を頭の上でブンブンと振る。そして再びベッドへ寝転がるが忘れられるはずもなくやはり思い出してしまう。

肘でとはいえ紗奈の肌に触れられたことを幸運に思いながら、千歳は悶々とした年頃の男子なら誰でもなるであろう複雑な感情を抱いていた。

それに加え帰り際のロビーでの日輪と話していたときの日輪の距離感の近さにも戸惑わされた、若葉の距離感の近さは姉に似たのだと千歳は思った。
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