42 / 93
Awakening
しおりを挟む
プールに行った日の翌朝、千歳が目を覚まし時計を見る。いつもなら二度寝をするような時間帯だが眠気がすっかり覚めてしまった千歳はベッドから立ち上がり窓の前のカーテンを開ける。
ほんのりと薄暗く日が昇り始めたばかりの街の景色を眺めているとある一点の空間が歪んでいるように見えた千歳は左眼の霊写しの眼を開きその空間を見る、すると以前あの公園で朧が張っていた人避けの結界と同じようなものがあった。妙な胸騒ぎがした千歳は布に包まれた木刀を手に取ると家族を起こさないようにそっと、音を立てないように玄関から外に出ると影を纏い結界の方へと駆け出す。
ーーーーー
ーーー
ー
千歳が結界の場所へ着くとそこはまたあの公園であった、千歳は慎重に結界の中へ入ると周りを見渡す。結界の中は特に変わった様子がないように見えたが公園の中心部、噴水広場に大きな魔力の影が複数いるのを視認した千歳は噴水広場へと急いだ。
噴水広場にて千歳を待ち受けていたのは朧と魁の他に3つの影、そして天翁であった。朧は千歳の姿を見るとすぐさま一礼し、魁はそっぽを向いて舌打ちをした。
『よく来たな、長門千歳。』
「天翁・・・」
まず口を開いたのは天翁であった、以前に鬼恐山で見た時と同じように霊写しでも見破れぬほどの濃度の高い魔力の霧で身を隠していた。
『そう身構えることは無い、今日はお前と話をしようとしただけだ。お前にわかりやすいように結界も張ってな。』
話というのはおそらく天翁たちの同志になれということだろう、しかし朧に誘われた時に断ったことを天翁が知らないはずが無いと千歳は不思議に思った。
『長門千歳、いま一度聞く。我らの同志にならないか?』
「そちらの朧さんにも言ったとおり、親友の家をめちゃくちゃにしようとしたアンタらの仲間になるつもりはない。」
千歳の言葉を聞き天翁は朧に声をかけると、朧が一瞬消えてまた現れる。なにやら人を一人抱えている、その人の顔に千歳は見覚えがあった。
「若葉ちゃん!」
朧に抱えられているのは気を失っている若葉であった。
『今朝、走っているところを見かけてな。この娘にお前似たような魔力を感じたのだが、これはお前の妹か?』
おそらく千歳と親しいということを知られ、自主的な朝練でランニングをしているところを天翁たちに捕らえられたのだろう。
「・・・朧、あまりそれを俺に近づけないでくれないか?汗をかいていて人間くさくてかなわん。」
「女性に対してそういうことを言うものでは無いですよ魁。」
朧は大事そうにお嬢様だっこで抱えているが、魁は若葉に嫌悪感を示し少し遠ざかる。
『我らの同志となるのであればこの娘は解放し、元の生活へと戻そう。陳腐な手段ではあるが、長門の人間であるお前にはこの手法が一番手っ取り早いと思ってな。』
「・・・くそ。」
実際、天翁の言うことは合っている。人一倍身内思いの千歳にはこの手が一番揺らぐのだ。そして千歳には若葉を取り戻してこの状況から脱出する手段が思いつかない。
「おい千歳、まさかそいつらについていくってことはねぇよな?」
突如、声と共に千歳の背後から蒼白い稲妻と剣が一本、朧めがけて飛んでいく。朧は自分の首めがけて飛んでくる剣を片手で弾いて防ぐが、その隙に蒼白い稲妻が朧の懐に入り込み若葉を連れ去っていく。
稲妻は千歳に若葉を手渡すと静まり千尋が姿を現す、そして千晶や千悟と共に千歳と若葉を守るように天翁たちの前に並び立つ。
「御前ら、どうして・・・」
「こんな結界がこの公園にあれば俺らは嫌な予感しかしないさ。ったく、俺らに黙って1人で来やがって・・・」
千尋たちという思わぬ千歳の援軍に天翁は悠々としているが、朧や魁たちは臨戦態勢に入ったのか、纏っている霧を突き抜ける程の強い魔力を視認できる。
千歳は自分の腕の中でぐったりしている若葉の頬を軽くペチペチ叩く、すると若葉の両眼がゆっくりと開き千歳は一瞬安心する。
『・・・喧しいな。』
若葉の口から放たれる声には人間離れした威圧感があり、千歳は普段なら想像もしない若葉の冷たい眼差しと纏っている禍々しい影に怖気付く。
『やはりそうであったか・・・同志たちよ、構えを解き頭を垂れよ。我らが長であらせられる伊邪奈美命がお目覚めになられた。』
ほんのりと薄暗く日が昇り始めたばかりの街の景色を眺めているとある一点の空間が歪んでいるように見えた千歳は左眼の霊写しの眼を開きその空間を見る、すると以前あの公園で朧が張っていた人避けの結界と同じようなものがあった。妙な胸騒ぎがした千歳は布に包まれた木刀を手に取ると家族を起こさないようにそっと、音を立てないように玄関から外に出ると影を纏い結界の方へと駆け出す。
ーーーーー
ーーー
ー
千歳が結界の場所へ着くとそこはまたあの公園であった、千歳は慎重に結界の中へ入ると周りを見渡す。結界の中は特に変わった様子がないように見えたが公園の中心部、噴水広場に大きな魔力の影が複数いるのを視認した千歳は噴水広場へと急いだ。
噴水広場にて千歳を待ち受けていたのは朧と魁の他に3つの影、そして天翁であった。朧は千歳の姿を見るとすぐさま一礼し、魁はそっぽを向いて舌打ちをした。
『よく来たな、長門千歳。』
「天翁・・・」
まず口を開いたのは天翁であった、以前に鬼恐山で見た時と同じように霊写しでも見破れぬほどの濃度の高い魔力の霧で身を隠していた。
『そう身構えることは無い、今日はお前と話をしようとしただけだ。お前にわかりやすいように結界も張ってな。』
話というのはおそらく天翁たちの同志になれということだろう、しかし朧に誘われた時に断ったことを天翁が知らないはずが無いと千歳は不思議に思った。
『長門千歳、いま一度聞く。我らの同志にならないか?』
「そちらの朧さんにも言ったとおり、親友の家をめちゃくちゃにしようとしたアンタらの仲間になるつもりはない。」
千歳の言葉を聞き天翁は朧に声をかけると、朧が一瞬消えてまた現れる。なにやら人を一人抱えている、その人の顔に千歳は見覚えがあった。
「若葉ちゃん!」
朧に抱えられているのは気を失っている若葉であった。
『今朝、走っているところを見かけてな。この娘にお前似たような魔力を感じたのだが、これはお前の妹か?』
おそらく千歳と親しいということを知られ、自主的な朝練でランニングをしているところを天翁たちに捕らえられたのだろう。
「・・・朧、あまりそれを俺に近づけないでくれないか?汗をかいていて人間くさくてかなわん。」
「女性に対してそういうことを言うものでは無いですよ魁。」
朧は大事そうにお嬢様だっこで抱えているが、魁は若葉に嫌悪感を示し少し遠ざかる。
『我らの同志となるのであればこの娘は解放し、元の生活へと戻そう。陳腐な手段ではあるが、長門の人間であるお前にはこの手法が一番手っ取り早いと思ってな。』
「・・・くそ。」
実際、天翁の言うことは合っている。人一倍身内思いの千歳にはこの手が一番揺らぐのだ。そして千歳には若葉を取り戻してこの状況から脱出する手段が思いつかない。
「おい千歳、まさかそいつらについていくってことはねぇよな?」
突如、声と共に千歳の背後から蒼白い稲妻と剣が一本、朧めがけて飛んでいく。朧は自分の首めがけて飛んでくる剣を片手で弾いて防ぐが、その隙に蒼白い稲妻が朧の懐に入り込み若葉を連れ去っていく。
稲妻は千歳に若葉を手渡すと静まり千尋が姿を現す、そして千晶や千悟と共に千歳と若葉を守るように天翁たちの前に並び立つ。
「御前ら、どうして・・・」
「こんな結界がこの公園にあれば俺らは嫌な予感しかしないさ。ったく、俺らに黙って1人で来やがって・・・」
千尋たちという思わぬ千歳の援軍に天翁は悠々としているが、朧や魁たちは臨戦態勢に入ったのか、纏っている霧を突き抜ける程の強い魔力を視認できる。
千歳は自分の腕の中でぐったりしている若葉の頬を軽くペチペチ叩く、すると若葉の両眼がゆっくりと開き千歳は一瞬安心する。
『・・・喧しいな。』
若葉の口から放たれる声には人間離れした威圧感があり、千歳は普段なら想像もしない若葉の冷たい眼差しと纏っている禍々しい影に怖気付く。
『やはりそうであったか・・・同志たちよ、構えを解き頭を垂れよ。我らが長であらせられる伊邪奈美命がお目覚めになられた。』
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
覚悟は良いですか、お父様? ―虐げられた娘はお家乗っ取りを企んだ婿の父とその愛人の娘である異母妹をまとめて追い出す―
Erin
恋愛
【完結済・全3話】伯爵令嬢のカメリアは母が死んだ直後に、父が屋敷に連れ込んだ愛人とその子に虐げられていた。その挙句、カメリアが十六歳の成人後に継ぐ予定の伯爵家から追い出し、伯爵家の血を一滴も引かない異母妹に継がせると言い出す。後を継がないカメリアには嗜虐趣味のある男に嫁がられることになった。絶対に父たちの言いなりになりたくないカメリアは家を出て復讐することにした。7/6に最終話投稿予定。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
Chivalry - 異国のサムライ達 -
稲田シンタロウ(SAN値ぜろ!)
ファンタジー
シヴァリー(Chivalry)、それは主に騎士道を指し、時に武士道としても使われる言葉である。騎士道と武士道、両者はどこか似ている。強い精神をその根底に感じる。だが、士道は魔法使いが支配する世界でも通用するのだろうか?
これは魔法というものが絶対的な価値を持つ理不尽な世界で、士道を歩んだ者達の物語であり、その中でもアランという男の生き様に主眼を置いた大器晩成なる物語である。(他サイトとの重複投稿です。また、画像は全て配布サイトの規約に従って使用しています)
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる