Starlog ー星の記憶ー

八城七夜

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Awakening

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プールに行った日の翌朝、千歳ちとせが目を覚まし時計を見る。いつもなら二度寝をするような時間帯だが眠気がすっかり覚めてしまった千歳はベッドから立ち上がり窓の前のカーテンを開ける。

ほんのりと薄暗く日が昇り始めたばかりの街の景色を眺めているとある一点の空間が歪んでいるように見えた千歳は左眼の霊写たまうつしの眼を開きその空間を見る、すると以前おぼろが張っていた人避けの結界と同じようなものがあった。妙な胸騒ぎがした千歳は布に包まれた木刀を手に取ると家族を起こさないようにそっと、音を立てないように玄関から外に出ると影を纏い結界の方へと駆け出す。

ーーーーー
ーーー


千歳が結界の場所へ着くとそこはまたあの公園であった、千歳は慎重に結界の中へ入ると周りを見渡す。結界の中は特に変わった様子がないように見えたが公園の中心部、噴水広場に大きな魔力の影が複数いるのを視認した千歳は噴水広場へと急いだ。

噴水広場にて千歳を待ち受けていたのは朧とかいの他に3つの影、そして天翁てんおうであった。朧は千歳の姿を見るとすぐさま一礼し、魁はそっぽを向いて舌打ちをした。

『よく来たな、長門千歳。』

「天翁・・・」

まず口を開いたのは天翁であった、以前に鬼恐山おにおそれざんで見た時と同じように霊写しでも見破れぬほどの濃度の高い魔力の霧で身を隠していた。

『そう身構えることは無い、今日はお前とをしようとしただけだ。お前にわかりやすいように結界も張ってな。』

話というのはおそらく天翁たちの同志になれということだろう、しかし朧に誘われた時に断ったことを天翁が知らないはずが無いと千歳は不思議に思った。

『長門千歳、いま一度聞く。我らの同志にならないか?』

「そちらの朧さんにも言ったとおり、親友の家をめちゃくちゃにしようとしたアンタらの仲間になるつもりはない。」

千歳の言葉を聞き天翁は朧に声をかけると、朧が一瞬消えてまた現れる。なにやら人を一人抱えている、その人の顔に千歳は見覚えがあった。

「若葉ちゃん!」

朧に抱えられているのは気を失っている若葉わかばであった。

『今朝、走っているところを見かけてな。この娘にお前似たような魔力を感じたのだが、はお前の妹か?』

おそらく千歳と親しいということを知られ、自主的な朝練でランニングをしているところを天翁たちに捕らえられたのだろう。

「・・・朧、あまりを俺に近づけないでくれないか?汗をかいていて人間くさくてかなわん。」

「女性に対してそういうことを言うものでは無いですよ魁。」

朧は大事そうにお嬢様だっこで抱えているが、魁は若葉に嫌悪感を示し少し遠ざかる。

『我らの同志となるのであればこの娘は解放し、元の生活へと戻そう。陳腐ちんぷな手段ではあるが、長門の人間であるお前にはこの手法が一番手っ取り早いと思ってな。』

「・・・くそ。」

実際、天翁の言うことは合っている。人一倍身内思いの千歳にはこの手が一番揺らぐのだ。そして千歳には若葉を取り戻してこの状況から脱出する手段が思いつかない。

「おい千歳、まさかそいつらについていくってことはねぇよな?」

突如、声と共に千歳の背後から蒼白い稲妻と剣が一本、朧めがけて飛んでいく。朧は自分の首めがけて飛んでくる剣を片手で弾いて防ぐが、その隙に蒼白い稲妻が朧の懐に入り込み若葉を連れ去っていく。

稲妻は千歳に若葉を手渡すと静まり千尋ちひろが姿を現す、そして千晶ちあき千悟ちさとと共に千歳と若葉を守るように天翁たちの前に並び立つ。

御前おまえら、どうして・・・」

「こんな結界がこの公園にあれば俺らは嫌な予感しかしないさ。ったく、俺らに黙って1人で来やがって・・・」

千尋たちという思わぬ千歳の援軍に天翁は悠々としているが、朧や魁たちは臨戦態勢に入ったのか、纏っている霧を突き抜ける程の強い魔力を視認できる。

千歳は自分の腕の中でぐったりしている若葉の頬を軽くペチペチ叩く、すると若葉の両眼がゆっくりと開き千歳は一瞬安心する。

『・・・喧しいな。』

若葉の口から放たれる声には人間離れした威圧感があり、千歳は普段なら想像もしない若葉の冷たい眼差しと纏っている禍々しい影に怖気付く。


『やはりそうであったか・・・同志たちよ、構えを解きこうべを垂れよ。我らが長であらせられる伊邪奈美命イザナミノミコトがお目覚めになられた。』
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