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あれ以来、すこぶる魔力の調子が良い。
今回の期末テストの結果は満足の行くものだった。
「最近ヴィオラ様は魔法に磨きがかかってますわね!流石自習してるだけありますわ」
「そのことをあまりつっこまないであげてキャロル」
「い、いいんですよルーナ。ありがとう」
知っている。キャロルに悪意はない。
ヨズキの部屋には週に2回ほど通うようにしていた。
相変わらず主導権は向こうな上に鎖や縄に繋がれたり鞭を使われ始めたり、ちょっとずつエスカレートしていることは不満だがこうして結果が伴ってしまっているので文句は言えない。
「でも本当に、今のヴィオラ様ならキースにも負けませんよきっと」
「そうだと信じたいですね」
「来週ハロウィーンのパーティーがあるせいで決闘の機会がなくて残念ですわ」
キンドル魔法学園では毎年ハロウィーンにダンスパーティーが行われている。
そのため、その一週間前から怪我や事故が起きないように実技の授業は控えられていた。
「お二人はダンスのお相手は決まったのですか?」
そう聞くとキャロルはポッと顔をピンクに染め、ルーナも珍しく照れたように頬を掻いた。
「私は先日ひと学年下のエル様に誘われましたの」
「私もその、クラスの男子と…。
ヴィオラ様はお決まりになりました?」
「相変わらずですよ、アテもありません」
ヴィオラは毎年誰を誘うことも誘われることもなく、なんとなく雰囲気を楽しむだけだった。
「私たちにとって最後のパーティーですし、折角ですからお誘いになってみては?」
ルーナが優しい微笑みでそう言った。一瞬ヨズキが浮かんだがすぐに振り払う。
そもそも彼は教師だ。
「そうしたいのですが誘いたい相手が見つからないのです」
そう笑って誤魔化した。
その日の夕方、本当の自習のために自習室に行く。
今はテスト直後なのでヴィオラの貸しきりかと思ったが先客がいた。
「ヴィオラ、来ると思った」
キースだった。
「なにかご用?」
一瞥だけして「相手にする暇はないのよ」というアピールのために勉強道具を広げる。
「君、ダンスパーティーの相手はいるのかい?」
「貴方に関係あって?」
キースはヴィオラが勉強しようとしている机の上に座る。
「君を誘いたくってさ」
「はあ?」
「そう睨まないで。
ヴィオラに見合う男になりたくて俺は学年一位目指したんだぜ?」
「冗談でしょう?」
「本気だよ」
真剣な目で見つめてくるので思わずドキッとする。慌てて目を反らした。
「そ、そんなこと言われても困ります」
「困らないさ。毎年ひとりだし、今年も相手いないんだろ?」
煽っているわけではなく、それを願っているような言い方だった。
「…でも、」
「それとも魔力を上げるのを手伝ってくれてる相手と行く予定?」
「…!」
ヴィオラは変な汗をかきながら顔を真っ赤にする。
「不自然な魔力の上がり方だからね、察しがつくさ」
「あ、貴方もでしょう。
そちらの方をお誘いになったら?」
「訳アリでね、そうもいかないんだ。
それに本命は君だしね」
ヴィオラは頭の中はパニックになりながら急いで勉強道具を片付ける。
「からかわないで。失礼します」
部屋を飛び出すヴィオラに向かってキースは「返事待ってるよ」と言った。
今回の期末テストの結果は満足の行くものだった。
「最近ヴィオラ様は魔法に磨きがかかってますわね!流石自習してるだけありますわ」
「そのことをあまりつっこまないであげてキャロル」
「い、いいんですよルーナ。ありがとう」
知っている。キャロルに悪意はない。
ヨズキの部屋には週に2回ほど通うようにしていた。
相変わらず主導権は向こうな上に鎖や縄に繋がれたり鞭を使われ始めたり、ちょっとずつエスカレートしていることは不満だがこうして結果が伴ってしまっているので文句は言えない。
「でも本当に、今のヴィオラ様ならキースにも負けませんよきっと」
「そうだと信じたいですね」
「来週ハロウィーンのパーティーがあるせいで決闘の機会がなくて残念ですわ」
キンドル魔法学園では毎年ハロウィーンにダンスパーティーが行われている。
そのため、その一週間前から怪我や事故が起きないように実技の授業は控えられていた。
「お二人はダンスのお相手は決まったのですか?」
そう聞くとキャロルはポッと顔をピンクに染め、ルーナも珍しく照れたように頬を掻いた。
「私は先日ひと学年下のエル様に誘われましたの」
「私もその、クラスの男子と…。
ヴィオラ様はお決まりになりました?」
「相変わらずですよ、アテもありません」
ヴィオラは毎年誰を誘うことも誘われることもなく、なんとなく雰囲気を楽しむだけだった。
「私たちにとって最後のパーティーですし、折角ですからお誘いになってみては?」
ルーナが優しい微笑みでそう言った。一瞬ヨズキが浮かんだがすぐに振り払う。
そもそも彼は教師だ。
「そうしたいのですが誘いたい相手が見つからないのです」
そう笑って誤魔化した。
その日の夕方、本当の自習のために自習室に行く。
今はテスト直後なのでヴィオラの貸しきりかと思ったが先客がいた。
「ヴィオラ、来ると思った」
キースだった。
「なにかご用?」
一瞥だけして「相手にする暇はないのよ」というアピールのために勉強道具を広げる。
「君、ダンスパーティーの相手はいるのかい?」
「貴方に関係あって?」
キースはヴィオラが勉強しようとしている机の上に座る。
「君を誘いたくってさ」
「はあ?」
「そう睨まないで。
ヴィオラに見合う男になりたくて俺は学年一位目指したんだぜ?」
「冗談でしょう?」
「本気だよ」
真剣な目で見つめてくるので思わずドキッとする。慌てて目を反らした。
「そ、そんなこと言われても困ります」
「困らないさ。毎年ひとりだし、今年も相手いないんだろ?」
煽っているわけではなく、それを願っているような言い方だった。
「…でも、」
「それとも魔力を上げるのを手伝ってくれてる相手と行く予定?」
「…!」
ヴィオラは変な汗をかきながら顔を真っ赤にする。
「不自然な魔力の上がり方だからね、察しがつくさ」
「あ、貴方もでしょう。
そちらの方をお誘いになったら?」
「訳アリでね、そうもいかないんだ。
それに本命は君だしね」
ヴィオラは頭の中はパニックになりながら急いで勉強道具を片付ける。
「からかわないで。失礼します」
部屋を飛び出すヴィオラに向かってキースは「返事待ってるよ」と言った。
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