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先生と私
喫茶店にて
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あれから1ヶ月経った。
先生には3回会ったが、デートは今のところあれきりだ。そして、何故かセックスも。
昨日は先生の家で海外ドラマをずっと観ていた。それはそれで楽しかったけど…。
私はもやもやを抱えながら喫茶店の制服に着替える。
ウェイトレスは楽な仕事ではないが、人と接することが好きな私に向いてる仕事だ。
お客さんのいない時間は清掃をしながら同僚と無駄話をして過ごせるのも良い。
「恋人ってどうやってなるんですかね」
机をアルコールで吹きながら、愛海さんに尋ねる。
愛海さんは驚いた顔で振り返った。
「千鶴ちゃんから恋愛の話題が出るなんてびっくりだわ」
愛海さんは私より何個か年上の先輩で、かなりの美人で、恋愛経験も豊富だ。
「相手はどんな人なの?」
愛海さんは仕事の手を止めて私の顔を覗き込む。
私は先生のことを思い浮かべる。
「んー…年上の人です」
「いくつくらい?何で知り合ったの?仕事は?」
興味津々に目を輝かせて尋ねてきた。
「そ、そこまでは言いませんよ!
ただ、好きな人とどうすれば付き合えるのかなって…愛海さんは、そういうの得意でしょう?」
「得意というか…まああなたよりはってくらいだけど。
そうだなあ、まず出来るだけ身体を許さないことね」
得意気に語りだしたその一言に思わず固まる。
「男なんて身体が手に入ってしまえば付き合うなんて面倒なことしたがらないからね、
都合よく飽きるまで抱かれるだけよ」
先生はそんな人じゃ…
心の中で呟いたが、ぐっと飲み込んだ。
「重要なのはこちらに付き合うだけの価値があるって思わせることね」
そんな私の様子に気が付かずに愛海さんは話続ける。
「まあでも、…一番簡単な手がひとつあるよ」
「なんです?」
「好きです、付き合ってください。
って、面と向かって言うの。
千鶴ちゃんは美人だしいいこだから、これで断るような男はクズか相当な頑固者だから諦めて次行きましょ」
気安くそう言い放った。
正論中の正論だが、それができたら苦労しない。
しかし、先生と簡単に付き合える魔法の言葉なんてないことは始めから知っていた。
「あっ、やだ盗み聞き?」
愛海さんがそんな声をあげたので顔を上げて振り返ると、厨房から顔を出しているコウキと目があった。
同い年だが、彼は大学生なのでアルバイトだ。
「別に、盗み聞きしてたわけじゃないですよ。
ただ愛海さんが大声で話してるから聞こえちゃったんです」
少し慌てたようにそう言った。耳が赤い。嘘だな、とすぐにわかる。
もじもじと恥ずかしそうにしてるのが可哀想なので話を振ることにした。
「コウキは彼女いないの?」
「いないよ、そんなの」
「少し頼りないけど、爽やか系でモテそうなのにー」
愛海さんがからかうように言うとますます顔を赤くする。
「そうだよ、この前お客さんに電話番号渡されたんでしょ?」
自分で言ってから「余計なことを言ったな」と思った。あの日、愛海さんは休みだったからこれは私しか知らない情報だったのだ。コウキが私を少し睨む。
案の定食いついてきた。
「えっ!そうなの?コウキくんも隅に置けないなあ。それでそれで?どうしたの?」
「別に、捨てましたよ。
お客さんに手を出すわけにも、いかないし…俺…」
最後の方はもにょもにょと語尾が小さくなっていった。
「結構綺麗な人だったのに勿体ない」
そう言うとコウキは何か良いかけたが、静かに口を閉めた。
「わかった、他に好きな子いるんだ」
愛海さんがズバリ言うと顔を思いっきりしかめる。
顔の赤みは引くどころか増すばかりだ。図星なのだろうか。
「いいからお二人とも働いてください!
もうすぐ混む時間ですよ!」
そう怒って厨房へと戻っていった。
恋をしている人間は、顔色にでるから面白いなあと他人事のように私は思った。
先生には3回会ったが、デートは今のところあれきりだ。そして、何故かセックスも。
昨日は先生の家で海外ドラマをずっと観ていた。それはそれで楽しかったけど…。
私はもやもやを抱えながら喫茶店の制服に着替える。
ウェイトレスは楽な仕事ではないが、人と接することが好きな私に向いてる仕事だ。
お客さんのいない時間は清掃をしながら同僚と無駄話をして過ごせるのも良い。
「恋人ってどうやってなるんですかね」
机をアルコールで吹きながら、愛海さんに尋ねる。
愛海さんは驚いた顔で振り返った。
「千鶴ちゃんから恋愛の話題が出るなんてびっくりだわ」
愛海さんは私より何個か年上の先輩で、かなりの美人で、恋愛経験も豊富だ。
「相手はどんな人なの?」
愛海さんは仕事の手を止めて私の顔を覗き込む。
私は先生のことを思い浮かべる。
「んー…年上の人です」
「いくつくらい?何で知り合ったの?仕事は?」
興味津々に目を輝かせて尋ねてきた。
「そ、そこまでは言いませんよ!
ただ、好きな人とどうすれば付き合えるのかなって…愛海さんは、そういうの得意でしょう?」
「得意というか…まああなたよりはってくらいだけど。
そうだなあ、まず出来るだけ身体を許さないことね」
得意気に語りだしたその一言に思わず固まる。
「男なんて身体が手に入ってしまえば付き合うなんて面倒なことしたがらないからね、
都合よく飽きるまで抱かれるだけよ」
先生はそんな人じゃ…
心の中で呟いたが、ぐっと飲み込んだ。
「重要なのはこちらに付き合うだけの価値があるって思わせることね」
そんな私の様子に気が付かずに愛海さんは話続ける。
「まあでも、…一番簡単な手がひとつあるよ」
「なんです?」
「好きです、付き合ってください。
って、面と向かって言うの。
千鶴ちゃんは美人だしいいこだから、これで断るような男はクズか相当な頑固者だから諦めて次行きましょ」
気安くそう言い放った。
正論中の正論だが、それができたら苦労しない。
しかし、先生と簡単に付き合える魔法の言葉なんてないことは始めから知っていた。
「あっ、やだ盗み聞き?」
愛海さんがそんな声をあげたので顔を上げて振り返ると、厨房から顔を出しているコウキと目があった。
同い年だが、彼は大学生なのでアルバイトだ。
「別に、盗み聞きしてたわけじゃないですよ。
ただ愛海さんが大声で話してるから聞こえちゃったんです」
少し慌てたようにそう言った。耳が赤い。嘘だな、とすぐにわかる。
もじもじと恥ずかしそうにしてるのが可哀想なので話を振ることにした。
「コウキは彼女いないの?」
「いないよ、そんなの」
「少し頼りないけど、爽やか系でモテそうなのにー」
愛海さんがからかうように言うとますます顔を赤くする。
「そうだよ、この前お客さんに電話番号渡されたんでしょ?」
自分で言ってから「余計なことを言ったな」と思った。あの日、愛海さんは休みだったからこれは私しか知らない情報だったのだ。コウキが私を少し睨む。
案の定食いついてきた。
「えっ!そうなの?コウキくんも隅に置けないなあ。それでそれで?どうしたの?」
「別に、捨てましたよ。
お客さんに手を出すわけにも、いかないし…俺…」
最後の方はもにょもにょと語尾が小さくなっていった。
「結構綺麗な人だったのに勿体ない」
そう言うとコウキは何か良いかけたが、静かに口を閉めた。
「わかった、他に好きな子いるんだ」
愛海さんがズバリ言うと顔を思いっきりしかめる。
顔の赤みは引くどころか増すばかりだ。図星なのだろうか。
「いいからお二人とも働いてください!
もうすぐ混む時間ですよ!」
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恋をしている人間は、顔色にでるから面白いなあと他人事のように私は思った。
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