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先生と私
ライター
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土曜のお昼の時間帯で、街はそこそこ賑やかだった。
先生とこうして歩くのは初めてだった。
回りからはカップルみたいに見えるのだろうか。
年の差があるとは言っても、先生はそんなに老けているわけではないし、顔は整っているし、私もあまり若々しい服装はしていない。
まさか親子やパパ活には見えないだろう。
その手に触れたかったが、それは距離を詰めすぎなような気がしてやめた。
「そう言えば何が食べたいですか?」
「特に考えてなかったです。
このあたりで美味しいごはんやさんってどこですか?」
「そうですねぇ…私はよく蕎麦屋に行きますが」
「じゃあそこにしましょう」
何の変哲もない会話をして、蕎麦屋に入ることになった。
日中はランチをやっていて、夜は居酒屋にもなるような、どこにでもある蕎麦屋。
そこの濃い茶色のテーブル席に先生と向かい合わせに座る。
とてもとても普通なことだけど、何となく不思議な感じだ。
「高校生の頃はなんとなく避けていましたが、もうあなたも社会人ですもんね。
たまには一緒に出掛けましょうか」
「…!はい!」
それは意外な申し出だった。
心から嬉しいが、少し困る気持ちもある。そんな風に言われたら付き合うことを夢見てしまう。
欲張りな子になってしまう。
その店の蕎麦はとても美味しかった。
「この後はどうしますか?」
先生が蕎麦湯を飲みながら尋ねてきた。
まだデートを続けてくれるようだ。
「じゃあ、先生のお誕生日プレゼントを買いに行きましょうよ。来週ですよね?」
「そんな、いいですよ。
私の歳になると誕生日なんてそんなおめでたいものでもないですし…」
「でも私、贈りたいんです」
先生は若干渋々とは言え、一緒に買い物してくれることになった。
「欲しいものと言ってもなあ…」
先生はショーウインドウを眺めながら、困ったように頭を掻く。
「日用品はいかがですか?
先生の家のドライヤー結構古いでしょう」
「まあ確かに古いですけど…
折角千鶴さんが贈ってくれるんですから、なにか大切にできるものがいいですけどね」
ドキンと胸が高鳴った。
そんな風に言われるなんて思ってもみなかった。
「そ、それじゃあ…」
時計?ネクタイ?財布?
父親と先生以外の男性にプレゼントを渡したことなんてないから、何を贈れば良いのかわからない。
今まで先生への贈り物は全て手探りだった。
悩みながらブラブラと歩いていると少しお洒落な雑貨屋のガラスケースの中、四角く銀色に鈍く輝くものに目が止まった。
「…これなんかどうです?」
「ジッポライターですか…
確かに格好いいとは思いますが、高いですよコレ」
「んもう、値段見ちゃあダメですよ!」
先生の肩を軽く叩いた。
しかし、誕生日の贈り物はこれで決まった。
それにしても意外と男性らしい渋い趣味をしている。
私は先生のことをよく知らない。
なるべく知らないでいられるようにしてきたからだ。
でも、
こんな風に一緒に過ごしているともっと親密な関係になりたいと思ってしまう。
恋人のように、手を繋いで歩いて、プレゼントを贈りあって、愛を告白しあいたい。
このデートは幸せだったが失敗だ。
今の関係で満足していたのに、私は先に進めたくなってしまった。
もう手遅れだ。
私、先生が欲しい。
先生とこうして歩くのは初めてだった。
回りからはカップルみたいに見えるのだろうか。
年の差があるとは言っても、先生はそんなに老けているわけではないし、顔は整っているし、私もあまり若々しい服装はしていない。
まさか親子やパパ活には見えないだろう。
その手に触れたかったが、それは距離を詰めすぎなような気がしてやめた。
「そう言えば何が食べたいですか?」
「特に考えてなかったです。
このあたりで美味しいごはんやさんってどこですか?」
「そうですねぇ…私はよく蕎麦屋に行きますが」
「じゃあそこにしましょう」
何の変哲もない会話をして、蕎麦屋に入ることになった。
日中はランチをやっていて、夜は居酒屋にもなるような、どこにでもある蕎麦屋。
そこの濃い茶色のテーブル席に先生と向かい合わせに座る。
とてもとても普通なことだけど、何となく不思議な感じだ。
「高校生の頃はなんとなく避けていましたが、もうあなたも社会人ですもんね。
たまには一緒に出掛けましょうか」
「…!はい!」
それは意外な申し出だった。
心から嬉しいが、少し困る気持ちもある。そんな風に言われたら付き合うことを夢見てしまう。
欲張りな子になってしまう。
その店の蕎麦はとても美味しかった。
「この後はどうしますか?」
先生が蕎麦湯を飲みながら尋ねてきた。
まだデートを続けてくれるようだ。
「じゃあ、先生のお誕生日プレゼントを買いに行きましょうよ。来週ですよね?」
「そんな、いいですよ。
私の歳になると誕生日なんてそんなおめでたいものでもないですし…」
「でも私、贈りたいんです」
先生は若干渋々とは言え、一緒に買い物してくれることになった。
「欲しいものと言ってもなあ…」
先生はショーウインドウを眺めながら、困ったように頭を掻く。
「日用品はいかがですか?
先生の家のドライヤー結構古いでしょう」
「まあ確かに古いですけど…
折角千鶴さんが贈ってくれるんですから、なにか大切にできるものがいいですけどね」
ドキンと胸が高鳴った。
そんな風に言われるなんて思ってもみなかった。
「そ、それじゃあ…」
時計?ネクタイ?財布?
父親と先生以外の男性にプレゼントを渡したことなんてないから、何を贈れば良いのかわからない。
今まで先生への贈り物は全て手探りだった。
悩みながらブラブラと歩いていると少しお洒落な雑貨屋のガラスケースの中、四角く銀色に鈍く輝くものに目が止まった。
「…これなんかどうです?」
「ジッポライターですか…
確かに格好いいとは思いますが、高いですよコレ」
「んもう、値段見ちゃあダメですよ!」
先生の肩を軽く叩いた。
しかし、誕生日の贈り物はこれで決まった。
それにしても意外と男性らしい渋い趣味をしている。
私は先生のことをよく知らない。
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でも、
こんな風に一緒に過ごしているともっと親密な関係になりたいと思ってしまう。
恋人のように、手を繋いで歩いて、プレゼントを贈りあって、愛を告白しあいたい。
このデートは幸せだったが失敗だ。
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もう手遅れだ。
私、先生が欲しい。
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