孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし

文字の大きさ
101 / 177

第百一話 デート?

しおりを挟む

「何故だぁ~! 何故私はこんな大事な時に仕事なんだ! クライの初めての長期休暇なんだぞ! 屋敷でも外でも一日中一緒に過ごせる貴重な機会なんだぞ! 休みの間に家族の絆を深めようとアレコレ考えていたのに、何故私はこの時に! 王城に出勤しなくてはならないんだぁ!!」

「御当主様、それは――――」

「家族水入らずで王都の劇場で最新の劇を鑑賞して! オークションに参加して、珍しい品を購入して! 庭で盛大にバーベキューをして! 一緒に魔物討伐をするつもりだったのに、どうしてなんだぁ~!!」

(せっかく庭師が綺麗にしただろうに……あそこでバーベキューをするつもりだったのか……)

 悲嘆する母さんをハイネルさんが冷静に諭す。
 
「御当主様、そんなことでは坊ちゃまが呆れてしまいますよ。お仕事が坊ちゃまの長期休暇と被ってしまうとは不運ですが、ソレはソレ、コレはコレでございます。教国より使者が参られております。御使い降臨による各国の対応も連携が必要。であれば、御当主様の力なくば王国の威信に関わります。残念ですが坊ちゃまとの触れ合いはまたの機会に……」

「ぐぬぬ~。御使いさえ降臨しなければこんなことには……」

 物凄く悔しがる母さんになんと声をかけたらいいかわからない。
 ここにいない御使いに対する苦々しく思いが溜まっていくようでいたたまれない。

 だが、そんな母さんは御使いへの憎しみから一転、気合いを籠めて俺とミストレアに宣言する。

「クライ、母さん頑張って仕事を片付けてくるからな。一日、一日は必ず開けてみせる。だから休み中に家族水入らずでどこかに出掛けよう。ミストレア、それまでクライの面倒を頼むぞ! 約束だからな! 母さん、頑張るから! 必ず仕事を片付けて私はここに戻って来るぞ!」

 そういって母さんはハイネルさんに強引に連れられて馬車で王城まで出勤していった。
 『教国の連中をすぐに追い返してやるからな!』と馬車から貴族街に響くくらいの大声で叫んでいたのを、俺たちは聞かなかったことにした。




 
 生徒会執行部が手を回してくれたのか、予想に反して懸念だった“孤高の英雄”絡みの噂に反対する相手は、ザックとかいうナニカ以降は特に現れなかった。

 いまだ学園内の噂は消えていないものの、長期休暇の間に学生たちは各々の実家に帰ったり、家族と団欒を過ごしたりするはずだ。
 セハリア先輩の予想通り休み明けはまた別の話題が学園内に広がるだろう。

 ……いまはそう信じておくしかない。
 イザベラさんやアイカの言う通り余計なことをしてさらに噂が拗れるのは避けたいからな。

 そうそう、母さんはどこで俺が学園で絡まれたのを知ったのか、イクスムさんが報告したのかもしれないけど、『私の家族に手を出そうとは……消し炭にしてくれる!』と突然いいだして宥めるのに相当苦労した。
 俺のために怒ってくれるのは、その嬉しいけど、消し炭は流石にマズい。

「デートといったのに、エクレアとイクスムも一緒か……」

 王都の街中で待ち合わせたケイゼ先生が開口一番に口にだしたのは、不貞腐れた文句だった。

「まったく君は私だって勇気をだして誘ったのに。こんな仕打ちをするなんて」

「いや、あのそれは……」

「フフッ、別に構わないよ。少しからかっただけさ。冗談だよ冗談」

(そもそも《リーディング》でステータスを解析した時に確認したが、クライとケイゼは十歳差だぞ。クライが魅力的なのは認めるが、何を考えてるんだコイツは?)

 冗談という割には目が笑っていないような気もするけど……。

「どうやら私たちはお邪魔のようですね。お嬢様、私たちはこの辺りで退散しましょうか?」

「ダメ」

「……はい、申し訳ございません」

 なぜかエクレアがめちゃくちゃ怒っているような気もするけど、この間のようなどうしても許さないという強い怒りではなさそうだ。
 というか、エクレアに叱られてしょんぼりとしたイクスムさんが、涙目でこちらを見てくるんだけどヤメて欲しい。

 ちなみにエクレアと出かけるときは常に一緒ともいってよかったアーリアは、ここにはいない。
 エクレアとイクスムさんは、ケイゼ先生と冒険者ギルドにいく話をしたときは即座についてくるといってきたけど、アーリアはその場で一切の悩む時間もなく同行しないと断言した。
 『外せない用事があるので失礼します』と去っていくアーリアの背中を見詰めるエクレアの瞳は、俺の見間違いではなく寂しそうに見えた。

「ところで今日は冒険者ギルド王国本部に行くんですよね?」

「そうだね。でも折角研究棟から出たんだ。王都観光も遇にはしないとね。丁度買い物もしたかったんだ。“失色の器”の捜索を冒険者ギルドに依頼したのは私なんだ。勿論……付き合ってくれるね?」 

「あ、はい」

 一切の断る余地のない質問だった。

 それに、ケイゼ先生には依頼にかかった費用も払おうと思ったら、取り付く島もなく断わられてしまっていたから、買い物ぐらい付き合うのは吝かではない。

 それから俺たち四人、天成器の皆を合わせて八人は王都の大通りを中心に買い物に繰りだすこととなった。

 ケイゼ先生は服やアクセサリーより本を探したかったらしく、本屋巡りを行うことになった。
 その他にも話題の魔導具屋や色々な種類のお酒を網羅した酒屋を訪れたり、王都ではよく訪れるという古本屋に来訪したときは、興奮した様子で次々と本を購入してはマジックバックに詰め込んでいた。
 
 途中、俺がエクレアを怒らせてしまっていたときに調べた、流行りのスイーツ店も再訪し、今度こそ皆で味わうことができたのは良かったことだろう。
 
 それにしても女性の買い物は長い。

 俺やエクレアは王都で流通している本には興味があったからそれほど飽きずに楽しめているけど、イクスムさんは明らかに面倒そうな顔をし始めていた。

(イクスムはあまり物事に執着しなそうな性格をしているからな。本で教わることより自分の考えを大切にしているようだし、妹様がいなければ屋敷に帰ってもおかしくないな。それに比べて……)

「いや~、いつもエルドラドと二人きりで必要な物資の買い物しかしないんだが、遇にはこういうウインドウショッピング? 見て回るだけの買い物も悪くないんだな。よ~し、今日は王都にある全部の本屋を巡ってやる! これでも貯金はあるんだ、読みたかった本は全部買うぞ~!!」

 見たことがないくらい興奮しっぱなしのケイゼ先生はどうにも止められそうにない。

 俺とエクレア、イクスムさんの三人は人知れず同時に溜め息を吐いた。

 王都散策はまだまだ暫く続きそうだ。
 




 渋るケイゼ先生をようやく宥め、またの機会に必ず買い物に付き合うと約束させられた午後。
 遅めの昼食を終え、やっと辿り着いたのは冒険者ギルド王国本部。

「ケイゼ・マクシミリアだ。依頼の品を受け取りに来た。これが依頼書の片割れだ。確認を頼む」

 冒険者ギルドの受付でケイゼ先生が依頼人用の控えを差しだす。
 
「かしこまりました。少々お待ち下さい」

 数分後に現れたのは先程依頼書を渡したギルド職員ではなく、見知った顔の女性だった。

「エディレーン、お前か。別に依頼の品を受け取るだけなんだから会う必要はないと思うが」

「まあ、そう言うなケイゼ。せっかく滅多に顔を見せない旧友がここを訪れたんだ。私だって仕事そっちのけで会いにくるさ」

「嘘をつくな。仕事なんか殆ど部下任せだろうが」

「フッ、バレたか」

 ケイゼ先生と軽口を交わしながら気怠げに笑うギルド職員の女性は、以前ここを訪れたときにも出会ったエディレーンさんだった。
 
 オーク集落壊滅依頼のときにエディレーンさんの助力で、依頼のリーダーであるヴァレオさんに紹介してもらい、ラウルイリナと共に依頼に赴くことができた。
 元々イクスムさんとも知り合いだったけど、ケイゼ先生とも知り合いだったのか……。

「ほぉ~、誰かと思えばイクスムに熱血坊主のクライじゃないか」

 ね、熱血?
 前会ったときは普通に呼んでくれていたのになぜ急に?

「ん~、そこの眼鏡のお嬢ちゃんもイクスムが背後に庇うだけあって、中々訳ありそうだ。ふふっ、まあいい。ようこそ冒険者ギルド王国本部へ。私は君たちを歓迎しよう」

 大仰に手を広げ、歓迎の挨拶をしてくれるこの王国本部の副ギルドマスターは、その憂いた瞳の奥に油断ならない光を灯し、俺たちを見詰めていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

処理中です...