孤高のミグラトリー 〜正体不明の謎スキル《リーディング》で高レベルスキルを手に入れた狩人の少年は、意思を持つ変形武器と共に世界を巡る〜

びゃくし

文字の大きさ
121 / 177

第百二十一話 破壊の権化

しおりを挟む

「クランベリー! いいよな、もう我慢しないぞ! 突撃していいんだよな!!」

「ええ! あんたの得意技でしょ。今度はあんたたちが存分にその力を見せて頂戴」

 最上級魔法によって壊滅的被害を受けたスライムたちは大半が切り刻まれたとはいえ、依然脅威的な数を保っていた。
 しかし、大波のように押し寄せていた勢いはもうない。

 数こそ多いものの、元草原にはところどころ塊となったスライムたちとその上位個体と思われる個体だけが生き残っていた。

(最上級魔法……恐ろしい威力だったな。草原に燃え盛っていた火も土の城壁も勿論あれだけいたスライムの大群も尽く切り刻んだ。範囲内にいればただではすまない)

(……草原が見る影もない荒野に変わってしまったな)
 
「行くぞぉ! お前ら! 突撃ぃっ!!!」

「おおおぉぉぉーーー!!!」

 大地が地鳴りするほどの騎士たちの行進。

 先頭に立つのは当然の如くイーリアスさんだった。
 背にくくりつけられていた巨大な刃の片手斧を振り回し土の城壁の残骸を踏みつけ突進する。

「【闘技:戦塵疾走】ぉ!!」

 走りながらの闘技発動。

 白銀の片手斧を振れば地面を闘気の衝撃が駆け抜ける。

 ゆうにスライム三十体は固まっていそうな集団に向けて衝撃が走る。

(闘気が着弾と同時に爆発した!?)

 だが、驚きは一度で終わらない。
 イーリアスさんはスライムの集団に向けて連続で片手斧を振るい続ける。

「【闘技:戦塵疾走】、【闘技:戦塵疾走】、【闘技:戦塵疾走】ぉお!!」

「と、闘技の連打!? あ、あんなに連続で?」

 ラウルイリナが信じられないものを見たように驚愕している。
 俺も同じだ。
 イーリアスさんが片手斧を振るたびに衝撃が地面を走り、スライムの集団が爆散する。
 一撃だけでも複数体のスライムを瞬殺している姿には言葉もでない。
 
「私も連続で闘技を放つことは可能ですが……あれほど雑に放っておいてあの威力とは、余程身体の動かし方と闘気操作が卓越しているといっていいでしょう」

 闘技を複数使いこなせるイクスムさんですら驚いた様子でイーリアスさんの豪快な戦いを見守っている。

「団長に続けぇっ! おおおぉぉぉおおお!!」

 第二騎士団の騎士たちも負けてはいない。
 気迫とともに突出するイーリアスさんになんとかついていきながら、天成器を片手に生き残りのスライムたち確実に減らしていく。
 
 彼らの通った道にはそれこそスライムは欠片も存在せず、まさに蹂躪が繰り広げられていた。

「おっ? 結構歯応えがありそうなヤツが出てきたな」

 突撃するイーリアスさんの前に立ち塞がったのは恐らくラージスライムの上位個体マウンテンスライム。
 小山ほどの大きさのスライムの体色は緑。

 アレは風属性のマウンテングリーンスライムか。

「――――ッ」

 イーリアスさんの目の前で緑の巨大スライムが蠢く。

 放たれたのは連続した風の刃。
 それも一つ一つの刃が長く避けようにもかなり距離をとる必要があるように見える。
 空間を埋め尽くすように殺到する長大な風刃。

 それを……。

「フンッ」

 イーリアスさんはただの一撃で粉砕する。
 何気ない動作で振り下ろされた片手斧は、風刃をいとも容易く砕くと轟音と共に地面に突き刺さった。

「闘気を纏っただけの一撃で……闘技級の威力がある? そんなことが有り得るのか?」

 ラウルイリナが恐る恐る吐き出した言葉は真実を示していると直感した。
 イーリアスさんにとってのただの一振りは十分に必殺の一撃になり得ていた。

 だが、見学しているだけの俺たちの内心など彼女には関係なく……寧ろ不満を募らせていた。

「軽すぎる」

 ポツリと呟く言葉は少しだけ哀しくて。
 それでも彼女は右手の天成器に落としていた視線を巨大スライムに向ける。

「……相手を仕留めたかったらな。こうするんだっ!」

 イーリアスさんはマウンテングリーンスライムに飛びかかった。
 高い!
 小山ほど全高三m以上の巨大スライムの遥か上に彼女は跳ぶ。

 しかし、マウンテングリーンスライムもただ黙ってその場に佇んでいるわけではない。
 イーリアスさんの行動の危険さを察知したのか迎撃に動く。

「――――ッ!」
 
 緑の体表を蠢かせ放たれたのは風の砲弾。
 空中で白銀の片手斧を振り下ろそうとするイーリアスさんには躱すすべはない……かのように思えた。

「おっと、危ないぞ」

(け、蹴ったのか!? 空中で風の砲弾を蹴り飛ばした? あんなに簡単に? バカな!!)

 ミストレアの常識を覆された悲鳴にも似た念話が脳裏に響く。
 もうなにがなんだかわからない。
 あの風の砲弾だってマウンテングリーンスライムには必殺の一撃だったはずだ。
 敵を倒し勝利するための渾身の一手。

 事実蹴り飛ばされ明後日の方向に飛んでいった風の砲弾は、着弾地点にいたスライム数体をあっさりと貫通し跡形もなく潰していた。
 それを……蹴りだけで弾くのか。

「ほら、喰らえ! 【闘技:地裂開闢】!!」

 空中から振り下ろされる巨大な刃は、一切の抵抗を感じさせずマウンテングリーンスライムの天辺から一直線に地面まで到達する。

 大地が深く深く割れた。

 地割れだ。

 たった一人の闘技の一撃が地形すら変えてしまっている。
 
「あの威力、上位闘技かよ! しかも地属性に変換した闘気を纏ってるのか? すでに最上級魔法でズタボロになってるとはいえ簡単に大地が裂けたぞ。どうなってんだ王国の騎士団長は!?」

「闘気の溜めが一切見られなかった。それでいてあの威力、イーリアス騎士団長は一体どんな修練を積んでいるんだ?」

「いや~、あんな強い人が味方で良かった~。……でも、なんだかわたしスライムの方が可哀想になっちゃったんだけど、どうしよ~」

 この場の皆が驚く中一人冷静なケイゼ先生がマウンテングリーンスライムについて解説してくれる。

「マウンテングリーンスライムは通常のスライムが核を一つ体内に有するところを、核を三つ体内に有している。そして、打撃や魔法攻撃はそもそも効きづらく、三つの核すべてを破壊しなければまず倒せない魔物だ。扱う風魔法も中級から上級魔法程度の威力があり、全体の大きさからいってもかなりの難敵。初級冒険者なら体当たりされただけでも重症を負うことになるだろう。だが、アレは何だ? 闘技とはいえ三つある核の内二つがたった一撃で破壊された? どんな威力の攻撃だ」

 ……どうやらケイゼ先生ですら冷静じゃなかったようだ。
 自由に、それでいて破壊の限りを尽くすイーリアスさんを食い入るように見詰めている。

「おお~、中々タフじゃないか! 風の盾を咄嗟に張って斧の軌道を反らしたのか! いいぞ! やるじゃないか!!」

 地割れでできた底の見えない大地の溝にいまにも落ちそうになっていたマウンテングリーンスライム。
 その魔物に歓喜の声を浴びせかけるイーリアスさん。
 ……心なしかあの巨大スライムが悲しそうに見えるのは俺だけではないはずだ。

 というか風の盾で軌道を反らしていたのか。
 それでいてあの破壊力……ますます信じられない思いだ。

 戦いはまだ続く。
 
 イーリアスさんは満身創痍になりながらも生存のために反撃してくるマウンテングリーンスライムと楽しげに戦っている。
 第二騎士団の騎士たちもそれぞれがラージスライムなどの上位個体と戦い始め歩みが止まりつつあった。

 そんなときだ。

 両騎士団の活躍に心を奪われていた冒険者たちに声がかかる。

「さあ、冒険者諸君! 君たちの出番だ!!」

 戦場に響くエディレーンさんの声。

 普段は気怠げな彼女の瞳はいつになく真剣そのものだった。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。

夜兎ましろ
ファンタジー
 高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。  ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。  バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~

シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。 主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。 追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。 さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。 疫病? これ飲めば治りますよ? これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

盾の間違った使い方

KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。 まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。 マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。 しかし、当たった次の瞬間。 気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。 周囲は白骨死体だらけ。 慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。 仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。 ここは―― 多分、ボス部屋。 しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。 与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる 【異世界ショッピング】。 一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。 魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、 水一滴すら買えない。 ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。 そんな中、盾だけが違った。 傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。 両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。 盾で殴り 盾で守り 腹が減れば・・・盾で焼く。 フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。 ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。 ――そんなある日。 聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。 盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。 ​【AIの使用について】 本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。 主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。 ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。

帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす

黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。 4年前に書いたものをリライトして載せてみます。

処理中です...