120 / 177
第百二十話 魔法大戦
しおりを挟む「「「【ファイアブラスト】」」」
騎士たちから一直線にスライムの大波に向けて放たれた楕円形の球体。
(あれは……上級魔法?)
それは火の榴弾。
着弾と同時に巻き起こるのは轟音と破砕。
榴弾に内包された火が周囲に爆散する。
「うお、派手な花火だな」
「すご~」
「上級拡散火魔法。楕円形の火の榴弾を作り出し射出する着弾時に拡散し、中範囲に影響を与える魔法さ。隠密行動時には着弾の爆音がネックになるが、大量の敵相手なら中心に撃ち込むことで大きな損害を与えることもできる。見てご覧」
ケイゼ先生に促され、火魔法とスライムたちの衝突した現場を注意深く観察する。
「うむ、前面に押し寄せていたスライムの大半が消し飛んだな。しかし……ファイアスライムは火に耐性を有しているから彼らだけは生き残っている」
「ですが、勢いは大分削がれたようです」
ラウルイリナとイクスムさんが感心した様子で現場を見入っていた。
息を合わせた魔法の一斉掃射の威力を見せつけられていた。
「そして、延焼を引き起こす火魔法を選択したお陰でスライムの下敷きになっていた草原に燃え移り、火炎となって逆巻いている。あれだけでも相当な数のスライムにダメージを負わせることができただろうね」
一度に放たれたことで広範囲に巻き起こった火炎がスライムたちを焼いていく。
いまの攻撃で大分押し寄せていたスライムたちも減ったと思ったが……それでもその穴を埋めるように次から次へと迫るスライムの大波。
しかし、クランベリーさんもそれは想定内だったようだ。
即座に次の手を打つ。
「次! 大群を押し戻しなさい! 風魔法用意――――放てっ!!!」
「「「【ウィンドシリンダー】」」」
騎士たちが隊列を組み直し撃ち放ったのは中級形成風魔法。
サラウさんもグレゴールさんも他の属性で使用していたこの形成魔法は、ぶつかった相手を押しだす特性をもつ。
風の円柱がスライムたちに命中した途端、この魔法を構成していた風がスライムたちを押し返すように一方向に吹きすさむ。
「おお、スゴイ! 押し返した!」
すぐ近くで響くアイカのはしゃぐ声。
喜ぶのはわかるがあまり引っつかないで欲しい。
後方からのエクレアの視線が突き刺さるようで痛い。
その間も再び騎士がクランベリーさんの合図で位置を変える。
「壁!」
「「「【アースランパート】」」」
それは見るも壮観な土の城壁の連なり。
(凄いな……複数人で障壁魔法を使うとこうなるのか)
(土の城壁同士を隣接して展開しているお陰か、まるで都市を守る外壁のような光景だな。一つの長大な壁。あれなら――――)
数と勢いの失われつつあるスライムたちを完全に止めるための城壁。
現にスライムの大波は城壁にぶつかった途端その場に押し留められた。
「バン! あんたの出番よ!」
「団長……副団長が不在とはいえ私のようなもので本当によろしいので? もっと他に適任がいると考えますが」
「このっ……あんたは一芸特化なんだからこんな時しか出番ないでしょ! 無駄口叩いてないでとっととしなさい!!」
「はぁ……団長自らそうおっしゃられるなら仕方ありませんね。ですが多少お時間はいただきたいですね。あの魔法は時間がかかるので」
「それがわかってるなら早く魔法の準備しなさいよ! まったく……あんたって奴はいつもいつも……」
うんざりした表情のクランベリーさんの隣に立つのは背の高い男性。
クランベリーさんと並んで立つと対比でより大きく見える。
(クランベリーは随分あのバンとかいう男に怒っているな。厭味ったらしい顔をしてるから仕方ないだろうが)
厭味ったらしい、か?
まあ、バンと呼ばれた男性はあの傍若無人なクランベリーさんが怒っていても含み笑いを浮かべたままだからな。
ちょっと胡散臭い感じはするけど……。
「各員城壁を避けて攻撃しなさい! 初級魔法でいい! 手数で圧倒するのよ!!」
「了解! 【ファイアボール・ ダイブ5】!」
「【ウィンドアロー・ダイブ6】」
「【ストーンアロー・バーティカル5】!!」
城壁を避けた上空からの魔法攻撃が雨あられのようにスライムたちに降り注ぐ。
魔法因子によって軌道変更された魔法は確実にスライムたちの数を減らしていた。
「ねぇねぇ、ケイゼさん、あの銀髪ツインテールのカワイイ団長さんは魔法を使わないの?」
「クランベリー団長か……彼女の魔法はあまり人前では、ね。ここに民衆はいないが恐らく彼女はこの場では魔法を使うことはないだろう」
「?? そうなの? う~ん、もっとピンチじゃないと使わないってことか~~」
アイカが興味本位からかケイゼ先生にクランベリーさんの魔法について尋ねる。
クランベリーさんの魔法か。
人前では使わない。
レシルさんも彼女のことを話すとき悲しそうな表情をしていたけど、なにか関係あるんだろうか。
……気になるけど、いまは戦況の方が大事だ。
第二騎士団の戦う最前線に目線を向ける。
絶えず土の城壁上空から降り注いでいた魔法が途絶える。
それは準備が整った証拠だった。
「……全員、城壁から離れなさい! バンが最上級魔法を放つわよ!!」
(は? 最上級?)
「………………【ガストディザスター】」
バンさんの両手の中心で押し留められていた薄緑の球体が、土の城壁の上を通り勢いよくスライムの大群、その中心上空へ向けて射出される。
スライムの数は多い。
薄緑の球体は到底中心部までは到達しなかった。
だが、そんなことは最早関係ない。
その威力を鑑みれば……。
場所なんて意味をなさなかった。
「くっ……」
「わっ、なに!?」
「……んっ」
突風が戦場全体を包む。
(ここまで何百m離れてると思ってるんだ!? クライ、大丈夫か?)
(これは……あの魔法の余波、なのか?)
「最上級魔法まで使えるとは、流石王国の誇る騎士団の中でも魔法戦に長けた騎士の集まる第二騎士団」
ケイゼ先生は興味津々で魔法の結果を眺めているが、こうして肌で威力を感じとっているとそんなに笑っていられない。
「あの魔法は一体……スライムたちが切り刻まれてる?」
「スライムだけじゃない。あれは味方の《アースランパート》まで切り裂いちまってるぞ……」
ラウルイリナとニールも驚きを隠せないでいる。
結果は衝撃的だった。
広大な範囲。
そこに存在したものは渦巻く風によって尽く切り刻まれている。
「あれは風属性派生、烈風魔法。薄く鋭い斬撃の風を作り出し攻撃する魔法。本来は斬撃魔法や武器魔法と相性のいい魔法なんだが、旋渦魔法で放つとは……珍しい使い方だな」
同じ風属性派生でもウルフリックの使う乱気流魔法とは違い、削りとるのではなく切り刻む魔法。
それが広範囲の渦となりスライムたちの上空で広がった。
いまなお切り刻み続ける竜巻。
以前ミノタウロスとの戦いで見たものやカザーさんの使用していた中級旋渦魔法、《トルネード》とは似ているが範囲がまったく異なる。
あんな広範囲の魔法、巻き込まれれば抜けだすのは難しい。
……恐ろしい魔法だ。
「ぐっ……」
「……良くやったわ。少し休んでいなさい」
額に脂汗を浮かべ片膝をついたバンさんは、クランベリーさんの労いの言葉に苦しそうに一礼すると後方へと下がる。
あれほどの魔法だ。
消耗も激しいのかもしれない。
「さあて! そろそろ私たちの出番だな!!」
戦場に響くイーリアスさんの雄叫びのような大声。
その声はようやく戦えることへの歓喜があった。
「野郎共! 喜べ! クランベリーたちが私たちの道を切り開いてくれた! ……突撃だ。あのスライムの大群を蹂躪する! 野郎共、準備はできてるな!!」
「おおーーーーーー!!!」
それは天地を揺るがす戦意の猛り。
第三騎士団が――――動く。
1
あなたにおすすめの小説
スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜
かの
ファンタジー
世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。
スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。
偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。
スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!
冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!
ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~
ある中管理職
ファンタジー
勤続10年目10度目のレベルアップ。
人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。
すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。
なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。
チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。
探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。
万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。
エリクサーは不老不死の薬ではありません。~完成したエリクサーのせいで追放されましたが、隣国で色々助けてたら聖人に……ただの草使いですよ~
シロ鼬
ファンタジー
エリクサー……それは生命あるものすべてを癒し、治す薬――そう、それだけだ。
主人公、リッツはスキル『草』と持ち前の知識でついにエリクサーを完成させるが、なぜか王様に偽物と判断されてしまう。
追放され行く当てもなくなったリッツは、とりあえず大好きな草を集めていると怪我をした神獣の子に出会う。
さらには倒れた少女と出会い、疫病が発生したという隣国へ向かった。
疫病? これ飲めば治りますよ?
これは自前の薬とエリクサーを使い、聖人と呼ばれてしまった男の物語。
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
帰って来た勇者、現代の世界を引っ掻きまわす
黄昏人
ファンタジー
ハヤトは15歳、中学3年生の時に異世界に召喚され、7年の苦労の後、22歳にて魔族と魔王を滅ぼして日本に帰還した。帰還の際には、莫大な財宝を持たされ、さらに身につけた魔法を始めとする能力も保持できたが、マナの濃度の低い地球における能力は限定的なものであった。しかし、それでも圧倒的な体力と戦闘能力、限定的とは言え魔法能力は現代日本を、いや世界を大きく動かすのであった。
4年前に書いたものをリライトして載せてみます。
盾の間違った使い方
KeyBow
ファンタジー
その日は快晴で、DIY日和だった。
まさかあんな形で日常が終わるだなんて、誰に想像できただろうか。
マンションの屋上から落ちてきた女子高生と、運が悪く――いや、悪すぎることに激突して、俺は死んだはずだった。
しかし、当たった次の瞬間。
気がつけば、今にも動き出しそうなドラゴンの骨の前にいた。
周囲は白骨死体だらけ。
慌てて武器になりそうなものを探すが、剣はすべて折れ曲がり、鎧は胸に大穴が空いたりひしゃげたりしている。
仏様から脱がすのは、物理的にも気持ち的にも無理だった。
ここは――
多分、ボス部屋。
しかもこの部屋には入り口しかなく、本来ドラゴンを倒すために進んできた道を、逆進行するしかなかった。
与えられた能力は、現代日本の商品を異世界に取り寄せる
【異世界ショッピング】。
一見チートだが、完成された日用品も、人が口にできる食べ物も飲料水もない。買えるのは素材と道具、作業関連品、農作業関連の品や種、苗等だ。
魔物を倒して魔石をポイントに換えなければ、
水一滴すら買えない。
ダンジョン最奥スタートの、ハード・・・どころか鬼モードだった。
そんな中、盾だけが違った。
傷はあっても、バンドの残った盾はいくつも使えた。
両手に円盾、背中に大盾、そして両肩に装着したL字型とスパイク付きのそれは、俺をリアルザクに仕立てた。
盾で殴り
盾で守り
腹が減れば・・・盾で焼く。
フライパン代わりにし、竈の一部にし、用途は盛大に間違っているが、生きるためには、それが正解だった。
ボス部屋手前のセーフエリアを拠点に、俺はひとりダンジョンを生き延びていく。
――そんなある日。
聞こえるはずのない女性の悲鳴が、ボス部屋から響いた。
盾のまちがった使い方から始まる異世界サバイバル、ここに開幕。
【AIの使用について】
本作は執筆補助ツールとして生成AIを使用しています。
主な用途は「誤字脱字のチェック」「表現の推敲」「壁打ち(アイデア出しの補助)」です。
ストーリー構成および本文の執筆は作者自身が行っております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる