21 / 52
第二十話 初めての依頼と疑問
しおりを挟む「『消毒液光線』」
「ギャッ!?」
「あっ……」
薬草採取の依頼の途中、偶然出会ってしまったゴブリンを相手していた。
あんなに苦戦していたゴブリンを一撃で倒せたことに妙な呆気無さを感じる。
それでもオレは確実に強くなっている。
……たとえ吸魔の指輪に頼り切っているとしても。
「模擬戦でも見させていただきましたけど、すごい恩恵の使い方ですね! ゴブリンさんの胸を貫いたかと思ったら一発で倒してしまうなんてすごいです!」
ランクルの街で急遽手に入れた簡素な革鎧を身に着けたラーツィアが、ゴブリンの絶命の瞬間を見てはしゃいでいる。
新人の冒険者はゴブリンのような人型の魔物を殺した時、その嫌悪感や罪悪感から吐いてしまう者も少なくないんだけど……全然大丈夫そうだ。
お姫様なのにまったく動揺もないのが不思議だ。
まあ、心配ごとが一つ減ったから良かったけど……ラーツィアもこの追っ手に追われている状況に気を張り続けてゴブリンのことまでは気にしていられないだけかもしれない。
後でそれとなくフォローしてあげないとな。
「つくづく思うが何なんだお前の恩恵は……何故そんなことが出来る」
師匠はオレが恩恵技を短時間で開発しすぎだと呆れた顔でいう。
「う~ん……なんとなく?」
「なんとなくでは出来ない筈なのに……まったくコイツは……」
落ち込む師匠、そんなに変かな?
「それよりレオ師匠、吸魔の指輪について疑問があるんだけど……」
「なんだ?」
「この指輪をレオ師匠が着けたらどうなるんだ? 使える魔力が増えて、例えばファルシオンを大量に出せるようになったりするのか?」
そう、そこが疑問だった。
オレはこの指輪の魔力によって恩恵を十全に扱えている。
ただ、この指輪を外せば当然指輪の魔力は使えない。
それはわかっていたことだ。
しかし、この指輪は嵌めれば誰でもその魔力を使えるものなのか。
それだけが疑問だった。
「結論から言えば無理だ」
「え?」
真剣に聞いたつもりだったけど、師匠は切って捨てるように断言した。
「吸魔の指輪は姫様の魔力暴走を抑えるために女王様の用意した物だが、それ故に私も護衛騎士として確認のために一度だけお借りして身に着けさせていただいたことがある」
「そういえばレオパルラが持ち帰って調べるといっていましたね。あの後、ものすごく顔色の悪いまま返しに来てくれましたけど……あれは何だったのですか?」
「姫様……あの時のことは忘れもしません。姫様にお借りした吸魔の指輪を調査のために身に着けたのですが……」
なんだ?
凄く言いづらそうに口籠る師匠。
「……余りの膨大な魔力に魔力酔いのような症状になってしまい、これは姫様のような選ばれた方にしか使えない物だと考えまして、すぐにお返しした次第です」
「そんな……指輪のせいでレオパルラが苦しんでいたなんて……わたし……」
「ひ、姫様、姫様が気に病むことではございません。アレは私が自主的に調べたいといったことを姫様がお許しして下さっただけのこと。たった三日程寝込んだだけですぐに回復しましたから何も問題はありません」
おい、三日も寝込んだのかよ!
それに魔力酔い?
確か許容量以上に身体に魔力を貯め込んでしまうことで引き起こされる症状だったはずだ。
吐き気や目眩、倦怠感なんかの風邪に近い症状が現れ、酷い場合は意識を失うこともある。
ただ、魔力総量が急激に成長した時や空気中に漂う魔力の多い土地でも起こる現象のはずだから、割と身近な症状とも言える。
まあ、魔力が全然成長しないオレには無縁のことだったけど。
「ん? レオ師匠がそれならオレは何で大丈夫なんだ? 全然気持ち悪くもならないし体調に変化はないぞ」
「それはお前が異常だからだ」
めちゃくちゃズバっというな。
「私が魔力酔いの症状が出た以上、お前もすぐに症状が出ておかしくない。それが吸魔の指輪を長時間身に着けていても何ともない。それどころか指輪の魔力を自分の物として操れる。……異常以外の何ものでもないだろ」
師匠は恐ろしいものを見るような目でこちらを見ている。
そうなのか?
自分ではわからない。
指輪を嵌めた時からなんとなく魔力を引き出せる感覚がした。
まあ、そのお陰でオーガとも戦えたんだが……。
あれ?
じゃあオーガと戦う時に指輪を見てオレに任せてくれたのは……。
「あの時はお前を囮にして逃げるつもりだった」
「おい! そんなにはっきり言う奴がいるか! しかも本人の前で!」
「姫様の身を最優先するのは当然のことだ。……だが、お前がオーガを倒す姿は目に焼き付いている……そうでなければお前を弟子になどしない」
段々と小声で話す師匠は照れくさそうに視線を逸らす。
ま、まあ師匠の気持ちもわからなくもない。
初対面の相手を信じろと言う方が無理があるからな。
少し気まずい雰囲気のまま俺たちは薬草の群生地に向かう。
いままで薬草採取ばっかりしていたから取れる場所は何か所も把握している。
ラーツィアと師匠を一番近い群生地に案内した。
外を出歩くことの少なかったラーツィアは薬草採取ですら楽しいらしく、張り切って採取をしてくれる。
『孤児院の子供たちにも持っていきましょう』と提案してくれた時には驚くと同時に嬉しかった。
これで依頼の必要数は集まった。
俺たちは報告のため冒険者ギルドへの帰路につく。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
学年一可愛いS級の美少女の令嬢三姉妹が、何故かやたらと俺の部屋に入り浸ってくる件について
沢田美
恋愛
名門・雄幸高校で目立たず生きる一年生、神谷悠真。
クラスでは影が薄く、青春とは無縁の平凡な日々を送っていた。だがある放課後、街で不良に絡まれていた女子生徒を助けたことで、その日常は一変する。救った相手は、学年一の美少女三姉妹として知られる西園寺家の次女・優里だった。さらに家に帰れば、三姉妹の長女・龍華がなぜか当然のように悠真の部屋に入り浸っている。名門令嬢三姉妹に振り回されながら、静かだったはずの悠真の青春は少しずつ騒がしく揺れ始める。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
転生したら世界一の御曹司だった〜巨乳エルフメイド10人と美少女騎士に溺愛されています〜
まさき
青春
異世界転生した最強の金持ち嫡男、
専属エルフメイドと美少女騎士に囲まれて至福のハーレム生活
現代日本で「地味だが実は超大富豪」という特殊な人生を送っていた青年は、ある日事故で命を落とす。
しかし目を覚ますと、そこは魔法と様々な種族が存在する異世界だった。
彼は大陸一の富を誇る名門貴族――
ヴァン・バレンティン家の嫡男カイルとして転生していたのだ。
カイルに与えられたのは
・世界一とも言える圧倒的な財力
・財力に比例して増大する規格外の魔力
そして何より彼を驚かせたのは――
彼に仕える十人の専属メイド全員が、巨乳美少女だったことである。
献身的なエルフのメイド長リリア。
護衛騎士でありながら隙あらば誘惑してくる女騎士シルヴィア。
さらに個性豊かな巨乳メイドたち。
カイルは持ち前の財力で彼女たちの願いを叶え、最高級の装備や生活を与えていく。
すると彼女たちの忠誠心と愛情はどんどん加速していき――
「カイル様……今日は私が、お世話をさせてください」
領地を狙う貴族を金と魔力で圧倒し、
時にはメイドたちの愛が暴走して甘すぎる時間に巻き込まれながらも、
最強の御曹司カイルは
世界一幸せなハーレムを築いていく。
最後までお読みいただきありがとうございました。よろしければ応援をお願いいたします。
ブラック国家を制裁する方法は、性癖全開のハーレムを作ることでした。
タカハシヨウ
ファンタジー
ヴァン・スナキアはたった一人で世界を圧倒できる強さを誇り、母国ウィルクトリアを守る使命を背負っていた。
しかし国民たちはヴァンの威を借りて他国から財産を搾取し、その金でろくに働かずに暮らしている害悪ばかり。さらにはその歪んだ体制を維持するためにヴァンの魔力を受け継ぐ後継を求め、ヴァンに一夫多妻制まで用意する始末。
ヴァンは国を叩き直すため、あえてヴァンとは子どもを作れない異種族とばかり八人と結婚した。もし後継が生まれなければウィルクトリアは世界中から報復を受けて滅亡するだろう。生き残りたければ心を入れ替えてまともな国になるしかない。
激しく抵抗する国民を圧倒的な力でギャフンと言わせながら、ヴァンは愛する妻たちと甘々イチャイチャ暮らしていく。
天城の夢幻ダンジョン攻略と無限の神空間で超絶レベリング ~ガチャスキルに目覚めた俺は無職だけどダンジョンを攻略してトップの探索士を目指す~
仮実谷 望
ファンタジー
無職になってしまった摩廻天重郎はある日ガチャを引くスキルを得る。ガチャで得た鍛錬の神鍵で無限の神空間にたどり着く。そこで色々な異世界の住人との出会いもある。神空間で色んなユニットを配置できるようになり自分自身だけレベリングが可能になりどんどんレベルが上がっていく。可愛いヒロイン多数登場予定です。ガチャから出てくるユニットも可愛くて強いキャラが出てくる中、300年の時を生きる謎の少女が暗躍していた。ダンジョンが一般に知られるようになり動き出す政府の動向を観察しつつ我先へとダンジョンに入りたいと願う一般人たちを跳ね除けて天重郎はトップの探索士を目指して生きていく。次々と美少女の探索士が天重郎のところに集まってくる。天重郎は最強の探索士を目指していく。他の雑草のような奴らを跳ね除けて天重郎は最強への道を歩み続ける。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる