超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第二十九話 有り得ないダンジョン

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 久し振りに顔を出す冒険者ギルドは西の森が破壊されていた時よりも混乱に拍車がかかっていた。

「ウ、ウソだ……こんな辺境のど田舎にダンジョンだと……」

「よっしゃあっ! ダンジョンコアを売れば相当な金になる、俺たちもダンジョンのお宝で一攫千金を狙おうぜ!!」

「お前、ダンジョンコアって、最下層には守護者の魔物が控えてるもんなんだぞ。お前が敵う訳ねぇだろ」

 無理もない。
 このランクルの街の周辺にあるダンジョンはどれも小規模なものばかりだったのに、突然発見された新ダンジョンは規模がバカデカイらしい。
 ここに来る前チラッと覗いてきたけど、ダンジョン入口を徹底封鎖して何やら冒険者ギルドでも調査しているようだった。

 そんな騒がしい最中でもマリネッタがオレたちを見つけて近づいてくる。

 見つけるの早くない?
 冒険者ギルドに入って来てから数秒も経ってないよ?

「アルコさん、おはようございます。今日はどういったご用事ですか?」

 ギルドの受付嬢だよね。
 なんでカウンターから一直線に出てくるんだよ。
 しかも、さっき一瞬の内に先輩職員に受付代わってもらってたよな。
 めっちゃ下手にでてたぞ、あの先輩。
 弱みか?
 弱みを握って脅してるのか?
 ……やっぱりこの娘怖い。

「お、おはようマリネッタ。すごい騒ぎだな」

「はい、なんと言っても大規模ダンジョンが街の中心に現れましたからね。この間といい前代未聞の事件です。まったくこんな忙しいときにギルドマスターは不在なんですから本当に困ったものです。この騒動のせいでギルド内の掌握も遅れてしまいましたし…………ちっ」

 怖い~、マジ怖い。
 なにこの娘。

 オレがマリネッタの底知れない闇にビビっているその時に、ギルド入口がにわかに騒がしくなる。

 歓声をあげる冒険者たち。

 現れたのは三人組の冒険者パーティー。

 アレ?
 この流れ前にもあったよな。

 コレ毎回やってるの。

「ん? ……アルコか……まあいい。マリネッタ。一応ダンジョンの簡単な調査は終わったぞ」

「迅速な調査をありがとうございます。流石Aランク冒険者パーティーですね」

「構わない。俺たちも今はこの街を拠点にしている以上、異常事態には出来るだけ協力はする」

 レットたち、か。
 Aランク冒険者だけあって冒険者ギルドから直接調査を依頼されたのか……。

「拠点? ちょっと待てお前らここに居座る気かよ!? 王都に帰れよ!!」

「はぁ!? なんで私たちがアンタの言うことを聞かなきゃいけないのよ。私だってこんな田舎イヤだけど、リーダーが……」

「ライミー」

 フリーゲルに止められ不服そうに口籠るライミー。
 前話していた冒険者ギルドの依頼のついでって、ただ立ち寄っただけじゃないのか?

「ともかくアルコ、アンタの指図は受けない。もうアンタは私たちのリーダーじゃないんだからね。……ここにはレオ様がいらっしゃるから暫く離れるつもりもないけど」

 あー、小声でも目の前でそんなことを言うから、また師匠が死んだ目になったじゃないか。

 そんな中、マリネッタが恐る恐るレットに質問する。

「その~、それでダンジョンはどうでしたか?」

「……ここで話してもいいのか? コイツは一応部外者だが……」

 なんでレットはちょっと落ち込んでるんだ。

「アルコさんなら問題ありませんけど……そうですね。場所を移しましょう。冒険者の掌握は済んでいないので余計な口を挟まれても困りますからね」

 なんで?
 冒険者も統率とるつもりなの?
 ……よ、弱みで脅すのか?

 そんな恐ろしいマリネッタに逆らうことなど当然できず、オレたちはギルド二階の応接室に連れて行かれた。

 部屋に入ってすぐ、ギルドのベテラン職員と思わしき人物がビクビクと怯えながら紅茶を持ってくる。
 顔色悪いぞ。
 手がガタガタ震えてるじゃないか。

 ……マリネッタの方を向かないことをおすすめするぞ。

 オレがマリネッタの人心掌握術に恐れおののいている間も話は進む。
 というか、なんで皆気にしないの?

「まず結論から言おう。俺たちが三日ほど連続して潜ってみたが、最下層には到達できなかった。したがって守護者の魔物も確認できていない」

「規模はこれまで見てきた中でも最大級ね。全層が一体どれくらいになるのかも予想がつかないわ」

「そう、ですか……」

「一層だが、植物の鬱蒼とした森が広がっている。光源は疑似太陽。昼夜の概念もあり、ダンジョンの外が夜になるにつれ、段々と光が弱まり、夜は月明かりに照らされたようになる。幸い雲はないため、夜間も森の奥深くでなければ視界が効く」

「……魔物はオレたちが戦っただけでもホブゴブリン、ハイオーク、トロールなど、この周辺ではまず見かけることのない魔物だった」

「ええ、フリーゲルの言う通り、少し歩けばソイツらが引っ切り無しに襲いかかってくる。ダンジョンに入るなら最低限Cランク程度の実力は必要でしょうね」

 ダンジョン内は一層目から過酷な環境のようだ。
 ホブゴブリンにハイオーク?
 それにトロールだと……。
 どの魔物もオーガよりは劣るものの、以前のオレなら目撃しただけでも死を覚悟する相手。
 だが、いまなら……。

「だが、俺たちはなんとか広大な森から階段を探し出し、次の二階層に降りることはできた」

「ホンット階段探すの大変だった……でしたわ。一層だけでも小さな都市並みの面積を誇っていましたから、魔物に襲われながらの探索は苦労いたしましたわ」

 取り繕うの遅くない?

 ていうか都市並みって大袈裟すぎないか?
 このランクルの街より広いってことだろ。
 どれだけだよ。

 レットは真剣な表情で次の階層について語っていく。
 その表情からは嘘で取り繕っているようには見えない。
 すべて本当のことだった。

「二層は湿地帯が広がっていた。各地に点在する沼は足がとられ大いに行動が制限される。光源は上空に仄暗い光がぼんやり見えているだけで他にはない。昼間だろうと夜間だろうと薄明かりが湿地帯全域に広がっている。……残念ながら俺たちでも三層への階段をこの短時間で見つけることは叶わなかった」

「レットさんたちでも進むのに苦労するダンジョンですか……明らかに私たちの手には負えそうにもありませんね」

「そうだな。他の支部からも応援を頼むべきだろう。……噂はすでに広がっている。こんな大規模ダンジョンがあると知れば冒険者たちがこぞって集まってくるぞ。……王国だけでなく、大陸中から」

「王都の冒険者ギルド王国本部にも連絡を取るべきですね。……今から気が重いです」

 その言葉は一種の不吉さを内包していた。

 オレなんかの予想より遥かに大きいダンジョン。

 各地から冒険者が、人が集まり、注目を浴びることは避けられない。

 それはこの辺境の田舎街を一変させてしまう切っ掛けであり、目立つことを避けるべきオレたちにとっては決断を迫られることだった。

 
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