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第三十話 ラーツィアの魔法
しおりを挟むオレの決意って何だったの?
ランクルの街が大規模ダンジョンを中心に据えた発展を遂げ、迷宮都市に生まれ変わるかもしれない。
そんなことになったらここで人探しや土地の購入資金を集めても目立つだけで、追っ手に見つかる危険が増すかもしれない。
最悪はすべて諦めて他の街に逃げる必要がある。
その時はオレもラーツィアたちに同行して助けになれれば……。
そんなことを一晩中考え続け、朝方ラーツィアと師匠に告げたら帰ってきた返事は非常にシンプルなものだった。
「え? ずっとここで暮らしますよ」
昨夜も問題なく恩恵で作り出したベットで安眠できたのか、ラーツィアが健康そうな表情でいう。
「心配する必要などない。追っ手が現れたらすべて返り討ちにしてやる」
同じく体調は万全なのかファルシオン片手に素振りを続ける師匠。
「オレ……一晩中悩んでたんだけど……」
「お前の言うように自分から目立つのは論外だが、どこでバレるかなど誰にもわからん。基本方針は目立たず暮らすことだが、私は姫様のご希望に沿った暮らしを提供するのみ。それに、堂々と自然体で生活していれば意外と疑われないものだ」
「そんなこと言ったって……」
「わたし、このお家好きですよ。アル様がとっても大事にしているのわかります。ダンジョンができたなら絶好の機会ではありませんか。一緒にお金を稼ぎましょう」
「うぅ……ラーツィアありがとう」
「おい、鼻水を垂らすな」
グスっ、仕方ないだろ。
ラーツィアの優しさが身に沁みたんだ。
そうだな。
ラーツィアも魔法をいくつか使えるようになったみたいだし、もう少ししたらダンジョンに挑戦するのもいいかもな。
そんなやり取りも終わった直後、何故かオレたちはダンジョンの一層目で魔物と戦っていた。
目の前では粗末な腰巻きで下半身を隠した灰色のホブゴブリン三体が、粗末な木製の槍を片手にいまにもオレたちに襲いかかろうとしていた。
「『消毒液断刃』」
だが、オレの恩恵でホブゴブリン共が胴体で切断され二つに別れる。
「おい、それで倒すな。姫様の魔法の練習台にする魔物までいなくなったぞ」
「あ、はい」
「姫様、次の魔物では魔法を使ってみましょう。大丈夫です。もし魔物が姫様に危害を加えようと近づいたら私の『ファルシオン』で細切れにしますので」
オレたちが何故ダンジョンにいるのか。
それはマリネッタにダンジョン一層の調査を頼まれたに他ならない。
本来ならCランク以下の冒険者は入場禁止にするか検討中のところ、ダンジョンに挑戦したいと相談したら、オレたちをレットたちと同じ冒険者ギルドの依頼を受けた形にしてくれた。
そんな職権乱用許されるのか?
……掌握が進んでるんだろうな。
ギルドマスターもいないし。
深く考えてはいけないことを考えていた時、ホブゴブリンがゴブリンを引き連れて現れた。
本当にここは襲撃が多いな。
今度はラーツィアの練習台にすべく師匠が即座に数を減らしていく。
戦う姿は久々に見たけど、動きが尋常じゃなく早い。
あっという間に残りは傷ついたホブゴブリン一体。
そこにラーツィアの魔法が炸裂する。
前に突き出した両手の先に魔力の輝きが顕現する。
魔法陣。
幾何学模様を描く魔力の線が魔法を紡ぎ出す。
「行きますっ、石弾!」
「ギャッ」
一撃必殺。
ホブゴブリンは一呼吸の間もなくラーツィアの作り出した巨石に潰れる。
思わずホブゴブリンの境遇に同情してしまうほどのやられっぷり。
そう、ラーツィアの習得した魔法は、土属性魔法だった。
……しかし、ライミーの水魔法、水弾とは比べ物にならない規模。
アレデカすぎないか?
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