超絶ゴミ恩恵『消毒液』で無双する

びゃくし

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第四十三話 未来なんてわからない

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 魔力に応じて威力の変わる武器、か。
 師匠から剣技を教わっていて、吸魔の指輪の莫大な魔力を操れるオレにはまさに最適と言っていい武器。

 強敵相手なら師匠は恩恵で作り出したファルシオンを貸してくれるけど、普段は普通の店売りの武器を使うオレには、正直喉から手が出るほど欲しい武器だ。

 だが、その前に聞いておくべきことがある。

「……これってどれ位の価値があるんだ?」
 
  オレの問いにミクラ婆さんは虚空を眺め悩む。

「う~ん、出すところに出せば金貨五百枚は行くんじゃないかい?」

「金貨五百枚……それだけあれば……」

「ミクラ殿、それは本当ですか?」

 流石の師匠もあまりの額の大きさに面食らったようだ。
 驚きを隠せていない。

「まあ、買い取ってくれるような店は少ないだろうけどね。そもそも魔法具は滅多に市場に出ないんだ。扱う店もない。わたしゃの店だって魔導具だけで魔法具は一つもない」

 うん、ミクラ婆さんからいままで魔法具の話なんて一度も聞いたことがない。
 ランクルの街の冒険者の中でだって噂すら聞いたことがない。
 それだけ珍しいからこそ価値があるんだろう。

「よし、売ろう」

「え……?」

「アル様、いいお考えですね」

「……」

 ラーツィアは手を叩いてオレの意見に同調してくれる。
 師匠は無言だったけど様子からみても反対ではなさそうだ。

 ヴィルジニーだけが困惑の表情でオレを見ている。

「な、なんで? これがあれば冒険がもっと楽になる。アルコだって魔力付与された新しい武器を欲しがっていたわよね。……これから先、大金を手に入れるなら、戦力の強化は必要だわ。なにも売ることなんて……」

「いや、売ろう。……期日まで近いだろ?」

「それは!? そう、だけど……」

 ヴィルジニーは顔を伏せ目を合わせない。

 そう、オレたちがヴィルジニーと出会ってから二週間近く立っている。
 もう期日まで日日がない。

 実をいえばいまの所持金は金貨三百枚近くまで貯まっている。
 魔物の討伐報酬に素材の売却費、冒険者ギルドへのダンジョンの報告による収入と以前より収入源は格段に増えた。
 だが、正直にいえばこのままだと期日までにヴィルジニーの両親の借金分の金を貯めきれるかはギリギリだ。
 それならいっそここでこの魔法具を売り払うのも選択肢に当然入る。
 
 オレはヴィルジニーにそう訴えた。
 だが彼女はなかなか首を縦に振らない。
 それはきっとオレの事情も鑑みてくれているに他ならなかった。

「いまわたしの借金の分を返済したとしてその先はどうするの? 貴方の土地の代金を稼ぐにはダンジョンのさらに奥の階層を探索する必要がある。短時間に私の借金以上の額を稼ぐつもりならこの武器はどうしても必要だわ」

 ヴィルジニーは仲間としてよく戦ってくれている。
 魔法発動までの間ラーツィアを守りつつ、危ない相手がいれば積極的に前へでて敵の注意を引き付けてくれる。
 闘気で身体機能を強化した動きは戦場で大いに活躍してくれる。

 だが彼女は自分の貢献をわかっていない。
 それはオレと同じように借金の返済を後ろめたく思っているから。

 動じないオレたちに焦ったヴィルジニーはミクラ婆さんに問う。

「それにランクルの街には魔法具を売れる場所はないんでしょう。なら私たちが使った方が……」

「ああ、そうだ。近々この街でオークションが開催されるらしいよ。そこで売ればいい。わたしゃの鑑定より高くなるかもしれないねぇ」

「なら決まりだな」

「オークション……って皆さんで一緒にお買い物をするんですよね。わたし楽しみです」

 ヴィルジニーは師匠を助けを求めるような目で見る

「レ、レオ、貴方はどうなの。貴方は売却には反対よね?」

「私は売却に賛成だ」

「な、なんで?」

「ヴィルジニー、お前はわかっていない。ツィアはお前のことをもう共に戦う仲間だと、共に目標に向かって歩む友人だと、そう認識している。その友人が困っているなら力になりたい。それがツィアだ。そして、私もそれは……同じだ」

「レオ……」

 師匠は最後照れくさそうに小声で話してたけどオレには聞こえたぞ。
 と思ったら聞こえたのがバレたのか凄い目で睨まれた。
 なにもそんなに怒らなくても。

「お前が借金の返済のためにパーティーの金を使うのを渋っているのはわかるよ。オレもそれは一緒だ。オレの我儘のためにツィアたちを巻き込んでる。それが心苦しい」

「アル様……」

「だけどな、オレが困っているのをツィアたちが助けてくれているように。オレはツィアたちが困っている時は必ず助けるつもりでいる。それこそ助けはいらないと断られたとしても、無理矢理にでもな」

 ラーツィアと師匠の方を向けば困りつつも仕方ないなという表情だった。
 そう、オレの運命を変えてくれた二人をオレは助けたい。
 そして……。

「この先、ダンジョンを攻略するうえで魔法具は必要になるかもしれない。だけど未来なんてわからない。ならいまを、いまできることをするべきだ。この魔法具を売れば借金返済まではぐっと近くなる。先のことは後で悩めばいい」

 いくら魔法具が希少でもヴィルジニーの両親の安全には変えられない。
 いまを守るために最善の行動は期日までに金を貯めることだ。

「だからヴィルジニー、オレたちにお前を助けさせてくれ。それでもってオレたちを助けてくれ。……それが一緒のパーティーで冒険するってことだろ?」

 オレはヴィルジニーに笑いかけ断言する。
 
「もう……わかったわ。助けて貰う。でもお礼はするからね。仲間でもそれぐらいはいいでしょう?」

「ああ、楽しみにしてる」

 未来なんてオレにはわからない。
 でも、いまを守らなければいけないことはわかる。

 いま儚げに笑うヴィルジニーの笑顔。

 これを守るためなら魔法具を売ることなんて容易いことだ。

 








すみません。この先の展開を少し考え直したいので大変ご迷惑をお掛けしますが、一旦こちらの連載は休止させていただきたいと思います。読んでいただいている、お気に入り登録していただいている方には大変申し訳ありません。次の更新は未定となります。
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