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「その態度の方がよほど感じ悪いでしょう? そして、婚約者に好かれようともせず逃げただけでしょう、貴方は。世の中には言わなくてもそんなことはわかる男がごまんといるのに、言わなきゃわからない男と婚約する意味あるの? なんで我が家がそんな男に爵位譲らなきゃいけないの?」
確かにローリーと話さない方がますます嫌われなくてすむというローリーの言葉は正しいかもしれない。
こうして話していると、どんどんと腹が立ってくるのだから。
「婚約者ってだけであって、私は貴方のこと、好きでもなんでもないのよ?」
「君、俺のこと好きじゃないのか?」
「ちっとも。むしろ、貴方のどこに好きになってもらえる要素があるっていうのよ」
今までは少しは遠慮があったのだが、こうなるとズケズケと本音をぶちまけられて気が楽だ。
家のことを考えると頭を下げてまで結婚してもらう価値がない男に、どうして遠慮していたのだろうと思い、時間を無駄にしてきたと思ってしまった。
両家の話し合いというより、コテンパンに言い負かされたローリーが言葉を失ったという方が近いだろうか。
そこに、誰かが部屋の中に入ってきた。見ればローリーの兄のゴードンであった。
「二人とも、話しは終わったかい?」
「最初から話し合いなんてしてませんけどね」
単に納得いかないローリーをねじ伏せただけだ。ゴードンはローリーを退出させると今度は自分が応接室に入ってきた。そして、メイドに新しいお茶を用意させる。
これは話が長くなるという前振りだろう。
向かい合うように腰を落ち着けた二人だったが、さて、と口火を切ったのはゴードンだ。
「婚約破棄した後、マーガレットはどうするんだい?」
「私は修道院に参ります。どうせ私にもう縁談なんか来ないでしょうしね」
そうマーガレットが嫌味を込めてゴードンに言う。家同士の結びつきも兼ねて自分たちの婚約は決まったのだから、家のために自分の未来を棒に振ったようなものなのだ。
もっともローリーと結婚しても未来がなかったのだから、どちらに転んでもマーガレットの未来は真っ暗だったのだが。
そう言ったマーガレットにゴードンはあくまでもにこやかだ。
「じゃあ、マーガレットはうちにお嫁にくればいい」
「え?」
マーガレットは首を傾げる。
外国に留学し見聞を広めていたゴードンだったが、その留学中に婚約者が浮気をしたとかなんとかで、話しが流れてしまっているのは聞いたことがある。
相手を待たせすぎたのも悪かったのだろう、と大してゴードン本人は気にしてなさそうだという話もきいたが、その後の座に収まる人が見つかったという話は確かに聞いていない。
しかし。
婚約破棄した相手の兄とまとまるなんて、端からしたら乗り換えたみたいに見えるのに、何を言っているのだろうか。
「外聞も憚るのでそれはちょっと……」
親の意向も聞かずに即座に断ろうとしたが、弟と違って快活な兄はとてもいい笑顔で押しが強かった。
「ローリーのことが気になるようなら、遠くに行かせるから安心しなさい。5年間も婚約者の心を傷つけていたのに、気づかなかったというのも悪いし、我が家も監督不行き届きだ。この家門の長になるものとして深くお詫びする。それに、家門同士の繋がりを作りたいなら、君と私でも構わないし、ちょうど私には相手がいない」
「いえ、そういうことではなく……」
「それにね、エイミー殿が伯爵家を継い、彼女に婿を取らせる方が、エイミー殿の家の中での発言力は上がるし、彼女にもいいと思うけど? 君はこの家の女主人として、彼女を全面的に支持すれば、アセイム伯爵家に婿取りしやすくなるだろう?」
「……」
正直なところ、足が悪いエイミーはそれを瑕疵だとして将来結婚ができないかもしれなかった。
だからこそ自分が伯爵家の女主人として実権を握り、そして、彼女を一生面倒みようと覚悟していた部分もあったのだ。
しかし、彼の言うように別伯爵家と強い繋がりを持つとしれば、婿に来たがる人も増えるかもしれない。
「どうだ? 一応君の意見を聞いてから、君の家に打診をしようと思ったわけだけど」
なにか一物を抱えたような笑みではあるが、マーガレットが選ぶ選択肢は他になかった。
確かにローリーと話さない方がますます嫌われなくてすむというローリーの言葉は正しいかもしれない。
こうして話していると、どんどんと腹が立ってくるのだから。
「婚約者ってだけであって、私は貴方のこと、好きでもなんでもないのよ?」
「君、俺のこと好きじゃないのか?」
「ちっとも。むしろ、貴方のどこに好きになってもらえる要素があるっていうのよ」
今までは少しは遠慮があったのだが、こうなるとズケズケと本音をぶちまけられて気が楽だ。
家のことを考えると頭を下げてまで結婚してもらう価値がない男に、どうして遠慮していたのだろうと思い、時間を無駄にしてきたと思ってしまった。
両家の話し合いというより、コテンパンに言い負かされたローリーが言葉を失ったという方が近いだろうか。
そこに、誰かが部屋の中に入ってきた。見ればローリーの兄のゴードンであった。
「二人とも、話しは終わったかい?」
「最初から話し合いなんてしてませんけどね」
単に納得いかないローリーをねじ伏せただけだ。ゴードンはローリーを退出させると今度は自分が応接室に入ってきた。そして、メイドに新しいお茶を用意させる。
これは話が長くなるという前振りだろう。
向かい合うように腰を落ち着けた二人だったが、さて、と口火を切ったのはゴードンだ。
「婚約破棄した後、マーガレットはどうするんだい?」
「私は修道院に参ります。どうせ私にもう縁談なんか来ないでしょうしね」
そうマーガレットが嫌味を込めてゴードンに言う。家同士の結びつきも兼ねて自分たちの婚約は決まったのだから、家のために自分の未来を棒に振ったようなものなのだ。
もっともローリーと結婚しても未来がなかったのだから、どちらに転んでもマーガレットの未来は真っ暗だったのだが。
そう言ったマーガレットにゴードンはあくまでもにこやかだ。
「じゃあ、マーガレットはうちにお嫁にくればいい」
「え?」
マーガレットは首を傾げる。
外国に留学し見聞を広めていたゴードンだったが、その留学中に婚約者が浮気をしたとかなんとかで、話しが流れてしまっているのは聞いたことがある。
相手を待たせすぎたのも悪かったのだろう、と大してゴードン本人は気にしてなさそうだという話もきいたが、その後の座に収まる人が見つかったという話は確かに聞いていない。
しかし。
婚約破棄した相手の兄とまとまるなんて、端からしたら乗り換えたみたいに見えるのに、何を言っているのだろうか。
「外聞も憚るのでそれはちょっと……」
親の意向も聞かずに即座に断ろうとしたが、弟と違って快活な兄はとてもいい笑顔で押しが強かった。
「ローリーのことが気になるようなら、遠くに行かせるから安心しなさい。5年間も婚約者の心を傷つけていたのに、気づかなかったというのも悪いし、我が家も監督不行き届きだ。この家門の長になるものとして深くお詫びする。それに、家門同士の繋がりを作りたいなら、君と私でも構わないし、ちょうど私には相手がいない」
「いえ、そういうことではなく……」
「それにね、エイミー殿が伯爵家を継い、彼女に婿を取らせる方が、エイミー殿の家の中での発言力は上がるし、彼女にもいいと思うけど? 君はこの家の女主人として、彼女を全面的に支持すれば、アセイム伯爵家に婿取りしやすくなるだろう?」
「……」
正直なところ、足が悪いエイミーはそれを瑕疵だとして将来結婚ができないかもしれなかった。
だからこそ自分が伯爵家の女主人として実権を握り、そして、彼女を一生面倒みようと覚悟していた部分もあったのだ。
しかし、彼の言うように別伯爵家と強い繋がりを持つとしれば、婿に来たがる人も増えるかもしれない。
「どうだ? 一応君の意見を聞いてから、君の家に打診をしようと思ったわけだけど」
なにか一物を抱えたような笑みではあるが、マーガレットが選ぶ選択肢は他になかった。
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