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二人して父親であるアセイム伯爵に直談判をして姉妹揃ってローリーと婚約するのは嫌だとごねれば、さすがに相手になんらかの瑕疵があるのだろうと、思ってくれたようだ。
まずローリーのマーガレットに対して冷たすぎる対応があったことをエイミーが証言し、メイドたちがそれを補強したのもあって、マーガレットとローリーが不仲であると対外的に説明することができた。
ローリーが実はマーガレットが好きらしいということは、エイミーしか知らない話しなので、そこに関しては黙殺することになってしまったが。
エイミーも「婚約者に対してあんな態度をとる人はまっぴらごめん」とマーガレットに続いてローリーと婚約することを頑なに嫌がった。
エイミーはマーガレット本人から、ローリーの態度に傷ついていたという言葉を聴いて愛情があれば態度が悪くても許されるという考えを改めることができたようだ。
あくまでも自分の姉の婚約者だから愛想いい態度をとっていただけであって、自分が彼に特別な好意を持っていたわけではなかったのだし。
唐突に婚約解消の打診をされて、ローリーの実家であるイングリット伯爵家は仰天したようだった。
しかし、アセイム伯爵家からローリーが婚約者であるマーガレットだけを邪険に扱うからだと話をされて眉をひそめたようだった。
その態度が婚約者に対するものに適切かどうかというものより、婿養子として将来爵位を継がせる人格として不安である、とばっさりダメ出ししたところにアセイム伯爵家の怒りがただ事ではないとようやく理解したようである。
マーガレットはともかく、まだ14歳のエイミーに他に婿を取らせるということにするなら、まだ時間的に余裕があるため強気に出ることができたのだ。
ローリーからしたらマーガレットとの婚約解消は青天の霹靂の、手ひどい仕打ちに思えたようだ。
ローリーはマーガレットの前では自分が上手く話せない分、エイミーに優しくし、エイミーがマーガレットをとりなしてくれると期待していたようだ。
しかしそれを面と向かって指示されたわけでもないエイミーは気づかなかった。そもそも社交界に出ていない、人付き合いもそれほど長けていない子供にそれを察してほしいと願う方が間違っている。
アセイム伯爵家のメイドに金品をまいて上手くいくよう頼みこんだ方がまだマシだったのに。
考え直してほしい、もう一度会わせてほしいとさんざん泣きつかれたアセイム伯爵は根負けし、マーガレットとローリーが会って話す場を設けることとなった。
(冗談じゃないわよ。もうこんな男と過ごすなんてまっぴら)
マーガレットは二度と会いたくないと思っていたが、家長の命令なら仕方がない。渋々応じることとなり、マーガレットとアセイム伯爵はイングリット伯爵邸に向かうこととなったのだが。
「なんで急にこんな仕打ちをするんだよ! 俺の態度が不満だったなんて言ってくれないと分からないよ!」
「……婚約破棄を言い出したのはいきなりかもだけど、そのきっかけは貴方が作ったようなもんでしょ? 出ていけとかしょっちゅう言われてたじゃない、私。貴方に」
会えば説得というより、言い争いのようになってしまったのは当然だろう。
ローリーからすれば、それまで何年も同じ態度をしていても文句を言われたわけではなかったので、マーガレットの側にいない方がいいのだと間違った認識をしていたらしい。
アセイム伯爵家からしたら、なぜその態度でいいと思えたのかが不思議である。
それにローリーについている護衛や従僕もローリーの態度を見ていたはずなのにそれをいさめることもせず、家に報告をしたりせず態度を改めさせなかったのはイングリット伯爵家の怠慢でもあるだろう。
「顔も見たくないようなそぶりをして婚約者を追い払う相手に、どのタイミングで不満があると言えと?」
「……そ、それは、顔を合わせていなければ、自分の態度の悪さでますます嫌われることもないと思ったから……マーガレットと顔を合わせるとうまく話せないし」
現に、この瞬間もローリーはマーガレットから目をそらしている。マーガレットはため息をついた。
まずローリーのマーガレットに対して冷たすぎる対応があったことをエイミーが証言し、メイドたちがそれを補強したのもあって、マーガレットとローリーが不仲であると対外的に説明することができた。
ローリーが実はマーガレットが好きらしいということは、エイミーしか知らない話しなので、そこに関しては黙殺することになってしまったが。
エイミーも「婚約者に対してあんな態度をとる人はまっぴらごめん」とマーガレットに続いてローリーと婚約することを頑なに嫌がった。
エイミーはマーガレット本人から、ローリーの態度に傷ついていたという言葉を聴いて愛情があれば態度が悪くても許されるという考えを改めることができたようだ。
あくまでも自分の姉の婚約者だから愛想いい態度をとっていただけであって、自分が彼に特別な好意を持っていたわけではなかったのだし。
唐突に婚約解消の打診をされて、ローリーの実家であるイングリット伯爵家は仰天したようだった。
しかし、アセイム伯爵家からローリーが婚約者であるマーガレットだけを邪険に扱うからだと話をされて眉をひそめたようだった。
その態度が婚約者に対するものに適切かどうかというものより、婿養子として将来爵位を継がせる人格として不安である、とばっさりダメ出ししたところにアセイム伯爵家の怒りがただ事ではないとようやく理解したようである。
マーガレットはともかく、まだ14歳のエイミーに他に婿を取らせるということにするなら、まだ時間的に余裕があるため強気に出ることができたのだ。
ローリーからしたらマーガレットとの婚約解消は青天の霹靂の、手ひどい仕打ちに思えたようだ。
ローリーはマーガレットの前では自分が上手く話せない分、エイミーに優しくし、エイミーがマーガレットをとりなしてくれると期待していたようだ。
しかしそれを面と向かって指示されたわけでもないエイミーは気づかなかった。そもそも社交界に出ていない、人付き合いもそれほど長けていない子供にそれを察してほしいと願う方が間違っている。
アセイム伯爵家のメイドに金品をまいて上手くいくよう頼みこんだ方がまだマシだったのに。
考え直してほしい、もう一度会わせてほしいとさんざん泣きつかれたアセイム伯爵は根負けし、マーガレットとローリーが会って話す場を設けることとなった。
(冗談じゃないわよ。もうこんな男と過ごすなんてまっぴら)
マーガレットは二度と会いたくないと思っていたが、家長の命令なら仕方がない。渋々応じることとなり、マーガレットとアセイム伯爵はイングリット伯爵邸に向かうこととなったのだが。
「なんで急にこんな仕打ちをするんだよ! 俺の態度が不満だったなんて言ってくれないと分からないよ!」
「……婚約破棄を言い出したのはいきなりかもだけど、そのきっかけは貴方が作ったようなもんでしょ? 出ていけとかしょっちゅう言われてたじゃない、私。貴方に」
会えば説得というより、言い争いのようになってしまったのは当然だろう。
ローリーからすれば、それまで何年も同じ態度をしていても文句を言われたわけではなかったので、マーガレットの側にいない方がいいのだと間違った認識をしていたらしい。
アセイム伯爵家からしたら、なぜその態度でいいと思えたのかが不思議である。
それにローリーについている護衛や従僕もローリーの態度を見ていたはずなのにそれをいさめることもせず、家に報告をしたりせず態度を改めさせなかったのはイングリット伯爵家の怠慢でもあるだろう。
「顔も見たくないようなそぶりをして婚約者を追い払う相手に、どのタイミングで不満があると言えと?」
「……そ、それは、顔を合わせていなければ、自分の態度の悪さでますます嫌われることもないと思ったから……マーガレットと顔を合わせるとうまく話せないし」
現に、この瞬間もローリーはマーガレットから目をそらしている。マーガレットはため息をついた。
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